朝日新聞デジタルを見ていて、以下のタイトルが気になった。
- 図書館はベストセラー買いすぎ?ルール作り検討へ 「板挟み」の声も
ベストセラー買いすぎ?
どういうことかいうと、どうやら図書館では「ベストセラー本」の予約が多いと同じ本を何冊も購入しているということ。
記事によれば、例えば、区立図書館では、区内全体で本屋大賞を受賞した本だと55冊所蔵している。
どういうことか?
本の予約の場合、取り置き期間(予約が確定して受け取りにいくまで)・貸出期間を含めると最大3週間が1人が占有する日数になる。
すると、この本の場合、年間に貸出できるのは17人~18人となる。
これに対して、この本の予約件数は1884人なので(2023年8月27日 現在)、区全体で1冊しか所蔵しない場合、今、予約しても、読むことができるようになるには、100年以上要することになる。
これは、さすがに現実的な日数ではない。
そんなことから、予約してもなかなか、順番が回ってこないため、利用者からお叱りを受ける場合もあるとか。
仕方なく、予約件数に応じて同じ本を購入する「複本」が図書館では行われている。
複本を行うと次は本の作家や出版社からお叱りを受けることになる。
図書館が同じ本を複数備える「複本」については、以前から作家や出版社が「無料貸本屋化している」と指摘していた。2003年には、日本図書館協会と日本書籍出版協会が実態調査。その後も、15年には新潮社社長がベストセラーの複数購入を批判し、17年には文芸春秋社長が文庫の貸し出し中止を訴えた。
図書館側とすれば、「じゃあ、どうすれば、いいんだよ!」とボヤきたくなるかもしれない。
新刊の入荷が早すぎるのでは?
金沢市図書館の資料新着一覧を見ていると、今月(2023年8月)に発売された本が表示されている。
利用する側とすれば、図書館に早く入荷されることは、有り難いことだが、図書館で借りる人がいれば、売上はその分、落ちてしまう。
ただでさえ、本の電子書籍化により紙の本が売れなくなっているのだから、新刊を、こんなに速く図書館に仕入れてしまうから、本来、買ってくれるはずのものが図書館で借りられるからと買わない人が増えてしまう。
昔の図書館といえば、販売されてすぐの本が仕入れられるなんて少なかったように思う。
しかし、今は図書館に入ってくるのが実に早い。
販売されて一年とか半年間経過していない本は仕入れてはいけないようにすれば、問題は全て解決するのではないのだろうか?
今は、販売されてすぐの本が図書館で借りられるので買わずに図書館に入荷されるのを待っている人もいるはず。
当然、予約数は増えることが予想される。
だったら、新刊を仕入れるのを遅らせれば良いのでは?
図書館の目的を確認してみた。
図書館というのは「図書館法」によれば以下のように定められている。
第二条 このの法律において「図書館」とは、図書、記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して、一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーシヨン等に資することを目的とする施設で、地方公共団体、日本赤十字社又は一般社団法人若しくは一般財団法人が設置するもの(学校に附属する図書館又は図書室を除く。)をいう。
第三条 図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情及び一般公衆の希望に沿い、更に学校教育を援助し、及び家庭教育の向上に資することとなるように留意し、おおむね次に掲げる事項の実施に努めなければならない。
一 郷土資料、地方行政資料、美術品、レコード及びフィルムの収集にも十分留意して、図書、記録、視聴覚教育の資料その他必要な資料(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。以下「図書館資料」という。)を収集し、一般公衆の利用に供すること。
二 図書館資料の分類排列を適切にし、及びその目録を整備すること。
三 図書館の職員が図書館資料について十分な知識を持ち、その利用のための相談に応ずるようにすること。
四 他の図書館、国立国会図書館、地方公共団体の議会に附置する図書室及び学校に附属する図書館又は図書室と緊密に連絡し、協力し、図書館資料の相互貸借を行うこと。
五 分館、閲覧所、配本所等を設置し、及び自動車文庫、貸出文庫の巡回を行うこと。
六 読書会、研究会、鑑賞会、映写会、資料展示会等を主催し、及びこれらの開催を奨励すること。
七 時事に関する情報及び参考資料を紹介し、及び提供すること。
八 社会教育における学習の機会を利用して行つた学習の成果を活用して行う教育活動その他の活動の機会を提供し、及びその提供を奨励すること。
九 学校、博物館、公民館、研究所等と緊密に連絡し、協力すること。
【出典】https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=325AC0000000118
自分の解釈では、必要な資料を収集、整理、保存して、学校教育の援助、家庭教育の向上に資することに留意すると認識した。
ベストセラー本と学術的価値の高い本
ベストセラー本を大量に購入して、迅速に多くの人に読んでもらうのと、ベストセラー本は1冊に留め、その分で個人では高額な学術的価値も高い本を一冊購入するのとでは、どちらの方が図書館法で定められた内容に近いのだろうか?
仮にベストセラー小説でも、芥川賞や直木賞を受賞した本であれば、複本で所蔵しても良いように思うかもしれないが、図書館は確かに無料の「貸本屋」ではないので複本するにしても保管用で1冊余分に持つ程度で良いのではないかと思う。
このため、個人的には学術的価値の高い本を購入するのが正しいように思う。
要望や予約数が多いからと「美容の人気本」を大量に所蔵しておく意味がどこにあるのだろうか?
予約してもなかなか、順番が回ってこないからと図書館に苦情を言うのも、どうかと思う。
図書館の本は原則、館内で読むものだと思う。
しかし、それでは1日で読めない本もあるので、貸し出し制度がある。
小説であれば、1週間あれば読めてしまうと思うので、本によって貸し出し期間を短くしても良いのではないだろうか?
図書館で何十冊も同じ本を所蔵してもピークが過ぎれば、そんなに持つ必要はないのだから、5年もすれば余分なモノは処分することになるはず。
ベストセラーを購入するとしても図書館1箇所に1冊から2冊というのが趣旨にあった数字だと思う。