引き上げ成功
沖縄・宮古島沖で2023年4月6日に消息を絶っていた陸上自衛隊のヘリが宮古島沖で沈んでいるのが見つかり引き上げ作業が続いていたが、機体主要部分2023年5月2日に引き揚げに成功した。
機体を調べたところ、操縦席のドア外側に「106」の記載があった。
防衛省は消息を絶った106号機だと断定した。
水深106mの海底に沈んでいたということなので、機体番号の「106」と一致するのは単なる偶然なのだろうか?
FDRとは?
機体からは、FDR(フライトデータレコーダー)が見つかった。
FDRとは飛行時の機体の高度や速度、機内の音声などを記録するもので事故機となった「UH60JA」の場合だと胴体後部の内側に設置されている。
海上を飛行する航空機等のFDRには水没した際に捜索救難を行う機関に対し定期的な電気パルスを発信して位置を知らせる装置である水中ロケータービーコンが取り付けられているが同機は海上を飛行するためのものでないことから搭載されていなかった。
※500mlペットボトルは大きさ比較のために配置したもの
FDRは、胴体後部の内側に取り付けてある状態で見つかり外見上は大きな損傷は見られなかった。
FDRは3400Gの衝撃が加わっても壊れず、1100℃の高熱にも耐えられる容器で作られており水深6000mの海底でも30日間は耐えることが可能。
ブラックボックスとも言われているが実際には黒色ではなく、残骸の中でも他の電子機器と間違わないように明るいオレンジ色または明るい黄色と規定されている。
記憶媒体は、その中に格納されている。
データは誰でも利用できるように暗号化されていない。
今回は水深約106mの海底に26日間沈んでいたことから記憶媒体からデータを取り出すことは可能とみられている。
データとしては、経過時間、高度、速度、機首方位、垂直加速度、ピッチ角、ロール角、エンジン出力、各無線送信時間、フラップ位置、操縦桿の位置、方向舵ペダル位置、横加速度、迎角、機体各部の温度、エンジンの警報など様々な項目の記録が航空法で定められている。
データーは直近の25時間以上が残され、超えた場合は重ね書きされる。
しかし、墜落して停電した場合、記録は自動停止し、墜落した瞬間の記録は上書きされないようになっている。
データ解析に数か月以上
しかしデータの解析には、分野毎に専門家が異なるため、時間がかかると言われている。
防衛省の訓令で事故発生から4ヶ月以内に調査報告をまとめることになっているので、残り約3ヶ月が目安になると思われる。
石川県沖で、2022年1月にF15戦闘機が墜落した事故では、防衛省は同2月に海底からFDRを回収し、解析の結果は、同6月に公表しているので、実際には数ヶ月要するものとみられている。
実際の調査報告書には、どのようなことが書かれてあるのだろうか?
以下は、2013年1月16日に全日空692便が飛行中にメイン・バッテリーが発煙したことから緊急着陸した時に調査状況報告書の中の「飛行記録データの分析」に関する情報の中の時系列イベントの部分を抜き出したものになる。
時系列イベント
08:10:46 山口宇部空港を離陸
同 26:28 上昇中、高度約32,000ftを通過
同 26:40 メイン・バッテリー電圧記録値(Main_Battery_Voltage)が31Vから低下
同 26: 41 メイン・バッテリー不具合の計器表示
同 26:48 メイン・バッテリー電圧記録値が11Vとなった
同 28:05 高度約33,600ftに達した後、降下を開始
同 28:22 約6分間、メイン・バッテリー電圧記録値が変動
同 46:53 高松空港の滑走路26に着陸
同 48:38 誘導路T4上で停止し、非常脱出の指示
同 59:27 DFDRの記録終了
バッテリーの不具合による事故なので、バッテリーに関する調査が目立ったいたが、フライトレコーダーからの情報からだと、このような調査報告書しか作成できないのだろう。
記録媒体は今では磁気媒体ではなくフラッシュメモリを使用しているということで記録データはEthernetでダウンロードできるようだ。
このため、記録データはコピーして専門家に渡せるだろうから、並行して作業は進められるはず。
つまり、時間がかかるのは、専門家が分析して、その後、担当者が報告書にまとめ、問題がないか確認して修正する作業なのだろう。
数ヶ月後、どのような報告書が作成されるのだろうか?