来年のことを言うとダメ?
今年もあっという間に12月になったなぁと思っていたが、その12月も、あっという間に中旬を過ぎてしまった。
この時期になると今年は何があったかな?
来年はどんな年になるのだろうか?などとつい考えてしまう。
そんな時、頭に浮かんでくるのが「来年のことを言うと鬼が笑う」という諺。
この諺には「明日のことさえ分からない人間が、どうして来年のことを知ることができるか?予測できない来年のことなど言っても仕方ない。」といった意味が込められている。
では、これをなぜ「鬼が笑うこと」に例えたのだろうか?
鬼は「怖い」・「笑わない」といったイメージがある。
そんな鬼でさえ笑ってしまうほど人間が来年のことを話すなんてことはバカげているということだと自分は思っている。
一説によると「鬼が笑った」という熊本の昔話が由来だとも言われている。
その内容をざっくりと書くと以下のような感じだ。
昔、山の中にあった、お寺に鬼が弟子入りしてきた。
ある時、寺の新しいお堂を建てる際に手伝ってくれたお坊さん達に「だご汁」が振る舞われた。
しかし鬼が「だご汁」を、あまりにも凄い勢いで、たくさん食べてしまうので他のお坊さん達は「おかわり」ができなくて困ってしまった。
お坊さん達は鬼が、もっとゆっくり食べてくれるようにならないか?と知恵を絞った。
そして竹を切って、だご汁に浮かべる案を思いついた。
だご汁に竹が入っていれば、鬼は竹を除けながら食べなければいけない。
すると、ゆっくり食べざる得なくなると考えた。
ところが、鬼は竹ごと、ばりばりと食べてしまった。
そして、鬼は硬い竹を噛んでしまったので歯が折れてしまった。
鬼は「大好きなだご汁が食べれなくなる」と泣き出した。
そんな鬼に、和尚さんは「来年」になったらまた歯が生えてくるよというと鬼は喜んで「笑った」
「来年のことを言ったら鬼が笑った」ので「来年のことを言うと鬼が笑う」という諺になったというもの。
今年のことなら良いのか?
じゃあ、今年のことを言うなら良いのか?というと・・・
来年のことは予測不能だから来年のことを言っても意味がないというなら今年、既に過ぎ去ったことを言っても、結果は変わらないので、やはり意味はないはず。
そう考えると正しくは「今年のことを言っても、来年のことを言っても鬼が笑う」とするべきではないだろうか?
まぁこれだと長くなるし風情が感じられなくなる。
日本人は鬼が好き?
考えてみると日本は「鬼」を引用した諺のようなものが多い。
- 心を鬼にする
- 鬼に金棒
- 鬼の居ぬ間に洗濯
- 鬼の目にも涙
- 鬼の形相
- 渡る世間に鬼はいない
- 鬼が出るか蛇が出るか
- 鬼の霍乱
- 鬼の首を取ったように
- 鬼は外、福は内
どうだろうか?
どれも一度は聞いたことがあると思う。
「渡る世間は鬼ばかり」では?と言われる人もいるかもしれないが、これドラマのタイトルで、「渡る世間に鬼はなし」をもじってつけられたものなので、間違えないようにしないといけない。
ちなみに、「渡る世間は鬼ばかり」というタイトルには、「相手のことを鬼だと思う自分が既に鬼であり、自分が鬼でなければ相手のことも鬼だとは思わないという意味が込められているとドラマプロデューサーの石井ふく子さんが語っている。
鬼は実在しないのだから、悪い例えに使っても誰も傷つくことがない。
そんな意味で、凄く便利な存在なのかもしれない。
だから、鬼は怖い存在だけではなく時には優しい存在になったりもする。
英語圏では?
英語でも、「来年のことを話すと鬼が笑う」に似たような諺があるようだ。
- Don't count your chickens before they're hatched
卵が孵る(かえる)前にひなを数えるな - The proof of the pudding is in the eating
プリンのおいしさは食べてみないとわからない
まだ、起きてもいないことに無駄な労力を使ったり、経験のないことを想像してあれこれ考えても意味はない。
卵が孵ってもいないのにひなの数がどれだけになるだろうか?プリンを食べたことがない人同士で、プリンの味はきっとこーだ、あーだと言ってる姿を想像すると「鬼が笑う」内容ではないだろうか?
英語圏だと鬼ではなく、卵を使った言葉が多いのではないだろうか?
- Don't put all your eggs in one basket
一つのかごにすべての卵を入れるな
この諺は、リスクは分散させることの重要性を示したものだし、
- You can't make an omelette without breaking eggs
卵を割らずにオムレツは作れない
これは、目標を達成するためには犠牲が必要だということを指している。
- Walk on eggshells
卵の殻を踏まないように歩く
注意深く振る舞う必要があるときに使われる。
英語圏では、このように「卵」が引用に使われていることが多い。
これは、英語圏の食文化では、卵はなくてはならない存在だということが関係しているのかもしれない。