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PCR検査を日本が増やせない理由

2020年5月4日(月)に安倍総理大臣より新型コロナウイルス対策の特別措置法に基づく「緊急事態宣言」を、対象地域は全国のまま、5月31日まで延長するという発表がありました。

「緊急事態宣言」が延長された根拠には、次の2点が挙げられています。

  1. 新たな感染者の数は減ってきているものの、まだ十分とはいえない
  2. 感染が拡大すれば、医療体制に大きな負担がかかってしまう

【出典】

note.stopcovid19.jp

警戒が必要な13都道府県にお住まいの方にお願いしたい3つのこと。

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警戒が必要な13都道府県以外の方は、地域ごとの状況を踏まえて、感染拡大の防止につとめつつ、段階的に社会経済活動との両立を目指す方針へと変わります。

 以前に、外出自粛が必要な理由ということで以下の記事を書きました。

seege.hatenablog.com

 その中で、以下のように書きました。

  • 感染連鎖を見つけるためにはPCR検査を全員に行うことになりますが、無理があります。

この部分については自分自身、気になっていた点です。

PCR検査を全員に行うことはできなくても、だからといって今のままで良いのか?というとそうではないはずです。

先日、神戸市立医療センター中央市民病院の研究チームが2020年5月2日に外来患者千人の血液検査を行ったところ、3・3%が抗体を持っていたということです。

【出典】

www.kobe-np.co.jp

そうすると、約4%の方が何らかの形で感染していることになるので、日本全体だと500万人が感染していることになります。これをエリアごとで図にすると以下のようになります。

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例えば、関東地方で4%になると約170万人の方が抗体所有者になってしまいます。

しかし、5月4日時点の関東地方での感染者数の合計は約7900名です。これだと、現在の感染者数は計算上、240分の1の数字になってしまいます。

全員にPCR検査が行うことができなくても心配だという人に関しても検査ができない状態というのは絶対に好ましい状態ではないと思います。

それは不安を強くするからです。

PCR検査は陰性を証明するものではないということは、わかっています。

しかし、その確率はかなり低いものだと思います。

PCR検査はこれまで制限がかかっていました。

  • 渡航歴や患者との接触歴などから、都道府県が必要と判断した場合に検査が行われます。

【出典】新型コロナウイルスに関するQ&A(医療機関・検査機関の方向け)|厚生労働省

なぜ、制限していたのでしょうか?

一斉にPCR検査を受けるために沢山の人が病院を訪れることで、医療従事者の方の負担を増やす、大勢の人が来ることで密が生じ感染リスクが高まるといったことが言われてきました。

しかし、実は日本でのPCR検査は、1日に実施できる件数が限られていました。

1日に実施できる件数が最も多いのは、なんと千葉県で、564件でした。感染者数が断トツで多い東京都ではないんですね。では東京都はというと、1日235件で千葉県の半分にも満たない状態です。全国全て合わせても1日4990件です。これは何か月も前のことではなく、2020年4月27日時点の話です。

2020年4月27日時点の県別実施可能件数

【出典】https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000626152.pdf

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東京都では、235件しか検査できないのですから、1日の感染者数が仮に240人いたとしても235件しか検査できないので、235人ということになってしまいます。

そして日本全国でも4990件しか検査できない状態です。

緊急事態宣言が出された時に安倍総理は1日2万件にすると言ってましたが実際はその4分の1未満です。

更に面倒なことに、毎日、発表されている陽性者の人数の集計方法にも問題がありました。

毎日、発表されているのは、その日に検体を採取した中での陽性者の数ではなく、その日に検査を行った結果の陽性者の集計結果です。

下表で説明すると、x月1日に180件を依頼しています。しかし、1日に160件しかできないので、何日かに分けて検査することになります。本当は180件の内陽性が50件なので、x月1日分は50件という結果にならないといけませんが、実際には、前日分や退院時の再検査というものも検査件数に含まれて来るのでx月1日としては、陽性者が45名ということで公表されているのです。 

 

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これは毎日の十分な検査能力がないためと言えます。

下表は13特定警戒都道府県別の最大陽性数と最大陽性数以降の平均値を算出し、最大陽性数を確認した日から現在までに、どれくらい減少しているのかを算出した結果を示したものです。

 

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東京だと、最大陽性数は201件で、それ以降の平均陽性数は109件になります。

以下は、減少率を求める式になります。

  • 減少率(%) = (1-(109÷201))×100

減少率が70%を越えているのは、茨木県と岐阜県だけです。
東京都は50%も削減できていません。しかし、それよりも怖いのが北海道です。

まず、ピークですが他の県は大体が4月初~中旬でしたが、北海道だけは4月23日です。北海道は日本のどこよりも早く自主的に緊急事態宣言を出していますが、そして全国に対して緊急事態宣言が出されたのは、4月16日です。

そして、緊急事態宣言から2週間を過ぎても、減少率が約30%という状態なのです。
札幌では緊急事態宣言が出されてからも地下鉄の乗車率が100%を超える状態がスポットではありますが、毎日続いていました。それが、20日~24日は混雑がなくなったということなので、緊急事態宣言が出されても外出の自粛が十分に行われていなかったことになります。北海道は土地が広いので自家用車の所有率は高いと思っていたのですが、調べてみると、1世帯当たりの自動車所有率は0.999なので1世帯に1台車がない計算になります。

【出典】自家用車普及台数(都道府県データランキング)

しかし日本は検査能力不足で信用に値するデータが取得できていないので本当は、もっと感染者の絶対数が多いはずです。

では、何故、検査能力がないのでしょうか?

5月4日の安倍総理の緊急事態宣言の延長会見で、専門家会議副座長が、以下のような理由があると説明されていました。

  1. 帰国者・接触者相談センター機能を担っていた保健所の業務過多。
  2. 入院先を確保するための仕組みが十分機能していない地域もあったこと
  3. 地衛研は、限られたリソースのなかで通常の検査業務も並行して実施する必要があること
  4. 検体採取者及び検査実施者のマスクや防護服などの感染防護具等の圧倒的な不足
  5. 保険適用後、一般の医療機関都道府県との契約がなければPCR等検査を行うことができなかったこと
  6. 民間検査会社等に検体を運ぶための特殊な輸送器材が必要だったこと

【出典】https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627559.pdf

そして、上記に対して行うべきことは以下のことだと説明しています。

  1. 保健所、地方衛生研究所の体制強化及び、労務負担軽減
  2. 都道府県調整本部の活性化
  3. 地域外来・検査センターのさらなる設置
  4. 感染防護具、検体採取キット、検査キットの確実な調達
  5. 検体採取者のトレーニング及び新たに検査を実施する
    機関におけるPCR等検査の品質管理
  6. PCR検査体制の把握及び、検査数や陽性率のモニターと公表

【出典】https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000627559.pdf

正直、具体的には、どうするのでしょうか?って感じなのですが、具体案を考えるのは専門家会議の役割ではないと言われるのでしょう。しかし、1か月かけてPCR検査の件数が増えない理由がわかったと言ってるのと同じです。専門家会議のメンバーは実務に携わっていない方ばかりだから実務に関する事は専門外なのでしょう。

問題はそれだけではないと感じられるのが、2011年以降の震災対応、昨年の台風災害対応に加えて今回のコロナ対応です。

共通するのは、PCR検査に限らず国と都道府県が連携しないといけない場合に対応が遅いということです。

国がマスクを配る、PCR検査を行うと言っても、国は口だけで実際に行うのは各都道府県、市町村です。

そう考えると、PCR検査能力が上がらないのは双方のコミニュケーション不足によるものだと言えます。

自治体側にすれば、国が自治体の状況などを確認することも、実施に関して相談することないので不満は多いはずです。

一世帯に2枚、4月17日から布マスクを配るといって5月4日現在、配布が始まっているのは東京だけです。その間に使い捨てマスクが1枚60円くらいで購入できるようになっているので、もう国からの小さな布マスクは不要になってしまいます。

10万円の給付金についてもどうでしょうか?

4月30日に決まったあと、どれくらいで各家庭に申請書が届くのでしょうか?

無駄に時間がかかるのは、国と地方がしっかりと連携していないからです。

PCR検査数が増えないことで検査も受けられずに亡くなれた方もいるということです。

日本のPCR検査数が少ないことについては海外からも批判されている状況です。

批判されても日本の考えをしっかりと自信をもって説明してくれれば良いのですが、そのようなこともありません。つまり、批判されても反論できないようなことを日本では行っているということになります。

専門家会議は臨床には関与してこなかった人たちの集まりで、会議で行っているのは世界での事例を検証しているということで独自のアイディアはでないのでしょう。

これまで、国民は国が言うとおりに多くの人が従ってきましたが、専門家会議での結果に真摯さが感じられなくなった瞬間、従わなくなる自治体が増えてくるはずです。そうすると独自の方針を打ち出し、統制ができなくなります。

専門家会議に臨床に関わっている人または加わっていた人を加えるといった対応も必要なのではないかと思います。

このままでは、日本だけが取り残されてしまう可能性が高くなったようなので、専門家会議のメンバーの見直しが必要だということです。