2024年5月6日(月)東京ドームで「4団体統一世界スーパーバンタム級タイトルマッチ 井上尚弥 vs ルイス・ネリ」が行われた。
井上尚弥といえばアジアで初めて、ボクシングの4団体で世界王者になった人
それも、1階級だけではなく、バンタム級とスーパーバンタム級の2階級での統一王者だ。
- 世界ボクシング評議会(WBC)
- 世界ボクシング機構(WBO)
- 世界ボクシング協会(WBA)
- 国際ボクシング連盟(IBF)
戦績は、26戦 26勝 23KOの負けなし。
ダウンの経験もなく、右目を一度、切ったことがあるだけで、ほとんどパンチを受けたことさえない。
歴代の日本人ボクサーで、最強と言えるのではないだろうか?
ボクシングは積極的には見ないが、日本最強のボクサー井上の試合となれば別。
ゴールデンウィーク最終日ということ、Amazon Prime会員は無料で試合を見れるということで見ないという選択肢はない。
しかし、Amazon Primeでは以下の4試合の中継がされ、井上の試合は一番最後。
これは、いつ始まるのか見えないので、リアルタイム観戦は断念して、見逃し配信で翌朝に見ることにした。
ちなみに「井上拓真」というのは、井上尚弥の弟で現在の、WBA世界バンタム級の王者だということを今回、初めて知った。
WBA世界フライ級タイトルマッチ
- ユーリ阿久井政悟 vs 桑原拓
- 井上拓真 vs 石田匠
- ジェイソン・モロニー vs 武居由樹
スーパーバンタム級4団体タイトル戦
- 井上尚弥 vs ルイス・ネリ
ルイス・ネリってどんな人なのか知らなかった。
調べてみると、2階級で世界王者になった経験があるので相当強かったのだろう。
しかし、2017年と2018年にWBC世界バンタム級タイトルマッチで山中慎介と2度対戦した時に、2017年はドーピング違反、2018年は体重超過が判明。
このため、日本ボクシングコミッションから日本での活動停止処分が下され事実上の永久追放になっていた。
そんなことから「悪童」ルイス・ネリという異名がつけられていて日本のボクシング関係者やファンからは嫌われているようだ。
その後も、試合の都度、体重超過を繰り返していた。
更にルイス・ネリは井上を挑発するような発言も行っていた。
そんなことから井上は「ボクシング界から追放するべきだ」とツイッター(現X)で主張していた。
ルイス・ネリは減量に限界を感じたのか、バンタム級を諦めてスーパーバンタム級に変わった。
井上はバンタム級で4団体制覇を果たした。
そしてスーパーバンタム級への変更を宣言した。
しかし、スーパーバンタムにはルイス・ネリがいた。
井上が同階級になるとルイス・ネリはまた挑発するようになった。
しかし試合は実現しなかった。
井上はスーパーバンタム級でも4団体を制覇した。
その際の勝利者インタビューで井上は「来年5月に噂されている試合が実現するかはこれからの交渉次第。ファンが喜ぶ試合、観たい試合を実現していきたい。どんどん声をあげてほしい」と話した。
「来年5月に噂されている試合」というのは、ルイスネリとの試合のこと。
ルイスネリはWBC世界スーパーバンタム級の1位。(WBOは2位、WBAは4位)
対戦成績は36戦35勝1敗(27KO)
井上への挑戦者の資格としては十分。
2024年2月にルイス・ネリと陣営はJBCに謝罪と資格回復を求める書面を提出した。
規定に基づき処分は解除された。
こうして、井上尚弥 vs ルイス・ネリ戦が実現した。
しかし、度重なる体重超過と挑発で井上は、相当、ルイス・ネリに対して思うところがあったのだろう。
試合開始
試合開始と同時にこれまでの鬱憤をはらすかのように積極的に攻める井上。
何発かはルイスネリの顔面に軽く入っている。
その都度、大きな歓声が上がる。
これに対してルイス・ネリも負けじと井上の顔面にヒットさせている。
井上って相手のパンチをこんなに受けるタイプではなかったように記憶していたので、この人は、やっぱり強いと思った。
そして開始から1分40秒が経過すると、2人の距離は試合開始直後より随分と縮まっていた。
井上が左アッパーを放つとルイス・ネリは右腕でブロック。
同時に教科書通りのような左フックを井上の顔面に向けて水平に振り抜いた。
これがクリーヒットすると井上が倒れた。
井上の初めてのダウンだ。
会場は大きな歓声に包まれている。
井上陣営も初めて見る井上のダウンに信じられない様子だった。
ルイス・ネリの36戦35勝はダテではなかったと思った。
立ち上がった井上を勢いづいたルイス・ネリが攻めたてた。
井上が亀のようになって防戦一方の状態にまで追い込まれた。
一瞬、井上が負けるのか?と思った。
結局、その後は、いつもの井上に戻ったようで安定した試合運びで第6ラウンドにルイス・ネリをマットに沈めTKO勝ちしている。
2回勝てなかったキューバの選手
プロになってからは、負けなし、ダウン無し(26試合目まで)という素晴らしい戦績だったが、アマチュア時代は負けたこともある。
2021年8月の京都合宿での車での移動中に、東京五輪ボクシングの予想を聞かれて以下のように答えていた。
亮明(田中)も行くんじゃないですか?金は難しいと思いますけど・・・
次がリオ(五輪)の1階級下、ライトフライ級の銀メダル・・・銀メダリスト。
今までもメダリスト連破しているから・・・でも反対の山場に自分が2回勝てなかったキューバの選手(ヨスバニー・ベイティア)がいるんですけど・・・強いっすね・・・
あれは動きが尋常ない
自分が世界選手権の予選で勝てばロンドン(五輪)に行けた確定の試合で負けたんですよ。その前が、世界ユース・・・17~18歳かな・・・17,18が出る世界大会でベスト16で当たって11対0で負けたんすよ自分。
※ヨスバニー・ベイティアは準々決勝で金メダルを取った英国のガラル・ヤファイに敗れ、田中亮明は銅メダルを獲得している。
好きになれない井上
井上尚弥は間違いなく強いし、凄いとは思う。
しかし、どこか一歩引いてしまう感じがする。
それは、試合後にルイス・ネリが握手を求めに井上の後ろから近寄っていったのに井上は、そっけない態度をとり続けていたところに現れていると思う。
確かにルイス・ネリは褒められたボクサーではないかもしれないが、試合を盛り上げるためのリング外でのエンターテイメントという部分も含まれていると思う。
試合が終わればお互いに讃えあうのがスポーツ選手というものではないだろうか?
この試合はルイス・ネリの過去の行いや、井上を挑発してきたことで出来上がった因縁で盛り上がっていたのではないのだろうか?
試合が終われば、それまでのことは全て忘れて相手を讃える。
井上ももう30歳を過ぎているのだから、大人の態度を見せて欲しい。
それが、ほんの少しだけ欠けているように思える。