誰が買うんだろう?
服を選ぶ時にデザインは良いのに色が好みじゃない場合がある。
あと、この服が欲しいと思って在庫を見ると好みの色は全て在庫なしで、この色、誰が買うんだろうか?という奇抜な色だけが残っていたりする。
そんな時、なぜ、この色を選んだのだろうか?とデザインセンスを疑ってしまう。
心理的手法
しかし、わざと人気のない色を含めるのは意図的に行っていて、これは「捨て色」という手法だとか。
どういうことだろう?
売れ筋の同じような色ばかり店頭に並んでいると見た目が単調になり、どれも一緒に見えてしまい購買意欲がなくなる。
しかし、色んな色があると、とりあえず、別の服も見てみようかな?と思ったりする。
1色より色を増やすことで、何となくどれがいいだろうか?と選んでしまう。
選んでしまったら、何となく欲しくなって、つい買ってしまうこともあるだろう。
つまり、単に一つの服としてではなく店全体のコーディネートを考えて、「売れる」、「売れない」を抜きにして注目するような色を意図的に含ませているということになる。
色鉛筆でも色数が少ないものより多いものをつい買ってしまうのではないだろうか?
色がたくさんあっても全色を均等に使うなんてことはなく、よく使う色は決まっているので色数の少ないもので十分だったりする。
化粧品のアイシャドウも沢山の色があるものが綺麗に見えるので、つい買ってしまうが、使えない色が多く、さてどうやって使おうか?と頭を悩ますことになる。
迷わせないために捨て色を使ってる場合もあるようだ。
男性の服で青と赤、2色のものがあった場合、赤が引き立て役となり、青の方が良く見えてしまってつい買ってしまうというもの。
色んな人がいるので、赤の方が好みだという人もいるだろうから、どちらが捨て色になるかは結果次第ということになる。
捨て色の美学
野村順一さんが書かれた「色の秘密」で和室の色について以下のように書かれている
日本人は色を見るための色を使う。色の数を少なく、明度や彩度も低めに抑え、茶器の渋さと帛紗、茶室と和服の対比を生む。そのため茶室の色は「色を見るための色」すなわち「捨て色」になっている。
和室は日本人の色彩観の究極ともいえる。
つまり、和室における捨て色(ベージュ色)七〇パーセントがベーシック・カラー、白二五パーセントがサブ・カラー、純色五パーセントがアクセント・カラーといった面積配分こそ、〝捨て色の美学〟の決め手となっている。
「色を見るための色」という表現は「捨て色」という言葉を一言で説明するのに、ぴったりではないだろうか?
素人感覚では、ついメインカラーを多くしてしまいたくなるが、メインカラーを見せるために、捨て色をペースカラーにする。
言われてみると、なるほどと思った。
捨て色の失敗例
手首に巻いて計測するタイプの血圧計を探していたときに黒と白の2色があった。
全く同じ血圧計で、色が違うというだけで、黒は白の25%引きに加えて10%OFFのクーポンが適用できるようにもなっていた。
しかも黒は即納だが白は1週間から4週間要するとなっていた。
なぜ、装飾品でもアクセサリーでもない血圧計の色が白か黒というだけで、こんなにも差が出るのだろうか?
実際、自分自身が最初、黒より白の方が良いと思った。
おそらく、医療器具は黒より白というイメージがあるからではないだろうか?
医療従事者の服は白というイメージがあるので最近増えてきた紺の衣服は正直、まだ違和感がある。
それほど、医療=白のイメージが定着しているのではないだろうか?
その結果、黒を選ぶ人が少なくて黒が在庫として残ってしまって処分に困り安売りせざる得なくなった。
この血圧計の場合、黒は捨て色の目的を果たせていないので、只の無駄色になってしまっている。
定番色がある製品で、あえて別の色を追加するのは単なる無駄になるということになる。
これが腕に巻く血圧計ではなく、腕にする腕時計なら白より黒を選ぶ人も増えたはず。
同じ腕に巻くものでも、血圧計と時計で真逆の色を選ぶというのも何とも不思議な話だ(笑)