「涙くんさよなら」は、最初ヒットしなかった
「涙くんさよなら」は坂本九さんのシングル曲としてリリースされましたが、
残念ながら、それほどヒットしませんでした。
「悲しみに決別して前を向いて生きて行こう」というメッセージソングです。
ところが、米国の男性歌手である、ジョニー・ティロットソンがカバー曲として、「Goodbye Mr. Tears」をリリースすると大ヒットしました。
「涙くん」を「Mr. Tears」としたのがお洒落ですね。
実際に聞いてみると、坂本九さんが歌っているものとは、まったく別の音楽になっていました。
ZARDのデビュー曲のモチーフ
そして、ZARDのデビュー曲は、「Good-bye My loneliness」です。
デビュー曲を作る際に、プロデューサーの長戸さんと、自分の言葉で歌うために、自分で作詞をするという約束をします。
この曲の詞をモチーフに作詞をするように、長戸さんは坂井さんに命じます。
長戸さんも、坂井さんがロック好きだということは、知っていたはずです。だからこそ、ZARDというロックをイメージさせる名前にしたはずです。
ロックと言えば、とんがったイメージがありますが、「涙くんさよなら」は正直、そういうイメージとは重なりません。
長戸さんは、綺麗なメロディ(ポップ)と迫力のあるサウンド(ロック)の融合に力を入れていた方なので、メロディはイギリスのロックの雰囲気のあるものが決まっていましたので、歌詞はポップ調にということで、この曲を選ばれたのかもしれません。
そして、何より、坂井さんが作詞未経験だったことから、わかりやすい言葉で構成されている「涙くんさよなら」を選ばれたのだと思います。
涙くんさよなら
- 作詞・作曲:浜口庫之助
この世は悲しいことばかりなので、涙くんなしでは、生きていけない。
だから、涙くんは「友達」です。しかし、素晴らしい恋をしてしまったので、涙くんとは、しばらくさようならです。
長戸さんと坂井さんの打ち合わせ
そしてこの「涙くんさよなら」の世界観をどう実現するか?ということで、長戸さんと坂井さんとで打ち合わせを行ないました。
以下は、そのときのメモです。
悲しみにサヨナラ
期待に答えられない時は
距離を感じる
一番遠い所にあるよ
泣きたい時ほどほがらかでいたい。
悲しみにサヨナラ 悲しみに ーーーーーーーーサヨナラ 風が話しかける
サヨナラ
そして、サビの頭の部分は、中学生でも習う簡単な言葉にする。
最初は、涙くん=悲しみとしたのでしょうね。
でも「悲しみ」に取り消し線が入っています。
デビュー曲のタイトルが決定
そういったことを考慮し決まったのが、タイトルです。
- 私の寂しさ、さようなら → Good-bye My loneliness
最終的に涙くんを「私の寂しさ」と表現したのでしょう。
以下は、Good-bye my lonelinessの歌詞の一部です。
※Tenderness=親切・優しい・柔らかい
Good-bye my loneliness
あなたの胸に そっと Tenderness
飛び込みたいの
だから今は そばにいて欲しいの
抱きしめて 夢が消える前に
そして、私の寂しさ(孤独)と、さよならするというテーマの詞を書き上げたのだと思います。
初めての作詞だった坂井さんに、「涙くんさよなら」というモチーフは詞もわかりやすく最適だと思います。
これで、坂井さんは作詞の流れを取得し、同時に楽しさも感じたはずです。
ZARDのシングル曲は1曲を除き、サビ=タイトルになっています。
※Boyのみ例外で、タイトルが歌いだしになっています。
これは、「涙くんさよなら」での経験によるものだと思います。
つまり、「涙くんさようなら」が坂井さんの作詞の原点とも言えます。