seegeのまとめサイト

もっと早く教えてくれよって思った内容を書いていきたいと思います。

本はなぜ値引きしないのか?

価格競争が当たり前の時代に、「本」は今でも定価販売です。
このため、「本」だけはどこの書店で買っても同じ価格で買えます。

これは、「再販売価格維持制度」によるものです。

詳細は以下に記載されています。

出版社(メーカー)が個々の出版物の小売価格(定価)を決めて、書店(販売業者)で定価販売できる制度です。この制度は、独占禁止法で認められています。

www.jbpa.or.jp

上記によると、出版物は一般商品と著しく異なる以下の特性があるということです。

  1. 個々の出版物が他にとってかわることのできない内容をもつ
  2. 種類がきわめて多い(現在流通している書籍は約60万点)
  3. 新刊発行点数が膨大(新刊書籍だけで、年間約65、000点)

このような特性の出版物を読者に届ける一番の方法が、書店での陳列販売だとあります。そして出版物を読者が手に取って見てから購入できるのは、この制度により価格が安定しているからだというのです。

そして、この制度がなくなると以下のような不利益が生じるそうです。

  1. 本の種類が少なくなる
  2. 本の内容が偏る
  3. 価格が高くなる
  4. 遠隔地は都市部より本の価格が上昇する
  5. 町の本屋さんが減る

この制度がなくなって安売り競争が行なわれるようになると、書店が仕入れる出版物は売行き予測の立てやすいベストセラーものに偏りがちになり、みせかけの価格が高くなります。また、専門書や個性的な出版物を仕入れることのできる書店が今よりも大幅に減少します。

正直、上記の内容は出版物に限ったことではないと思うんですよね。
そんなの、食品も衣料品も同じだよって・・・

実際のところ、値引きができないのは出版業界の仕組みにあるのでしょうね。
以下は、僕の憶測になります。
出版物が他の商品と決定的に違うのは、ほとんどの商品が委託販売という形で書店が仕入れている点です。委託販売とは、出版社又は取次(出版社の代理店のようなもの)から、書店が出版物を預かって販売をするものです。そして書店は、ある程度期間が経っても売れなかった商品は返品できるのです。
これって書店にとっては凄く都合の良い仕組みですよね。

f:id:seege:20191129192648p:plain

無料で仕入れ、売れたら手数料が入ってきて、売れなかったものは返却できます。
出版社は、新刊を全て取次に卸します。これで出版社は収入が得られます。本が返品されれば、その分の金額を取次に返却します。
これを繰り返すことで出版業界は成り立っているのです。

といっても、実際にはあまり返品が多い書店には取次が委託数を減らしたりすることになるので、売れなければ返却するということは書店はしないようにしています。

これって、マグロは泳ぐのをやめると、呼吸ができなくなるので死んでしまうというのと同じですよね。

このため出版社は、新刊を出し続けないと破綻するので、出版に専念できるように出版物の流通やお金の処理を取次に任せているということです。
書店はこのため、売れそうな本ばかりを仕入れることはできないことになります。


書店が値引き販売するためには、委託販売ではなく仕入れ販売にしないといけません。しかしそれを許してしまうと、取次、他の書店との価格のバランスが崩れてしまうので、委託販売以外を許すことができないのです。

このような仕組みなので出版社は、電子書籍に完全に乗り換えることができず、これまで通り、印刷の出版物を出しつづけないといけないのではないかと思います。

また、この仕組みだからこそ、先に挙げた不利益の内、以下の2点が生じていないのは納得できます。

  • 本の種類が少なくなる
  • 本の内容が偏る

今では、買えないものはないと言われているamazonも最初は本の販売だけでした。

f:id:seege:20191128041736p:plain
これも出版業界の仕組みにより、本が定価販売しかできないので価格競争がない、売れた時にだけ請求が生じるので入金は早く、出金は遅いという現金が手元に残りやすいので、投資がしやすかったということが大きな理由だと思います。
amazonは、最初から今のamazonの姿をイメージしていたのでしょうね。

ちなみに、amazonの名前の由来ですが、以下の書籍に書かれています。

最初は、Cadabra (カダブラ)という名前を社名に使おうと考えていましたが、アマゾンの最初の弁護士であるトッド・タルバートが、「Cadabraの発音は解剖用の死体を意味するCadaverに似ているので、電話越しに言われると、判別が付きにくいので印象が良くないと反対してベゾスを説得しました。最終的には、世界最大の河川であるアマゾン川の名前を冠するアイデアを気に入ったということです。

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

 

しかし、出版業界は変化しているのです。
出版社が書籍を発行し、取次が仕入れ、書店で販売するという役割分担になっています。それぞれ別資本の会社であったり店なのに、これが一つの企業のように機能しているので、どれか一つが転んでしまうとムカデ競争のように他も連鎖的に転んでしまうはずです。

それを示すことが2016年に起きています。

老舗の芳林堂書店が自己破産申請を行ったことで、取次である太洋社も自主廃業を発表しましたが、芳林堂書店の自己破産による約8億円の焦付は、どうにもならず、太洋社も破産に追い込まれました。そして太洋社の破産により、全国10の書店が閉鎖や休業に追い込まれたのです。

www.huffingtonpost.jp

取次、書店が破産などで減少していけば、当然、出版社にも影響が出ますので、出版社も減少方向です。

www.j-cast.com

つまり、出版業界の自転車操業の仕組みのバランスが崩れてしまったのです。
出版業では、唯一、電子書籍が好調なので紙の赤字補填をデジタルで行うしかありませんので、今後は、紙からデジタルへの移行が進むことが予想されます。

www.nikkei.com

電子書籍でも漫画が一番売れていますので、「漫画村」のよう海賊版サイトは、出版社にすると大きな障害になります。このため「漫画村」が閉鎖されたことも売り上げが伸びている要因になっているようです。

やはり、これからは、今までの出版業界の流れを変えて、電子書籍への移行が必要になるのでしょう。紙での出版は減っていくことで取次、書店は更に減少することになるのかもしれません。
電子書籍化が進めば街の書店だけではなく大型書店に影響がでるはずです。 

次は電子書籍について考えてみたいと思います。