神宮外苑の近隣住民が東京都を訴えた
東京・明治神宮外苑地区の再開発事業を認可したのは違法だとして、約60名の住民が、都を相手に認可取り消しを求める訴訟を提起しているという報道があった。
樹木を3000本伐採する、高層ビルが建つことで景観が変わる。
いちょう並木が無くなる?など細切れで情報が入ってくる。
神宮外苑とは
正式名称は明治神宮外苑。
明治神宮の東側に位置する。
聖徳記念絵画館を中心に、神宮球場やゴルフ練習場、アイススケート場等のスポーツ施設がある。
青山通りから聖徳記念絵画館に向かう、約300mのいちょう並木が有名。
名前にも、なっているように大半は明治神宮が所有している。
そして維持管理も明治神宮が行っている。
神宮外苑には自分も、何度か足を運んだことがあったので気になっていた。
緑と自然が多く、とても気持ちが安らぐ場所。
渋谷からだと銀座線の外苑前駅、赤坂からだと銀座線の青山一丁目駅。
六本木からだと大江戸線の国立競技場駅で下車して利用していた。
外苑前駅を出て、スタジアム通りを暫く歩いていくと神宮球場の正面入り口が見えてくる。
正面入り口を更に国立競技場の方に向かって歩いていくと、ビジター側の出入口から巨人の選手がランニングのために何人か出てきたことがあった。
遠くからでも内海投手だけは分かった。
そのことを知っている女性ファンが出入口の前で数人待機していて、出できた選手にサインを書いてもらっていた。
この頃は既に野球には興味がなくなっていて野球選手の顔は周知していなかったので、内海投手以外は誰かわからなかった。
選手達はユニフォーム姿で旧国立競技場の方に向かって走っていった。
球場が狭いのに加え、ビジター側の練習場が充実していないのでランニングは球場の周りを走らざる得なかったのだと思った。
聖徳記念絵画館に到着するまでにランニングしている内海選手達と何度か遭遇した。
そんなことをはじめとして、色々な思い出が神宮外苑にはある。
神宮外苑に足を運んだのは数えるほどではあるが、それでも多少の思い入れがあるのだから子供の頃から住んでいる人にとって景観が変わるというのは大変なことであり耐え難いのは理解できる。
しかし、テレビの報道だけでは何が、どう変わるのかが理解できなかった。
神宮外苑をどうしようというのか?
まずは事業主のホームページを確認してみた。
ポイントは以下の3つ
樹木については、現状は1904本だと書かれている。
報道されていた3000本とはかなり異なる。
下の方を見ると小さな文字で、樹高3m以上の樹木本数と書かれていた。
3000本はどこから来た数字なのか調べてみると、Q&Aに記載されていて、3m未満の低木か3028本あって9割はカウントが困難な群生低木(生垣のモクセイ類、植え込みのツツジ類)なので面積から推測した値になる。
低木は伐採するが伐採本数を上回る新植を実施するので緑の割合は現状の約25%から約30%に増加する予定で、伐採した樹木の利活用も検討するとのこと。
そして、伐採を行う低木がある場所が、解体予定の神宮第二球場になる。
事業主のホームページでは高さ3m以上の樹木についてのみ大きく記載されていたので、低木に関しては、問題にならないと考えているのだろう。
調べていくと、神宮第二球場、絵画館前の軟式野球のグランドは無くなり、神宮球場は、現在の秩父宮ラグビー場に移動し、秩父宮ラグビー場が全天候型にかわり神宮第二球場跡地に移動となる。
神宮球場跡地は広場に変わり神宮外苑の東西にあるスタジアム通りといちょう並木側の道路とを繋ぐ連絡路にもなるようだ。
そして複合等Aが高層ビルとなり現在の秩父宮ラグビー場の辺りに建設されるので景観が変わると言われているのだろう。
更に説明動画があったので見てみた。
動画では神宮球場、秩父宮ラグビー場をなぜ、場所を変えて建て替えないといけないのか?といった理由について最初に説明されていた。
神宮球場は着工から100年も経過しているので、バリアフリーにも対応していない。
古い建物なので安全面でも心配な面が多い。
そしてプロ野球の試合が行われている球場で1番狭いが、今の場所では三方向が道路なので、今の場所で、これ以上広くすることは物理的にできない。
また、リニューアルするにしても建て替えるにしても今の場所で行うと長期間、球場を利用することができなくなる。
神宮球場ではプロ野球の試合以外にもアマチュアの試合にも利用されているので現実的な話ではない。
このため、最初に、第二球場を取り壊し秩父宮ラグビー場を第二球場跡地に移転し、その後、現在の秩父宮ラグビー場を取り壊し、跡地には神宮球場を建てる。
伐採する3m以上の樹木も利活用するということなので、十分に検討されているように思う。
唯一、低木3000本に関する説明に関しては、よく探さないと見つけることができなかった。
これが、意図的に隠蔽しているように受け取られてしまう可能性は高い。
疚しい点がないのであれば、3m以上の樹木だけではなく、低木についても一緒に記載しておくべきだと思う。
事業者側の説明資料を見る限り、複合棟による景観が変わる点が若干気になったが、神宮外苑としては残すべきものを残して新しくするべきものは新しくすることで、今よりも格段に美しくなるように感じた。
実際、神宮外苑は手入れが行き届いているようには感じられない。
野ざらしの樹木や植物が茂っているだけのように感じられた。
反対者側の意見は?
事業者側の言い分だけでは不十分なので反対している側の意見も確認してみた。
2023年7月22日に神宮外苑絵画館前西側通路で、Demonstration dialogueということで、神宮外苑の樹木伐採に反対しますという集会が行われていた。
最初に話した方の内容が全てを語っているように感じられた。
100年前に全国の一般市民の方からの献金、献木、勤労奉仕によりできた公共性の高い場所であるにも関わらず再開発の計画は事業者と政治家と官僚が秘密裏に進め、誰も知らないうちに既成事実を作ろうとした背景がある。
1000本の樹木が伐採されたり、有名ないちょう並木が枯れる可能性があったり、大きな高層ビルが作られて景観が、失われる。
歴史的なスタジアムが壊されて、不必要に建て替えられてしまったり、色んな問題がある。
一番気になっているのは民主主義じゃないプロセスで進められてきたこと。
欧米では再開発プロジェクトの場合には、近隣住民の参加を呼び掛けて周りの市民の意見を反映させた形で議論と対話に基いて進めるようになっている。
東京都と事業者が行っていることは、そういったこととはあまりにも逆行している。
【出典】Demonstration dialogue
地元住民に事前に話がない状態で、案を作成し、出来上がってから説明会が開催されたということが心象を悪くしてしまったようだ。
厳しいようだが・・・
反対者側は、神宮外苑は、全国の一般市民の方からの献金、献木、勤労奉仕によりできた公共性の高い場所。
つまり、みんなものだから所有者だから勝手にして良いというものではないという。
では、反対している人達は、これまで神宮外苑に対して何を奉仕してきたのだろうか?
正直、何もしてこなかったのに、今になって、神宮外苑は、みんなのものとか言ってるのであれば、反対する立場ではないと思う。
仮に反対が認められたとして、神宮外苑を永遠に維持管理していくつもりがあるのだろうか?
神宮外苑には人が利用するスポーツ施設をはじめとした色々な施設がある。
その施設も、100年も経てば老朽化するので更新は必要不可欠のもの。
神宮球場はプロアマ合わせて年間450試合も試合が行われている。
人が利用しないで済むような場所であれば、今のまま継承するということは必要かもしれないが、利用している場所であれば時代にあった形に整備することはとても大切なことだと思う。
反対派の方は、反対するだけで、神宮外苑を今後、どうするつもりなのだろうか?
残念ながら、その点については触れられていない。
どちらに任せるべきか?と言えば、事業主の方が全体的なことを考えているように思う。
民主主義に沿って行われていないという理由で聞く耳を持たず反対するのは、間違っているのではないだろうか?