日本の映画が好調になってきた
映画も徐々に好調になってきた感じです。
2020年10月16日に公開された「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」から始まり、実写版だと、今は「花束みたいな恋をした」そして、またアニメで、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」がロケットスタートで先週の映画ランキング、断トツの1位でした。
鬼滅の刃は、興行収入が400億円に到達しそうな勢いで更に「日本アカデミーショー」で最優秀アニメーション作品賞を受賞しています。
しかし!
残念ながら、どれも見てはいません。
鬼滅の刃はアニメを何話か見て、挫折、エヴァンゲリオンも、全26話のうち、半分も見ないで挫折しています。
このため、鬼滅の刃、エヴァンゲリオンについて語ることは、残念ながらできません。
そんな時に、NHKを見ていると、プロフェッショナル「鹿野秀明スペシャル」の番宣がありました。最初、映像を見ていなかったので、「あんのひであき」あの?慌てて映像を見ると「鹿野秀明」という名前が。あのエヴァンゲリオンで有名な映画監督です。
今、劇場版の完結編が上映されていて好調だからNHKも便乗してプロフェッショナルで特集を組んでいたのだと思ってました。
で、今、ブログで鹿野さんの事を書いているのですが、ここで初めて「あんのひであき」という名前を入力していて気が付いたのです。「鹿」じゃない、「庵」だということに(笑)
「あんの」と入力しても「鹿野」という漢字が出ないで「庵野」と出ます。
おかしいなぁ〜何故だろうと思いながら調べてみると、どこを見ても「庵野秀明」で鹿なんて字を使っているところはありません。
僕はずっと「鹿野秀明」と書いて「あんのひであき」と読むと思い込んでいたのです。
そう、「鹿」というのは「あん」と読めるのだと。
読み間違えなら「しかの」と言うので直ぐに気がつきますが「あんの」と話していて頭の中では「鹿野」と思っていても誰も指摘することなんて誰もできないですよね(笑)
庵野さんのことは、どんな人なのかと気になっては、いたので全録で見ることにしました。
こういう時、全録だと予約すらしなくて良いので便利です。
番組は、以下のナレーションから始まりました。
- 密着を始めて、まもなく私たちは悟った・・・この男に安易に手をだすべきではなかったと
安易と、庵野をかけているのかな?とか思いながら見ていると、スタッフが、庵野さんに、「おはようございます。」「よろしくお願いします」と言っても、「はい」とだけ答えるだけ。
「はい」と返事があるのは、まだ良い方で返事をほとんどしません。
「撮ってもしょうがない」が口ぐせなのか、やたらと連発する。
正直、庵野さんの第一印象は凄く悪いです。
使徒は庵野さんがモデルだった?
番組の前半の庵野さんの顔は眉が吊り上がって、鬼のような形相のように感じました。
歩いている時は、身長が思ったより高くて、僕がエヴァンゲリオンの使徒を見たときに感じた、得体のしれない不気味な感じがします。
見ていく内に口癖が、もう一つ追加されました。
「面白くない」
とにかく、後ろ向き、感じの悪い言葉ばかりが目立ちます。
あまりにも庵野さんの印象が悪くて、これは見る価値がないかな?と思っていたのですが、新作は「画コンテ」なしで作るというのです。
- 設計図は最小限のものにしたい。
- あと、設計図の作り方を頭の中で作りたくない。
- 最初にみんな決めたがる。
- 何をするのか?って。
- 安心したいから。
現場には画コンテはないほうがいいって言うのです。
何故、そんな事を思ったのでしょう?
答えは、ここでは出てきません。
画コンテなしでアニメをどう作るのかに興味が出てきました。
スタッフが、庵野さんが書いたという脚本に絵を継ぎ足したりしてアイディアを出しますが、
- 今はわかんないよ
- もうちょっと、時間が経たないとね
何ともやる気が感じられません。
スタッフは、「考えを変えろってことなのか?」「オッケーさえも言われないしダメとも言われない」と笑いながら、「エヴァンゲリヲンあるある」だとかで、いつものことのようです。
アイデアを見せても「これじゃないことが分かった」とだけ言われても、、さてどうしたら良いのかな?っていう風になりますよね。
でも、アイデアを出す時って最初は情報をインプットするところから始めますよね。
何もないところからアイデアはでません。
つまり、今は情報のインプットの段階で情報量が足りないので今はわからない。もうちょっと時間が経たないと情報が入ってこないってことだったのでしょう。
不思議なもので掴みどころがない内は興味が持てなかったのですが、自分との共通点が少しでも感じられると、それをキッカケに色々と興味が持てるようになってきます。
大人になれなかった庵野秀明
庵野さんと一緒に仕事をしたこともあるスタジオジブリのプロデューサー鈴木敏夫さんは、庵野さんのことを以下のように語っています。
- 庵野の特徴は何かというと「正直な人」なんですよ。「万年青年」もう60歳になろうっていうのに大人にならないのよ。結局、大人になり損ねた人。エヴァンゲリヲンの主人公「シンジ」君なんか見てたらそうじゃない。本人がそうだしね。描いているのもそれ。その苦しさが映画の中に出てくるから若い人たちは共感できるんじゃない?その生きづらさが。
確かにそういわれると、シンジと庵野さんも心理面では重なりますね。
つまり、使徒もシンジも庵野さんってことになります(笑)
画コンテを作らない理由
先ほど、画コンテを作らないで新作を作るという話を書きました。
その答えが以下にあります。
あるシーンは、ワンカットでやりたいと庵野さんが言いました。
隣にいたスタッフの方はワンカットでやるときの怖いところはどうしてもつなぎが必要になってきて、そのつなぎの部分がダラダラしてしまうとワンカットの怖さを説明します。
庵野さんは以下のように話します。
- 基本、ワンショットでいきたいだけなの、ワンショットに見えればいいの。ワンショットにこだわってやった時に、できないというのが、しょうがないっていうとき。「あーこうなるんだぁ」っていう発見がこちらにないと客も「あっこうなるんだ」っていうのがない。自分が考えている以上のものは出てこないですよ。追い込んで、追い込んで、もう、これ以上こうやったらどうなるんだろう?自分のイメージ通りに作ったって面白いこと何もないですよ。自分が考えたものなんて、そんなに面白いもんじゃないですからね。それを覆す方が良いんで。
- やっぱり、頭の中で作ると、その人の脳の中にある世界で終わっちゃうんですよ。その人の外がないんですよ。自分の外にあるもので表現をしたい。肥大化したエゴに対するアンチテーゼかもしれない。アニメーションってエゴの塊だから。
- 今までと同じような作り方をしていても、これまでの延長と言えるようなものにしかならない。それが嫌だから、今回は画コンテを作らないで行うということになったようです。
プロフェッショナルなのに
庵野さんは、プロフェッショナルの撮影部隊に対しても自分の考えを伝えます。自分を撮るんじゃなくて、庵野さんの周りの人たちが困ったり戸惑ったりしているところをもっと撮れというんです。もちろん、戸惑っているシーンも撮影はしていたのですが、庵野さんは足りないと指摘します。
庵野さんが言ったことは、ナレーションで、リアクション、つまり周囲の人たちが戸惑っているところで見せた方が面白いというんです(笑)
プロフェッショナルで番組構成まで気にする人なんて庵野さんくらいじゃないでしょうか?
しかし、今回、プロフェッショナルの撮影を受けたのは、今は
アングルだけで勝負
庵野さんの以下の考えも共感できました。
- 探るのはアングルで、アングルさえあえればいい。
- ここにカメラ持ってきたらこんな面白い画になるんだ。
- アングルと編集がよければアニメーションは止めても大丈夫動く必要もない。
- それは、アニメーションだけではなく実写でも同じ。
- 役者がどんなにアジャパーでも、アングルと編集がよければ、それなりに面白くもなるよ。
下図は同じ恐竜ですが、アングルが変わると印象が違って見えます。
一番右端の下から見た恐竜は何も言われなければ、ワニに見えてしまいますし、上から見たらコモドドラゴンのようにも見えます。
アングルが変わると印象が変わる。
アングルを駆使して編集を行うことでアジャパーな役者さんの映像でも面白くできると僕も思います。
欠けているから
庵野さんの父親は仕事中に仲間の不手際で左足を失ったそうです。
このため、庵野さんは家族で遠出するということが少なく家でアニメを見るようになります。
中でも鉄人28号は、腕がよく取れることが多くて、そこに魅力を感じたようです。
僕はヒーローは完璧に勝利して欲しいタイプなので、ボロボロになりながら勝利するというのは魅力を感じないので庵野さんの腕が取れることに魅力を感じるというのは理解できません。
庵野さんはこの事に関して次のように語ってます。
- 本来、完璧なはずなのに、どこかが壊れてるとか僕は面白いと思います。面白さってそういうものだと思います。きれいに作っても、そんなに面白いものになんない。きれいなだけだから。僕の面白いっていうのは、ちょっといびつなところにあると思うので。
- どこか欠けている方がいいと思うのは、僕の親父が足が欠けていたからかなと今、思いますけどね。欠けているものが日常の中にずっとあってそれが自分の親だったっていうのが、全部がそろってない方がいいと思っている感覚がそこに元があるのかなって。そういう親を肯定したいっていうのはあるかもしれないですね。
お父さんが左足を失っていたことが、庵野さんに歪なことに対して面白さを感じるようなったのかもしれません。
23歳の時に宮崎さんのところへ行き、そして風の谷のナウシカのクライマックスの爆破シーンを任せられたそうです。
一日、何時間仕事をしていたのか、宮崎さんが来ると必ず、机の下から庵野さんが床で寝ていて、足が出ていたそうです。
爆破シーンの原画は修正を入れらない程、緻密に描かれていて宮崎さんを唸らせたほどです。
庵野さんの描く爆発シーンは手塚治さんも舌を巻くくらい素晴らしい技術だったそうです。
テレビ版のエヴァンゲリオンのエンディングは多くの人に憶測を与えたそうです。
テレビ版なので期限を遅らせることは放送が止まることになります。
しかし、制作が追いつかなくなり、線で描かれたスケッチのような絵で予定と異なる形で終わらせるしかなかったということです。
その結果が、多くの人に憶測を与えるエンディングとなったのです。
そして一部のファンから庵野は作品を投げだしたという批判が沸き上がりました。
- 自分としては世の中・・まぁアニメの好きな人のために頑張ってきたつもりだったんですけど、庵野秀明をどうやって殺すかを話し合うような、そういうスレッドがあって、どうやったら、一番・・・こう上手く殺せるかっていうのが、ずうっーと書いてあるんです。こうやって殺したらいいって。それを見たときにもう、どうでもよくなったんです。なんか・・・なんかなぁもうアニメを作るとか、そういうの、もういいやって・・・一回は電車に飛び込もうと思ったのと、もう一回は会社の屋上から飛び降りようっていうのが2回ほど危険があって
踏みとどまったのは?
- 痛そうだから・・・死ぬのは別にいいんだけど死ぬ前に痛いのは嫌だなと、リアルに考えてやめちゃった。
これをきっかけに、庵野さんにエヴァンゲリオンの呪縛にかかりました。
その後、アニメ制作に取り掛かっても、エヴァみたいになってしまいます。
その時のことを以下のように庵野さんは語っています。
- 全部やってたらエヴァの二番煎じになる。エヴァンゲリオンのセルフパロディみたいなものになっちゃう。エヴァが自分が面白いと思っていたのを全部そこに入れちゃったから新しく自分が面白いという思うものを入れようとしても、やっぱ、どっかエヴァみたいなものになっちゃう。
TV版の決着をつけなければ先に進めないと考えて、エヴァンゲリオンを映画として作り直すことにしたのです。
そして3本の映画を完成させます。
2012年11月に「エヴァンゲリオンエヴァ:Q」(以下Q)が公開されたのですが、公開後の2021年12月に、庵野さんが壊れました。
「6年間、自分の魂を削って再びエヴァを作っていた事への、当然の報い」だとご本人が語っています。
倒れたのは、Qへの反応によるものだと言われていますが実は、撮影中から症状が出ていたので、それがQにも影響していたようです。
プロフェッショナルの最初の映像での印象が良くなかったのですが、まだ壊れたときの影響が残っていたのかもしれません。
プロフェッショナルの最初と最後で庵野さんの印象がかなり変わっていましたのでエヴァンゲリオンの呪縛による庵野さんへのダメージは相当大きなものだったことが伺えます。
そして、宮崎駿さんが、プロフェッショナルの中で庵野は「血を流しながら映画を作っている」というコメントの意味が理解できた気がします。
心のリハビリは1年以上続き、2014年初頭に自分のスタジオに行けるようにまで回復しました。
そして、4年の歳月を経て完成させたのが、「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」です。
シン・ゴジラですが、どうやって倒すんだろう?と期待していました。
その答えは、血液凝固剤を飲ませて血を固めて冷却機能を止める。
これには、ちょっとガッカリしました。
しかし、無人新幹線爆弾と、無人在来線爆弾は、その発想に笑ってしまいました。
ゴジラが暴れまくっている状況で線路が無事なはずがありません。
あんなに綺麗にゴジラに衝突させるなんて絶対に無理だと思いますが、そんなの関係ねぇ!という感じで、僕の疑問を吹っ飛ばす発想が素晴らしいと思いました。
このシン・ゴジラですが、エヴァンゲリオンの庵野秀明がゴジラの監督ということで話題になりました。
でも、東宝からオファーがあったのは、2013年になってからですが、この時期、庵野さんは壊れた時期で自分のスタジオにさえ行けなかったのです。
オファーを快諾した理由ですが、以下のように語っています。
今しか出来ない、今だから出来る、新たな、一度きりの挑戦と思い、引き受ける事にしました。エヴァではない、新たな作品を自分に取り入れないと先に続かない状態を実感し、引き受ける事にしました。
【出典】庵野秀明監督がうつ状態だった過去を告白「僕は壊れました」 - ライブドアニュース
シン・ゴジラもエヴァンゲリオンの呪縛から抜け出したいという思いがあったからという感じがしますね。
プロフェッショナルを見て、庵野さんは、とにかく、「面白いもの」を作りたいだけなんだという気持ちが感じられました。
画コンテは頭の中で考えたもの。
頭の中で作ると、その人の脳の中にある世界で終わっちゃうんですよ。その人の外がないんですよ。自分の外にあるもので表現をしたいということから、実写のように撮影を行ってみて色んなアングルを探る。
プロフェッショナルを見て、エヴァンゲリヲンにもう一度、チャレンジしてみようかなと思ってしまいました。
以下は、庵野さんの奥さんが書かれた漫画ですが、庵野さんの日常が伺える内容になっていて面白かったです。
初のエッセイコミック! !
番外編を描きおろし! !
マンガ界のクイーン・安野モヨコがオタクの教祖・庵野秀明にヨメ入り!
単行本化にあたり、大幅加筆修正
描きおろし「結婚秘話」収録! !
超詳細! ! オタク用語2万字解説(GAINAX全面協力! )
カントクPHOTO掲載! !
庵野監督カントクくんを語る!