悲しい映画を見たあとに更に悲しいことに・・・
車いすを利用されている方が1人で映画館に行って、車いす用の席を利用せずに、車いすに対応していないプレミアムシートのチケットを購入し、映画館のスタッフに手伝ってもらって映画を観覧した。
映画が終わった後、支配人みたいな方が来られて、「この劇場はご覧の通り段差があって危なくて、お手伝いできるスタッフもそこまで時間があるわけではないので、今後はこの劇場以外で見てもらえるとお互いいい気分でいられると思うのですがいいでしょうか。」と言われた。
これまで、3回以上、今回と同じように手伝って頂いて、ここで見ていたので「でも今まで手伝って頂いて3回以上ここで見てるんですが?」と言うと、他の係員に聞いたところそう言った経験はないとおっしゃっていまして、ごめんなさいって謝られた。
SNSに投稿すると・・・
このことが凄くショックで悔しかったという内容をSNSに投稿した。
映画館の運営会社は「弊社従業員による不適切な対応に関するお詫び」ということで謝罪文を公表している。
ところが、SNSでは投稿した側を批判する以下のような意見が目立った。
- わざわざ車椅子用の席があるんだからなぜそこを使わないのか?
- 介護者も割引になるのに、なぜ介護者をつけないの?1人で行く方が
悪い。 - 無料で助けてもらえることが当たり前だと思うなよ。
-
映画館に事前に問い合わせ・相談して欲しい。
批判への回答
投稿者は、これらの批判に対して以下のように答えている。
Q:わざわざ車椅子用の席があるんだからなぜそこを使わないのか?
A:是非一度、映画館の車椅子用の席で2時間近くスクリーンの1番前の席で
映画を見てほしい。脊椎に障害のある人間が2時間以上、首をほぼ90度に近い状態でいることがどれだけしんどいか、想像してほしい。映画館で一番売れ残る最前席しか準備されないのだ。
Q:介護者も割引になるのに、なぜ介護者をつけないの?1人で行く方が悪い
A:1人で映画を観たい気持ちの時や、アテンドを依頼してもすぐに見つかるかわからないことを知ってほしい。
Q:無料で助けてもらえることが当たり前だと思うなよ。
A:法律を知ってほしい。【2024年4月施行等】改正障害者総合支援法があると言うことを。
Q:映画館に事前に問い合わせ・相談して欲しい
A:月に二回くらい映画館を利用する私は車椅子用席で首ピローつけながら見ています。
映画館側は、いい気分ではなかった
正直、批判している人の意見は弱者だからって、甘えてばかりいてはいけないでしょう?って感じに受け取れた。
自己主張が強い感じの投稿だったので、それで、同情よりも反感を買ってしまったのだろう。
そして、当事者である映画館のスタッフが最後に「今後はこの劇場以外で見てもらえるとお互いいい気分でいられると思う」と伝えているが「お互い」という言葉を使っていることから、映画館側が「いい気分」では、なかったことが伺える。
そして、投稿者は映画を見て感動していたのに、この言葉によって台無しにされてしまっている。
つまり、スタッフが何も言わなければ、投稿者は映画を見て感動したまま帰ることができたことになる。
そういう意味で、スタッフが投げかけた言葉は映画を提供している側として、映画を台無しにしてしまったのだから「不適切発言」だと言わざるえないので「不適切な発言に対するお詫び」という内容は適切な判断だったと思う。
投稿者に問題はあったのか?
では、投稿者には問題がなかったのか?というと、全くないとは言い切れないようだ。
まず、映画館の車いすの対応状況を確認すると以下のように書かれていた。
スロープ、車椅子スペース、また車椅子のお客さま用のトイレをご用意しておりますが、劇場によりご用意のない設備もございます。また、車椅子スペースは数に限りがございます。詳しくは劇場までお問い合わせください。
また、車いすをご希望の場合は、ご不便をお掛けいたしますが「e席リザーブ」オンライン予約はご利用いただけません。各劇場の有人窓口までお越しください。
そして「詳しくは劇場までお問い合わせください」と書かれている。
投稿者の投稿を見る限り、今回、過去3回以上を含めて劇場に問い合わせることなく行っている。
過去3回、プレミアムシートを利用しているということなので、最初の1回目は知らなかったで済むかもしれないが、2回目以降は一人ではプレミアムシートを利用できないことはわかっていたことになる。
投稿者は事前に問い合わせなどすることなく、映画館に行ってしまっていたので、
映画館側のスタッフの好意で対処してもらっていたことに気がつくことができなかった。
映画館のスタッフの協力が必要なのであれば、先方の都合もあるので事前に確認するのは、お願いする側の最低限のマナーだと思う。
車いす用の席について
そして今回は、全てプレミアムシートのスクリーンを利用されているようなので車いす用の席は用意されていなかった。
しかし、最初に利用したときには車いす用の席がないスクリーンでも映画館のスタッフに介助してもらえたので投稿者は、この映画館は突然に行っても大丈夫だと思ってしまった。
更に投稿者は車いす用の席を「映画館で一番売れ残る最前席しか準備されないのだ」と話しているが車いす利用者の席なので出入り口に接続されている席でないと階段を利用しないといけなくなる。
また、非常口にも近い必要があるので車いす用の席は、どうしても場所が限定されてしまうことを考えないといけない。
この映画館は、一部のスクリーンを除き、出入り口は最前列に接続されているので、階段を利用せずに利用できる席は最前列しかないことになる。
介助行為は責任が発生する
また、109シネマズ(※今回の件とは無関係)では、移動に関してサポートが必要な場合は、対応してもらえるようだが、それでも、、お客様のお身体や車いすを持ち上げるような対応は安全を考慮してお断りする場合があると記載されている。
お座席に関しましては、非常時におけるお客様の安全を考慮し、非常口に近い場所に設置・ご案内をさせていただいております。
また移動に関してサポートが必要な場合はお気軽にお声掛けください。
*お客様のお身体や車いすを持ち上げるような対応は安全を考慮し、お断りする場合がございます。
介助は介助する側に安全面での責任が発生するので、簡単に行うことができない。
今回、問題となっている映画館は車いす用の席がないスクリーンで4段の階段がある席に運んだということなので、おそらく車いすをスタッフ数名で持ち上げて運び、更に席には投稿者の身体を持ち上げて移動したものと思われる。
これは、安全面を考えた場合、行ってはいけない対応だったと言える。
車いすに乗せたまま階段を上り下りするなんてことは介助経験がある人間なら怖くて絶対に行えない。
つまり映画館のスタッフが介助して席に移動した対応は一見すると素晴らしいように思えるが安全面を考えた場合、行ってはいけないことになる。
このため、今回、映画館の運営会社は「不適切発言」に対してのみ謝罪しているが、本当は「不適切な介助行為」についても謝罪する必要があると思う。
以上から、映画館の運営会社は、善意から介助行為を行ってしまった点に問題があり、投稿者は、事前に映画館に確認・相談しなかった点に問題がある。
どちらも、知識が不足していると思われるので、車いすの利用者に対する日常生活での教育を双方に対して行う必要があると思う。