夏の暑い日のこと
そう、あれは、夏の暑い日に六本木にある国立新美術館に向かう時でした。
千代田線に乗り乃木坂駅で降りて出口の「6」と「5」を間違えて「5」から出てしまいました。
外に出て信号機の標識を見ると「日本学術会議前」と書かれていて、「会議前」という文字に疑問を感じたので記憶に残っていました。
「会議前」ってどういうこと?「会館前」の間違い?
左側にあった建物の入り口らしきところに「日本学術会議 入口→」と書かれてます。
どうやら、間違いではないようです。
建物なのに「会議」なので、珍百景に応募しようかと思いました(笑)
その時は、変な名前の建物だなぁという程度で、日本学術会議について何なのかを調べることもしませんでした。
その名前が、2020年10月になって頻繁に報道されています。
菅総理が日本学術会議の会員候補105名の内、6名のみ任命しなかったという内容です。
あの変な名前の建物って国が関わっているものだったのかと初めて知りました。
総理が任命しなかった理由等にはあまり関心は、ないのですが、変な名前の建物で何が行われているのかが気になったので、ようやく僕の重かった腰も上がり、調べてみようと思ったわけです。
日本学術会議とは?
210名の会員と、約2000名の連携会員で職務が担われています。
会員及び連携会員の任期は6年で、3年毎(毎年10月)に半数が入れ替わる仕組みです。
会員は特別職国家公務員として扱われるとのことのです。
そして年間10億円が予算として計上されます。
設立の経緯
- 科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、昭和24年(1949年)1月、内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました
職務
- 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
- 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。
役割
- 政府に対する政策提言
- 国際的な活動
- 科学者間ネットワークの構築
- 科学の役割についての世論啓発
【出典】日本学術会議とは|日本学術会議
どんな人が選ばれるのか?
会員・連携会員は優れた研究又は業績がある科学者の中から選考されるそうです
そして推薦は、現在の会員・連携会員が行います。
共に、5名まで推薦でき、その内会員の推薦は2名以内です。会員の定年は70歳で1度任期を終えると再任はできませんが、連携会員に定年はなく2回まで再任可能です。
会員は以下のいずれかの部に所属します。
- 第1部(人文・社会科学)
- 第2部(生命科学)
- 第3部(理学・工学)
どんな実績があるの?
さて、どんな実績があるのかと、ホームページで提言・報告等を確認してみました。
2020年はまだ途中だからと、2019年の内容を見てみると・・・
- 勧告・要望・声明:0件
- 回答:0件
- 提言:10件
- 報告:6件
おいおい、年間10億円かけて、実績はこれだけ?
じゃあ、2018年は?
- 勧告・要望・声明:0件
- 回答:1件
- 提言:7件
- 報告:2件
2019年より酷くないですか?
2017年は?
勧告・要望・声明:1件
回答:0件
提言:54件
報告:34件
なに?これ?多くないですか?
2017年・・・今から3年前!
前回の会員入れ替えの年です。
しかも、全部が2017年9月30日までに出されています。
間違いなさそうですね。
念のため、2020年も確認しましょう。
- 勧告・要望・声明:0件
- 回答:1件
- 提言:67件
- 報告:15件
間違いありません、2020年も9月30日までに集中して出されています。
特に9月日付のものは多いです。
これでは、夏休みの宿題状態ですね。
3年間の任期の間に実績を上げないといけないということなのかもしれませんが、実績を上げるために夏休みの宿題状態になってしまうって日本の選ばれたメンバーなのに何をやってるんだか・・・って思ってしまいます。
2020年に公表された提言の内容を1つ確認してみます。
「自動運転の社会的課題について」、これは確かに今後、期待される技術でもありますし、興味のある内容なので、これに決めました。
委員長は、会員ではなく、連携会員です。そして副委員長は会員ですか。
この提言の背景は・・・
- 国民が状況をきちんと理解しないまま一部自動化された車を使用すると、過信や誤使用による事故発生や、新技術に対する不信の芽生えが懸念される
で、問題点は?
- 技術開発先行が目立ち、世の中の課題を解決し、どのような社会を目指そうとしているかといった視点が欠如しているように思える部分がある・・・途中省略
自動運転も新しいモビリティサービスも、移動という手段の達成のためのツールであり、それを使って社会をどのようにしていこうとするのかといったグランドデザインが重要であり、それに向けて要点を整理し、なるべき道しるべを明示すべきである。
えっ?国民が状況をきちんと理解しないまま一部自動化された車を使用すると事故につながるというのは、どこへ行ったのでしょうか?
疑問を感じながら、提言の内容を見ます。
- 将来社会のグランドデザインにおける自動運転・モビリティの役割
- 人文社会科学的な価値観・倫理観に配慮した人間中心のデザインと社会実装
- 実証データの整備とエビデンスに基づく持続的な開発
- 産学官連携の国家的プロジェクトによる人材育成と研究開発
どれもこれも、何がしたいのかイメージができません。絵どころか文字で書いた餅みたいなもので絵にすることさえ他人任せといった、どこか他人事、悪く言えば無責任な意見に思えてしまいます。
こんな提言を行って、何が起きるのでしょうか?
いや、何が起きたのでしょうか?
会員と連携会員は、優れた研究又は業績がある科学者の中から選考されるそうです。日本学術会議の会員に選ばれるというのは科学者としての格が上がるということなのでしょう。
日本学術会議は機能しているの?
3年に1回、会員の夏休みの宿題のように提言やら報告が出されています。
そして、提言等(報告を除く。)の公表後は、1年以内に「インパクトレポート」(=メディアや社会へのインパクトを記載したレポート)を作成し、幹事会に提出する必要があります。
任期を終える人が実績として出しているのでしょうが、思いの感じられない形式上のものに見えてしまいます。
提言・報告・インパクトレポートどれも日本学術会議の存在を認めさせるための形式です。そしてその形式を作成することがゴールになっているように思えます。実現させるということについては行われていないことが多いのではないでしょうか?
推薦者6名が任命されなかったということよりも、日本学術会議が必要なのか?ということを議論するべきだと思います。
日本には、日本学術会議のように存在するだけで成果を出していない組織が沢山あるように思います。
無駄、つまり成果を上げていない組織については運営方法を見直すか廃止するべきです。