以下の記事の中で、出てきた、ディオバン データ操作問題についてです。
ディオパン データ操作問題を覚えていますか?
ディオバンというのは、血圧を下げる薬なのですが、脳卒中を防ぐ効果もあるということで国内で年間1千億円を超えるノバルティス社の看板商品でした。
※ 下の写真はディオパンとは全く関係ないイメージ画像です。
血圧が下がれば脳卒中を発症する確率も減ってしまうので、ディオバンが脳卒中を防ぐ効果もあることを示すためにはとはデータが必要になります。
ノバルティス社から日本の5つの大学教授等に巨額の資金が渡され、薬効を調べる臨床研究を行っていたのですが、臨床研究の論文のデータをノバルティス社の元社員が、人為的に操作してディオバンが脳卒中にも効果があるように見せたというものです。この問題のポイントは以下の3点です。
- ディオバンの血圧を下げる効能に関しては問題がない。
- データ操作はディオパンの認可後に行われた。
- データ操作は脳卒中予防の効果に対してのみ行われた。
- 臨床研究を行った大学の教授にはノバルティス社から巨額の資金が渡されていた。
そして、2012年4月にランセット誌という週刊の医学雑誌に掲載された記事が発端でデータの異常が見つかり騒動となったものです。
臨床研究の論文データ操作は、旧薬事法の誇大広告違反に該当するということで2014年に厚生労働省東京地検に告発状を提出し、東京地検は元社員、ノバルティス社を起訴しました。2017年3月16日の東京地裁での一審判決は無罪。その判決を不服として控訴した2018年11月19日の東京高裁での二審判決も無罪となりました。
以下の3要件を全て満たしていないということが、一審、二審での無罪理由となります。
- 顧客誘引性
- 特定性(商品名の特定)
- 公知性(一般の人が認知できる)
上記3つの内、2と3には該当しますが、1の顧客誘引性については満たさないというのです。つまり、論文は広告にならないということです。
実際には、この不正操作された論文を広告としてして使用して医師たちにバラまきました。
もう一つ、大きな要因だったのが、法律です。
当時の法律では、認可前の「治験」の段階での研究については厳しい規制がありましたが、認可された後については法律上の規制がありませんでした。
本件は今もまだ最高裁で争われているようです。
当時の法律上は、罪に問えない状態なので裁判官も、無罪と判断せざる得ないことに歯がゆいと感じているはずです。
以下は、2011年の時の広告です。
「世界で最も処方されているARBです」この広告を見た医者は高血圧の治療薬として、ディオバンに興味を持つはずです。そして臨床研究の結果を確認すると脳卒中にも効果があると書いてあれば、医師はディオバンを処方するのではないでしょうか?
そして降圧剤は短期間ではなく長期に渡り服用するものです。
今回は血圧を下げることに関しては薬効に嘘はなかったので問題がないかもしれませんが、服用していたものにすると、データの不正操作があった薬というのは認可されたあとであっても使用したくないものです。だったら、医者に相談して使用しなければいいでしょう?という方もいるかと思いますが、話はそんなに単純ではないのです。
降圧剤というのは長く服用するものなので、長い時間をかけて自分の身体に合ってきて血圧が安定してくるんですね。それがデータの不正操作があったから直ぐに服用をやめて別の薬にすればよいと言われても、新しい薬になっても効果が持続するかというとその保証はないということです。そうなると、ディオバンは血圧を下げる効果については問題がないということなので、不正があった薬を継続して服用するという選択もあるのです。これが今でもディオバンが販売され続けている理由なのでしょう。
そういったことを、医師は、しっかりと説明してくれないと服用している方は、事情がよくわからず不安になります。
ディオバンの問題を受けて、2017年4月7日に 「臨床研究法」が成立しました。
そのポイントは5つです。
- 対象は「製薬企業から資金提供を受けた研究」
- 治験と同等の「実施基準」順守を義務化
- 実施計画の届け出を義務化 「認定委員会」で審査
- 研究の改善・停止を厚労省が命令
- 資金提供の公表 製薬企業に義務付け
2017年4月に成立しているものが、なぜか施行は、その約1年後の2018年4月1日からです。なぜ、決まったことを実施するのに、1年も必要なのでしょうか?
新薬が認可されるまでも長い、問題が生じ法律立案し施行するまでにも時間を要する日本、働き方改革だと業務改善を民間に求める前に、行政改革をするべきなのではないかと思います。