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iPhoneの商標はアイホン株式会社のライセンス

iPhoneの商標はアイホン株式会社のもの?

先日、iPhone 15の記事を書くために、iPhoneのホームページを見ていると、気になる内容が目に入ってきた。

  • iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスにもとづき使用されています。

アイホン株式会社のライセンス?

アイホン株式会社って、あのインターフォンの会社?

英語名では、「AIPHONE CO., LTD.」なので「AI PHONE ]なので、「iPhone」とは異なる表記。

しかし、日本語読みでは、「AIPHONE(アイフォン)」と「iPhone(アイフォン)」で同じになる。

アイフォンのホームページの中にFAQがあって、その中を確認すると以下のようなことが真面目に記載されていた。

質問:iPhone(アイフォーン)の調子が悪いです。

回答:弊社はインターホンを製造・販売しております、アイホン㈱です。
お問合せはアップル社様もしくは販売店様にお願いします。

【出典】iPhone(アイフォーン)の調子が悪いです。 - よくあるご質問(FAQ)|アイホン株式会社

このことから、アイホン株式会社に対して、Apple社の「iPhone」のことを問い合わせている人がいるということになる。

調べていくと、以下の記事が見つかった。

アイホンは、国内では「アイホン」、米国をふくむ海外では「AIPHONE」の商標権を取得して製品を販売している。2007年6月のiPhone発売以降、報道を見た消費者などから同社に問い合わせが相次いだといい、混乱を防ぐ目的で、両社で協議していることを発表した。

 協議内容について「守秘義務があるので、具体的には話せない」としている。

【出典】アイホンとAppleが協議 「iPhone」と商標類似 - ITmedia NEWS

やはり、iPhoneの発表により、アイホン株式会社に対して何らかの問い合わせがあったようだ。

インターホン最大手のアイホン名古屋市)は2008年3月24日、自社の商標が米Appleの携帯電話「iPhone」と類似している点について、昨年からAppleと協議してきた結果、友好的合意に至ったと発表した。

 「iPhone」(アイフォーン)の商標について、国内では同社がAppleに対して使用を許諾。海外では両社の商標が共存することで合意した。契約内容の詳細は非公開。

 アイホンは、国内では「アイホン」、米国を含む海外では「AIPHONE」の商標権を取得して製品を販売している。

【出典】アイホン、iPhoneの商標問題でAppleと「友好的合意」 - ITmedia NEWS

2012年7月2日、インターホン大手のアイホンが過去4年分の決算短信の一部訂正を開示した。

その内容は営業外収益の項目修正だ。2009年3月期、10年3月期、11年3月期、12年3月期それぞれの営業外収益内訳に「受取ロイヤリティー」という項目を新設。「その他」に計上されている金額を1億円減額して、その分、受取ロイヤルティーの項目に1億円計上する、という単純な訂正だ。

「受取ロイヤリティーは当社の営業外収益全体の100分の10以上を占めている。そのため別項目として開示しなければならないと監査法人から指摘された」(アイホン経理部)。

【出典】アイフォーンの商標使用料は年間1億円? アイホンの決算から | スマホ・ガジェット | 東洋経済オンライン

また、アイホン株式会社のホームページでも以下のようなお知らせが公開されている。

Apple社の携帯電話「iPhone」(アイフォーン)の商標に関し、弊社が保有する国内および海外の商標権について交渉を行ってきました。このたび、両社は、日本国内においては弊社がApple社に使用許諾を、日本以外の地域においては両社の商標が共存することで友好的な合意に至りました。その他の契約内容については、公表できませんのでご了承願います

【出典】平成20年3月24日 商標に関するお知らせ

ロイヤリティの支払い

アイホン株式会社は、「アイフォーン」の日本での商標をApple社に対して、ロイヤリティを支払ってもらう代わりに日本での「iPhone」という名前の利用を認めたことになる。

実際、アイホン株式会社の決算書を調べてみると、2019年、2020年、2022年と「受取ロイヤリティー」の項目に1500百万円、つまり、1.5億円が計上されていた。

全額が「iPhone」に対するものなのかどうかまでは、不明だが、最低でも1億円以上は毎年、支払われているということになる。

【出典】2021年3月期 決算短信 (PDF:888.0 KB)

【出典】2023年3月期 決算短信 (PDF:940.0 KB)

※2022年3月期 会計方針の変更により、受取ロイヤリティについて、従来は、入金時に収益を認識する方法によっておりましたが、ライセンスが供与される時点で知的財産を使用する権利である場合は、一時点で収益を認識する方法に変更しております。

苦肉の策

考えてみれば、知名度からすると、「iPhone」の方が圧倒的に上なので、アイホン株式会社のことを知らない人にすると、アイホン株式会社が、「iPhone」の名前を使用しているのではないか?と思ってしまうかもしれない。

Apple社は、商品を発表する前に、「iPhone」で各国で商標登録を行なおうとしていた。

日本の場合は、2006年3月27日にトリニーダード・トバゴで商標出願を行って、その約半年後の、2006年9月19日に日本で出願している。

なぜ、日本の前に、トリニーダード・トバゴで出願しているのか?というと、商標の出願資料というのは、誰でも閲覧することができてしまう。

【出典】j-platpat

また、出願資料も、600円を支払えば取り寄せることができる。

【出典】産業財産権関係料金一覧 | 経済産業省 特許庁

これを少しでも回避したいということから、優先権を利用して出願する場合がある。

商標登録は、原則、出願提出の先着順で決まる。

しかし、複数の国で商標登録を行う場合、翻訳などで書類の準備に時間を要してしまうことから、その間に第三者が類似の出願をしてしまう可能性が出てくる。

そうするとiPhoneのように、国際的に同一の商標を展開したい場合に支障が生じる。

このような事態を防ぐために優先権の主張ができるようになっている。

優先権の主張というのは最初の国で商標登録出願をした後に他国で出願した際場合も、最初の国での出願日が他国でも優先日として取り扱われるというもの。(パリ条約による優先権)

このため、まず、あまり知られていないような国で出願を行っておいて、半年後に本来取得したい国で出願することで、発表前の商品の情報を発表の直前まで閲覧できないようにしようという目的で利用する場合もある。

Apple社は、このように万全を期してiPhoneを日本でも商標登録をしようとした。

しかし、その時、既にアイホン株式会社が「アイホン」という名前で商標登録(電気通信機械器具)が行われていたので特許庁は「アイホン」と類似しているとの理由で認めなかった。

iPhoneは、商標登録の商品範囲は携帯電話機として出願しているが、アイホンの範囲である電気通信機械器具の中に含まれてしまう。

Apple社は、仕方なく、同一名義人であれば、類似申請が認められることを利用することを選んだ。

つまり、アイホン株式会社から「iPhone」の商標登録を行ってもらうよう交渉を行ったのだ。

その際、Apple社が専用使用権という、設定された範囲において、商標権者であっても使用することができなくなる使用権で「iPhone」を使用できるように申請も行ってもらった。

そして契約条件の一つが毎年、1億円~1.5億円をアイホン株式会社に支払うというものだろう。

もう一つ、日本語での呼び方は、自社の「アイホン」と重ならないように、iPhoneは「アイフォーン」と区別するようにしているものと思われる。

 

これが、Apple社のホームページに記載されていた、「iPhoneの商標は、アイホン株式会社のライセンスにもとづき使用されていますという内容になるのだろう。

アイホン株式会社は?

アイホン株式会社すれば、実質、自社の商品には直接影響のない「iPhone」という商標を申請するだけで、毎年1.5億円がApple社から支払われるのだから悪い条件ではないと思う。

しかし、この会社は創業時の商品、「テータホン」(ギリシャ語でテータは対話)の商標登録で苦労したようで、今のアイホンに名前を変えることになってしまったということを聞いたことがある。

しかし、結果的に、アイホンに変えたことで、ホワイトハウスにも設置されるような世界的なインターフォンメーカーとなり、天下のApple社から毎年、ロイヤリティが支払われるような会社になったのだから、良しとするべきではないだろうか?