日本映画が2部門でアカデミー賞を受賞
ゴジラ-1.0(マイナス・ワン)がアカデミー賞で、視覚効果賞、宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメ映画賞を受賞した。
視覚効果と言えば、お金をかけた映画が受賞するイメージがある。
今回、あのトム・クルーズの「ミッションインポッシブル デッドレコニング1」もノミネートされていたので、それを上回ったことになる。
ゴジラ -1.0のVFXを担当したのは?
視覚効果、VFXを担当したのは、「白組」という小さなプロダクション。
正直、自分も聞いたことがなかった。
しかし、創立して50年以上の老舗の映像制作会社。
製作に携わった作品名は、有名なものが多い。
三丁目の夕日、シン・ウルトラマン、映画しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 ~とべとべ手巻き寿司~、FINAL FANTASY Ⅶ REBIRTH・・・
実に幅広く色々と手がけている。
ゴジラに関わったのは総勢35人、ショット数は610カット、製作期間は約8か月。
そして予算は潤沢ではなかったという。
これらの制限の中で、色々な工夫を行っている。
まず、チェックプロセスをシンプルにした。
通常、VFXではたくさんのチェック過程が存在するが、監督がVFXスーパーバイザーも兼務していたので途中のステップを省略しアーティストと直接対話することができた。
大半のスタッフを一つのフロアに集めて、ショットが出来上がると監督が直ぐにチェックするという体制を整えた。
結果、無駄な待ち時間がなくなり、トライ&エラーの回数を飛躍的に減らすことができた。
ゴジラにはたくさんの軍艦が出てくるがすべてのセットを作るのは予算の関係で不可能だった。
用意できたのは一つの船べりだけ。
これをデジタル技術で延長して変化させていった。
大きな波で揺れる船を撮影する際には、油圧シリンダーにセットを丸ごと乗せて撮影するのが一般的。
しかし、これも予算の関係で許されなかった。
クレーンカメラの動きとキャストのアクションを組み合わせたトリック撮影し、その素材をデジタルで延長しまるで、本当に船が揺れているかのようなショットを実現した。
船べりは固定されているので動かない。
このため船が動いたかのようにするために、カメラを動かすことで素材を撮影し止まったままの港と組み合わせることで動いている船を実現している。
シン・ゴジラとは真逆
山崎貴監督がYoutubeの対談動画で、以下のようなことを話されていた。
山崎監督はシン・ゴジラに対して、かなり意識していたというか、対抗心があったようだ。
そんなことから以下のような発言をされていた。
自分のカードというのはこれまでに自分が製作してきた映画の中で培ってきた知識や経験のことになる。
山崎監督は、映画「ALWAYS 三丁目の夕日」で、単にVFXによる昭和三十年代を再現し懐かしさを感じさせるだけではなく寅さん映画のような泣かせる技も取り入れて映画としての面白さもしっかりと演出している。
そして、シン・ゴジラは「ドラマを入れないこと」をテーマにして作られたので、ゴジラ -1.0は「ベタベタなドラマ」を取り入れて作ったという。
VFX+ドラマが面白い映画の秘訣?
アルキメデスの大戦でも、映画の冒頭で、いきなり戦艦大和が多数の米軍の戦闘機に攻撃されて沈没するシーンがVFXで実にリアルに描かれており映画に引き込まれた。
おそらく、映画タイタニックの最初のシーンでタイタニックが海底に沈んでいるシーンから始まっているが、このシーンに影響されたものだと思う。
そして菅田将暉が演じる天才数学者、櫂直が大日本帝国海軍という巨大権力の中枢に飛び込んで大和の正確な建造費用を2週間で計算しようとする姿が映画として実に面白く作られており、気付いたらエンディングロールが流れていたことを思い出した。
原作は漫画であることは周知していたが、正直、読みたいとは思わなかった。
しかし、この映画を見て漫画の「アルキメデスの大戦」に興味を持つことができた。
ゴジラ-1.0も、ドラマを取り入れたことでVFXと映画としての面白さが融合して言語が異なる米国でも大ヒットしたのではないだろうか?
山崎監督の映画はVFXだけではなく、ドラマを組み込むことで「面白い」と思える映画になるように制作しているのだろう。
だから、どの映画も印象に残ってしまう。