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航空自衛隊小松基地所属のF15墜落事故の原因調査は不十分。

2022年の小松自衛隊機の墜落事故

2022年1月31日の夕方、石川県小松市小松基地西北西約5.5キロの洋上でF15DJ戦闘機が夜間飛行訓練のため基地を離陸して約1分後に墜落して、操縦者2人が死亡した。

事故機は2機編隊の2番機として離陸し、雲に入った。機体は右に旋回を始め、徐々に傾きが大きくなった。その結果、揚力が失われ、高度約650メートルから落下。墜落の約2秒前に初めて機体を持ち上げようとする操作が確認されたが、間に合わず墜落したという。

 操縦者からは雲に入った直後、1番機に対し、レーダーで1番機の場所を確認できないといった内容の連絡が確認されたが、その後、応答がなくなったという。レーダー操作に意識を集中させていた可能性もあるとしている。

【出典】操縦者2人、「空間識失調」か 小松基地F15墜落、調査結果:朝日新聞デジタル

事故の原因は?

墜落の原因は機体ではなく、操縦者2人が空間識失調に陥った可能性が高いと発表している。

以下の離陸後の上昇旋回から墜落までの軌道イメージ図は、墜落した機体から回収したフライトレコーダーからの情報を基に分析した結果だという。

 事故の原因  

本事故の原因は、離陸後の雲中における上昇旋回の途中において、事故機の右ロールが過大となるとともに、徐々に機首下げ姿勢となり、その後高度が急速に下がっていることに対し、事故機の前席及び後席操縦者の認識が遅れ、回復操作を行ったものの間に合わず、墜落に至ったものと推定    

事故機の前席及び後席操縦者の認識が遅れた主な要因として、次の事項(複合を含む)が挙げられる。

(1)事故当時の気象・天象条件及び離陸直後の姿勢や推力の変更操作等の影響を受け、自らの空間識に関する感覚が実状と異なる、空間識失調の状態にあった可能性が高い。

(2)編隊長機を捕捉するためのレーダー操作等に意識を集中させていたため、回復操作が行われるまでは、事故機の姿勢を認識していなかった可能性がある。

【出典】小松基地所属F-15戦闘機の墜落に係る事故調査結果について

空間識とは?

空間識というのは、身体の位置を認識する能力。

人間は、周囲の環境に対する身体の向きや姿勢を認識し正しく保とうとする。

空間識を形成しているのが、視覚、前庭機能(内耳にある平衡感覚器)、深部感覚(皮膚・筋肉・腱・間接にある受容体)、聴覚からの情報。

空間識では、視覚と前庭機能が重要になる。

しかし、飛行機の操縦では全面が雲という場合に遭遇する。

そうすると視覚情報が使えなくなるので、前庭機能により位置情報を認識することになる。

前庭機能にはタイムラグがあるので、この間に誤った位置を認識してしまうと空間識失調が発生し誤った位置で認識してしまう。

タイムラグが生じるのは、三半規管の中を流れる内用液で各加速度を検知しているためで、例えば、同じ方向に何回も回転していて、止まっても内用液はまだ流れているので、流れが止まるまでは回っていると錯覚した状態になる。

これが、回るのをやめても、目が回わっているように感じてフラフラしてしまう現象になるので多くの人は経験があるのではないかと思う。

本当に空間識失調なのだろうか?

しかし、2人も搭乗していて、仮に2人が同時に空間失調になることが起こったとしても、2人が同時に、空間識失調に陥るような状態で、2人同時に計器を見ないということはあり得るのだろうか?

計器を確認すれば現在の位置が、自分が認識している状態とは異なることがわかったはず。

正直、空間識失調に陥るような状況で計器を確認しないというのは考えられない。

そもそも、空間識失調に陥らないように、陥ったとしても直ぐに気付けるように空間識訓練装置で日々、訓練を行っているはず。

しかし、空間識失調訓練装置について確認すると、年間200名の搭乗数と書かれてあって、全国で1台しかないのでは?という感じだ。

模擬視界映像と連動した4軸による回転運動により、実際の飛行感覚に近い環境を搭乗者に提供し、各種錯覚を体験できる装置です。空間識訓練、実験等で年間約200名が搭乗しています。

【出典】空間識訓練装置|航空自衛隊について|防衛省 [JASDF] 航空自衛隊

航空自衛隊パイロットの人数は機密情報ということで公開されていないが、航空機が428機(航空自衛隊保有)ということなので、仮にパイロットの人数が半分だとしても200人以上になるので、年間200名の搭乗数となれば、1年に1人1回搭乗しているかどうか?という頻度になる。

1年に1回で十分な訓練が行えているとは考えられない。

つまり、航空自衛隊の空間識失調訓練は十分に行われていない可能性がある。

そして、空間識失調訓練が十分に行われていない可能性があるのに、事故後も金沢市内で、急上昇したあとの飛行機雲が残っている光景を見かける。

そもそも、自衛隊機は1969年2月8日に、金沢市泉2丁目の住宅密集地に墜落したことがある。

それ以来、金沢市の住宅密集地上空の飛行は避けるということになっているはず。

金沢市上空で空間識失調になる可能性のある飛行を行って事故が起きた場合のことを考えているのだろうか?

空間識失調になる可能性のある飛行を行うのであれば、墜落しても最低限の被害で済む海上で行うべきではないだろうか?

それにしても、「安くない機体」を簡単に墜落させられても困る。

正直、十分に訓練されていないということは考えたくないので、そうすると、空間識失調以外が原因で墜落したことになる。

原因については、どちらに転んでも不安を感じる内容になりそうだ。

再発防止策は?

再発防止ということで以下のような内容が公開されている。

再発防止策等

(1)空間識失調に関する教育・訓練の強化

(2)基本計器飛行の確実な履行(レーダー・トレール隊形時の計器飛行を含む。)

(3)コックピット・リソース(※)の適時適切な活用に関する教育・訓練の強化(※ コックピット内における安全確保のために利用可能な全ての人的資源、機器及び各種情報)

(4)異常姿勢の継続を検知、又は地表等との衝突を予想し、警報等により操縦者の認知を回復、又は機体が自動的に衝突を回避するシステムの調査研究と当該システムの適時適切な搭載 

【出典】小松基地所属F-15戦闘機の墜落に係る事故調査結果について

当たり前のことしか書かれていない。

教育・訓練を強化すると簡単に書いてあるが、具体的にどのように強化するのだろうか?

人の命が失われているにも関わらず、二度と、同じ事故を起こさないようにしようという気持ちが全く感じられない。

空間識失調になった自覚がなければ、基本計器飛行にも移行しないので、まずどうすれば気がつくのか?を訓練しなければ同じ失敗を繰り返すことになる。

空間識失調に関する教育・訓練の強化とあるが、これまでも空間識失調による可能性が高い墜落事故があったはず。

その上での、今回の事故なので、過去の経験が全く活かされていないことは明白。

こんな再発防止策では、今後も同じ事故が起きる可能性は高いと思う。