日本で2回目のメイウェザー戦
米国のフロイド・メイウェザーと日本の朝倉未来のエキシビションマッチが9月に行われることが決まった。
具体的な日付やルール、詳細は2022年6月に発表するとのこと。
メイウェザーは、2018年の大晦日に那須川天心とのエキシビションマッチを行い、1ラウンドに3回ダウンさせてTKO勝ちしている。
那須川天心は、デビュー戦から無敗で(当時28戦28勝)キックボクシング史上最高の天才と称されていた逸材だ。
2022年6月19日に、日本格闘技史上最大と言われているK1の武尊選手との一戦が行われて見事、判定勝ちしている。
ボクシングルールに加え、かなりの体重差があったとはいえ、スピードと防御には定評があったので、1ラウンドTKO負けという結果には驚きしかなかった。
スーパースター・メイウェザー
メイウェザーもボクシングではデビュー戦以来、無敗だ。
しかし、それだけではなく、5階級制覇した上に1度もダウンを喫していない。
ボクシングでは世界のスーパースターになる。
試合内容も凄く、18戦目で初の世界タイトルマッチを経験し、勝利を収めたあとは、ほとんどが世界戦。
または、世界チャンピオンクラスの選手との試合なので、それで無敗、しかもダウン経験がないというのは凄いとしか言いようがない。
那須川天心もキックボクシング史上最高の天才と称されているが、所詮は日本だけのことで世界レベルでの話ではないので、1ラウンドTKO負けという結果は仕方がないのかもしれない。
メイウェザー強さの理由は?
ではメイウェザーはなぜ、そこまで強いのだろうか?
メイウェザーの強さは、反射神経、ディフェンス能力が高いところにあると言われている。
しかし、それだけでは、ダウンはしないとしても無敗ではいられなかったはずだ。
ボクシングはKOだけで勝てれば良いが、判定にまで持ち込まれることは必ずある。
何より避けているだけでは勝てない。
判定になった時にポイントになるのは、相手よりいかにパンチを多くヒットさせたか?であり、パンチを多く避けたかではない。
メイウェザーが凄いのは、防御だけではなく、無駄なパンチが少ないとこにある。
相手の動きをしっかりと見て、ヒットできると思った時しかパンチを出さない。
だから、パンチのヒット率が高い。
相手のパンチは避けて、無駄なパンチは出さず、相手により多くのパンチをヒットさせる。
これに加えて相手の動きに試合中に順応できてしまうのだから隙が全くない。
パンチだけのボクシングというルールの元では最強なのかもしれない。
王者がダウン寸前まで追い込まれた
メイウェザーが、世界3階級制覇を達成した、米国のシェーン・モズリーと2010年に試合をしたことがある。共に30代だった。
シェーン・モズリーはパワーとスピードが売りの天才的ボクサー。
この試合で、メイウェザーが、第2ラウンにモズリーの1発を受けて膝が折れてリングにひざまずきそうになる寸前の打撃を喰らっている。
メイウェザーは、その時のことを振り返り以下のように語っている。
- パンチを打って来てバン!
- ヤバいと思って掴む。
- 掴んでクリンチ。
- なぜ、こういう言い方をするのかは事実だから。
- 掴んで、なるほどと思った。
- 良いパンチだった。
- ガードを上げて。
- たまにあることだ。
- そういう風に打たれると痛みはない。
- そのようなパンチを喰らうと感じさえしない。
- そういうのを喰らうと全部、回るんだ。
- でも、私は常に鍛えている。
- コンデションは常に最高。
- なので、何があっても準備はできている。
- 1発喰らって、バン!また当てられた。
- それが1発目だった。
- そして少しラウンドが進んで、また当てられた。
- バン!くそ!
- 私はガードを上げて彼に「上等だぜ」と言った。
- 2発いいのを、当てたけど俺を殺さなきゃだめだぜ!
- コーナーに戻った時、こうやって座った。
- よく、考えてみろと自身に言ってやった。
- 座って考えてみろ?問題ない!まだ、10ラウンドあるんだ。
- 彼は、ただの「フロントランナー」だ
「フロントランナー」は最初の4ー5ラウンドしか戦えない選手のこと。
- 残りのラウンドはもう、燃料切れ。
- 本物のチャンピオンは人生も同じ。
- チャンピオン、一般人、これは日常生活にも当てはまる。
- 調整の仕方を分からなくてはいけない。
- やるべきことをやるだけ。
- 調整しろ。
- 私がしたことはそれだけ。
- 調整した。
調整とは?
メイウェザーは、調整という言葉をよく使う。
2014年のWBA王者マルコス・マイダナとの試合も序盤は強打に苦戦したが、中盤以降は「調整」して逆に相手に対して有効打が増えていった。
その時の試合後も、「厳しい試合だったが、本物の王者は後から微調整できるんだ」ということを発言していた。
録音した音を、あとからミキサーで調整できるように、メイウェザーは手強い相手に対しても試合中に微調整できてしまうということなのだろう。
試合中に変われる人というのは、間違いなく強い。
普通は試合までに相手に応じて変われるように調整するものだが、試合中に調整ができれば、相手も試合中に調整できないと太刀打ちできない。
メイウェザーの本当の凄いところは「試合中に微調整」できるということになる。
朝倉戦はどうなるか?
45歳のメイウェザーはピークは間違いなく過ぎているはず。
それでも、世間では、1ラウンド持たずに朝倉が負けると予想する人が多い。
負けることが前提で、1発でも当てて欲しいという人もいる。
メイウェザーとボクシングで戦えば、朝倉に勝ち目はないと思っていることになる。
45歳と29歳の年齢差は関係ないことを知っている。
朝倉はクレベル・コイケ戦で失神負けしてから変わった。
トレーニングを真面目にするようになり、それまで素質だけだった戦い方から、技術・身体をしっかり作り上げての戦い方に変わっている。
だからといって、ボクシングでの経験・技術に関しては遠く及ばない。
もし、朝倉が天心と戦って、メイウェザーと同じ勝ち方ができるか?と言えば、今の朝倉でもできないはずだ。
天心を物差しとして考えると、残念ではあるが、自分も朝倉に勝ち目はないという答えになる。