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もっと早く教えてくれよって思った内容を書いていきたいと思います。

日本が識字率を調査していない理由は?

米国には読み書きのできない成人が1600万人

米国には読み書きのできない成人が1600万人もいるとか。 

  • 米国では、読み書きのできない非識字者が成人の8.1%にあたる、約1600万人いる。先進国の中でも高い割合だ。
  • 経済格差や教育への投資が問題だという指摘もある。

【出典】読み書きができない米国人 仕事が…育児が… - BBCニュース

日本の識字率は100%だというのですが、以下のランキングを見ると、日本は28位で米国と同じで、識字率は99.0%。

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ざっくり、日本人の中でも100万人程度は読み書きができない成人がいることになります。

1 リヒテンシュタイン 100%
1 北朝鮮(2008年) 100.0%
1 ノルウェー 100.0%
1 バチカン市国 100.0%
1 フィンランド(2000年) 100.0%
1 ルクセンブルク(2000年) 100.0%
1 アンドラ 100.0%
1 グリーンランド(2001年) 100.0%

9 ラトビア(2011年) 99.8%
9 エストニア(2011年) 99.8%
9 キューバ(2011年) 99.8%
9 アゼルバイジャン(2010年) 99.8%
13 タジキスタン(2011年) 99.7%
13 ウクライナ(2011年) 99.7%
13 スロベニア(2011年) 99.7%
13 ポーランド(2011年) 99.7%
13 リトアニア(2011年) 99.7%
13 バルバドス(2002年) 99.7%
13 ロシア(2010年) 99.7%
13 グルジア(2011年) 99.7%
13 カザフスタン(2009年) 99.7%
22 スロバキア(2004年) 99.6%
22 トルクメニスタン(2011年) 99.6%
22 ベラルーシ(2009年) 99.6%
22 アルメニア(2011年) 99.6%
26 ウズベキスタン(2011年) 99.4%
27 キルギス(2009年) 99.2%
28 イギリス(2003年) 99.0%
28 ハンガリー(2011年) 99.0%
28 チェコ(2011年) 99.0%
28 ドイツ(2003年) 99.0%
28 スウェーデン(2003年) 99.0%
28 ベルギー(2003年) 99.0%
28 モルドバ(2011年) 99.0%
28 オーストラリア(2003年) 99.0%
28 モナコ(2003年) 99.0%
28 デンマーク(2003年) 99.0%
28 アンティグア・バーブーダ(2011年) 99.0%
28 アイルランド(2003年) 99.0%
28 グアム(1990年) 99.0%
28 フランス(2003年) 99.0%
28 サンピエール島・ミクロン島(1982年) 99.0%
28 ニュージーランド(2003年) 99.0%
28 スイス(2003年) 99.0%
28 アメリカ(2003年) 99.0%
28 日本(2002年) 99.0%
28 オランダ(2003年) 99.0%
28 カナダ(2003年) 99.0%
28 トンガ(2006年) 99.0%
28 イタリア(2011年) 99.0%
28 アイスランド(2003年) 99.0%

【出典】世界・識字率ランキング - 世界ランキング

日本では識字率の調査は行っていない

しかし、総務省統計局のホームページによると、日本では識字率の調査は行っていないということ。

  • 日本における識字率は現在調査されていません。

【出典】統計局ホームページ/統計FAQ 27N-Q03 各国の識字率

なぜ、調査を行っていないか?というと日本では1960年代に識字率100%を達成したということで調査を行っていないというものです。

日本は識字率100%だということで調査していないのに、なぜ、米国のワールドファクトブック(CIA)に日本の識字率が99.0%と掲載されているのでしょうか?

100%であればわかりますが、99%です。

UIS Statisticsで確認してみましたが、日本の識字率に関するデータは確かにありません。

日本は、SDGsだと騒いでいる割には元となるデータさえないのですから、世界から置いて行かれている感を強く感じました。

中等教育の終了時に、男女ともに少なくとも最低の読解力レベルを達成している生徒の割合(%)2018年度

  1. マカオ 89.19676%
  2. エストニア88.94572%
  3. シンガポール 88.75278%
  4. アイルランド 88.20065%
  5. 香港 87.40203%
  6. フィンランド 86.45547%
  7. カナダ 86.24969%
  8. ポーランド 85.32439%
  9. 大韓民国 84.89173%
  10. デンマーク 84.00047%
  11. イギリス 82.6969%
  12. スロベニア 82.11901%
  13. スウェーデン 81.60696
  14. ニュージーランド 81.03644
  15. アメリカ合衆国 80.73416

※日本はデータなし

【出典】UIS Statistics

では、日本の義務教育未修了者はどれくらいいるのでしょうか?

文部科学広報によると、平成22年の国勢調査で最低でも約12.8万人いるとのこと。

  • 平成22年国勢調査によると、全国に義務教育未修了者が少なくとも約12万8000人います。ただし、これは「在学したことのない者」又は「小学校を中途退学した者」の数であり、「小学校卒業後中学校に入学しなかった者」や、「中学校を中退した者」の数は含まれていないことから、実際の義務教育未修了者はこの数を上回ると考えられます。

【出典】文部科学広報 218号

15歳以上の人口を計算すると1.1億人です。(計算内訳は以下を参照)

  •  日本の人口:1億2616万7千人
  • 15歳未満人口:1521万人

15歳以上の人口=1億2616万7千人-1521万人 → 1億1095万7千人

【出典】統計局ホームページ/人口推計/人口推計(2019年(令和元年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳),男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級),男女別人口‐

以上から、計算すると・・・

  • 12.8万÷1億1千万=0.116% 

義務教育を修了していない人が約0.1%

15歳以上の最低でも約0.1%が義務教育を修了していないということになります。

これが識字率と言えるのかどうかはわかりませんが、義務教育を終えていて文字の読み書きができないということはないと思うので、米国のワールドファクトブックでの日本で文字の読み書きができない方の割合が1%というのは疑いたくなりました。

義務教育を修了している=文字の読み書きができる が成り立たないのでは?と心配になってしまう記事もあります。

  • 授業(中学校)で生徒に教科書を音読させると、漢字をほとんど読み飛ばす。自分の住所も書くことができない。そんな生徒はクラスに1人、2人ではない。
  • 感じるのは、そうした生徒たちは、生活保護を受けるなど貧しい家庭の子が多いということ。夜に親が家にいない子も多い。ひとり親で、生活費を稼ぐために夜も働いているからだ。

【出典】日本の識字率は100%じゃない? 男性教諭の実感 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

「質の高い教育はみんなに」行き渡っているのか?

SDGsの日本の達成度ランキング(2018年)は15位でした。

そして、目標4「質の高い教育をみんなに」は、目標達成となっています。

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【出典】https://s3.amazonaws.com/sustainabledevelopment.report/2018/2018_sdg_index_and_dashboards_report.pdf(248ページ)

生活費のために勉強ができない子供がクラスに1人~2人いるというのは少ない数だとは僕には思えません。

今回、色々と調べていると、日本が本当に「質の高い教育」を「みんなに」が実現できているとは思えなくなりました。

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その一つが、日本の識字率で、他国が毎年、調べている中で、もしも日本が50年以上も前が100%だったからという理由だけで調査をしていないのだとすると、大きな間違いです。世界中で中等教育の終了時に最低の読解力レベルを達成できる人の割合が2018年の時点で90%を超える国がないのです。

そんな中で日本は本当に今も識字率が100%だと言い切れるのでしょうか?

そして識字率のデータさえもないのに、SDGsの目標4は達成していると評価されています。一体、何をもって達成と評価されたのでしょうか?

文部省が公開しているデータとして、義務教育就学率があります。

義務教育就学率(平成29年度)

学齢児童(小学校):99.95%

学齢生徒(中学校):99.96%

【出典】文部科学統計要覧(平成30年版)1.学校教育総括

上記によると、小学校、中学校共に、ほぼ100%の就学率です。

これをもって、SDGsの目標4は達成としているはずです。

そして、義務教育を終えていれば文字の読み書きもできるようになっているはず。

ということで、識字率もほぼ100%だと日本は認識しているのだと思います。

ゆとり教育の影響 

PISAという国際的な学習到達度調査があります。

日本も調査には参加しています。

PISAでは、15歳(日本は高校1年生)を対象に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの三分野について3年ごとに調査を実施しています。

本当は2021年にも実施される予定でしたが、新型コロナの影響で1年延期となり2022年に実施で予定されています。

日本は2000年から参加していますが、結果は以下の通りです。

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【出典】 OECD生徒の学習到達度調査(PISA):国立教育政策研究所 National Institute for Educational Policy Research

2006年以降、日本は各科目、いずれも3位以内に入ることがなくなりました。

それどころから、読解力に関しては、10位以内にも入れない年が3回あります。

これは、1980年から2010年にかけて行われた、いわゆる「ゆとり教育」が大きな要因なのではないかと思います。

当時、「詰め込み教育」と呼ばれた「知識重視」型の教育から思考力を鍛える学習に重きを置いた「経験重視」型で、学習時間と内容を減らしてゆとりある学校を目指した教育です。(1980年度、1992年度、2002年度の改定で徐々に内容が厳選されました)

2009年までは、「ゆとり教育」の結果が見事に反映されて、目に見えて順位を下げています。2012年以降は徐々に回復しています。

「読解力の低下」

ゆとり教育」の結果が顕著に表れたのは「読解力」だと言えます。

日常会話により「生活言語」という意味では理解できても、これが学校の勉強や抽象的な概念を理解するための「学習言語」となるとPISAでの結果が実情だと思います。

文字が読み書きできるのが識字だということであれば、「生活言語」が理解できていれば良いのかもしれません。

しかし、学習していくためには、「学習言語」を習得しておく必要があります。

日本は、約30年のゆとり教育で、「学習言語」の能力を失ってしまった。

その結果、進化の早い、IT技術で中国や韓国に差を付けられてしまったように感じました。