予測不能のラスト?
Amazonの「本」のランキングで未だに56位(2023年8月15日時点)にランキング入りしている本。
奇妙な成り行きから僕は、一度も会ったことがない父の遺稿を探すことになる。
知り合いの文芸編集者・霧子さんの力も借りて、業界関係者や父の愛人たちに調べを入れていくうちに、僕は父の複雑な人物像を知っていく。
やがて父の遺稿を狙う別の何者かの妨害も始まり、ついに僕は『世界でいちばん透きとおった物語』に隠された衝撃の真実にたどり着く。
2023年4月26日に発売されて、Youtubeなどで「大傑作」「衝撃作」「今一番手に入らない本」「史上最高」と大絶賛されている小説の名は・・・
- 世界でいちばん透きとおった物語
正直、盛り過ぎの書評が多いものは、実際に読んでみるとガッカリすることが多い。
しかし、今回、電子書籍化が不可能という点が凄く気になった。
確かに、Amazonでも、Kindle版は販売されていない。
小説でKindle化されないというのは、今時、珍しいので、本当に、電子書籍化ができないからということになる。
なぜ、電子書籍化ができないのか?
この本には紙の書籍でしか実現できない、ある仕掛けが施されているという。
電子書籍と紙の本で異なる点を考えてみた。
最初に思いついたのは「紙の触感」
しかし、「紙の触感」が小説の内容がどうリンクするのだろうか?
そこが、わからなかった。
もう一つ、気になっているのは、この小説に関して著名人が、あまり感想を述べていない点。
発売して4か月弱が経過しているのに、未だにベスト100にランキング入りしているというのは、書かれていることが本当だからではないだろうか?
しかし、書かれていることが本当であれば、もっと著名人が反応してもいいはず。
内容云々ではなく「ネタバレ厳禁」ということからだろうか?
購入してみた
この2点が気になったので、自分でも読んでみようと思った。
購入したのは、6月末。
読みやすい内容、文体だったので、その日のうちに第五章までは一気に読んだ。
しかし、ずっと単調というか進展があまりない展開になっていて、ここで一旦、読むのをやめてしまった。
多分、本当に面白かったら、睡眠時間を削っても読んでいたと思うが、そこまでしたいとは思えなかった。
5章まで読んだ感じでは、まだかなぁ〜って気持ちが強くなってしまって次が読みたいという気持ちにはなれなかった。
それでも「気になっている2点」に関しては、早く解決したいという思いが、ずっとあったので少しずつでも読んでいこうと思っていた。
しかし、7月に入って本を読む時間さえも取れなくなった。
結局、続きを読んだのは、お盆休みも終わりに近いてきた8月15日。
8章くらいからまた早く次が読みたいという感じになってきた。
何とか、その日のうちに読み終えた。
読んだ感想
さて、読み終わっての感想だが、「ネタバレ厳禁」という縛りのなかで、本を読んだ感想を述べるというのがハッキリ言って難しい。
ネタバレは禁止でも「読んで良かったか?」「読んで面白かったか?」くらいは述べるのは問題ないと思うので、この点だけはハッキリと書いておきたい。
まず、読んで良かったか?というと微妙な評価だが△。
ストーリーとしては可能性を感じるものだったが、小説としてはストーリーが活かされていなかったという感じがした。
要因は二つ。
一つ目は、ハードル上げ過ぎて、面白さを半減させてしまったこと。
まず、Youtubeでの書評動画は絶賛しているものが多かったが、実際に読んでみると、そこまで言う?っていう内容だった。
読む前に、いくつか動画を見てみたが、実際に読んでみると、動画紹介しているほどではないと思わざる得なかった。
実際の内容は悪くなかったのに、過剰評価によって本来の内容の評価を下げてしまっている。
もう一つが、肝心な場面が「雑」な設定になっていたこと。
ネタバレになるので、細かく書くことができないが、この小説には2つ重要な場面があった。
しかし、共に臨場感が伝わってこなかった。
これは致命的だった。
あまり書き過ぎるといけないので、小説の感想についてはここまでにしたい。
紙の本への愛情
あとは、小説の内容とは直接関係のない部分で書いてみたい。
この本、電子書籍非対応ということから、作者である、小説家視点での紙の本だからという内容が小説内でも各所に書かれていることから、読者が、これまで考えなかった視点で紙の本について書かれている。
この小説をキッカケに紙の本も読んで欲しいと思って書いているんだろうなという気持ちは伝わってきた。
しかし、小説内での描写では、紙の本の欠点に焦点が当てられている感じだったので、むしろ電子書籍の方が良いのでは?という気持ちになってしまった。
ちなみに、作者は電子書籍に反対しているスタンスの方ではないので、別の著書では電子書籍にも対応している。
むしろ、他の著書を見る限り、電子書籍に向いた内容のものが多いように感じた。
アイディアと着眼点は素晴らしい
本のアイディアに着眼点は素晴らしいと感じた。
しかし、肝心な個所で、伝わってこなかった。
例えるなら、漫画、響 〜小説家になる方法で主人公がデビュー作として書いた小説「お伽の庭」
「お伽の庭」は漫画では、誰もが大絶賛していた。
漫画を読んでいる者とすれば、そんな凄い小説なら、当然、読んでみたいと思うだろう。
漫画では、「お伽の庭」の内容が、お披露目されることはなかったが、それがお披露目されて内容が漫画内で書評されていた内容には遠く及ばなかったという感じ。
「お伽の庭」は間違いなく面白い小説だが、それを実際に、小説にするというのは簡単なことではない。
「世界でいちばん透きとおった物語」は、それをやってしまった。
そして、それは小説の中での評価とも、世間で絶賛されている評価とも一致しないものだった。
だからといって、絶賛している人のことを否定するつもりは全くない。
ハードルを上げ過ぎていなければ、自分も十分楽しめた小説だったと思う。
だから、今でもAmazonランキングに入り続けているのだろう。
ただ、個人的には、評価の方が先行している感じなので、もっと内容を吟味してもらえれば、更に素晴らしい作品になっていたように思う。
まだ、読まれていない方は、是非、ご自分の目で確かめて欲しい。
新たな販売戦略方法?
ハッキリいって、世間の評価に対して、中身が伴っていない。
そうすると、なぜ、こんなに評価が高いのだろうか?という疑問が生じる。
たとえば、案件として小説のレビューをお願いしているという可能性もあるだろう。
それも、有名人やインフルエンサー的な人だと疑われる可能性が高いので、あえて、一般Youtuberのような、あまり知られていない人達にお願いした。
昔の日本なら、そんな可能性を考えることはなかったが、今の日本人なら、その程度のことをしても不思議ではない。
これでは透き通った物語ではなく、濁りまくった物語になってしまう。
素直に、世間の評価を受け入れることができなくなっているのだから、何とも嫌な世の中になったものだ。