1個4000円のショートケーキ?
高級ホテルのグランシェフが作った、1ピース「4000円超」で「1日20個限定」のメロンショートケーキが連日完売だとか。
どんなケーキなのかというと、メロン、卵、砂糖、小麦粉といった材料一つ一つを吟味して作ったもの。
卵は農家と一緒に新しく専用のものを作ったとか
「高級ホテルのグランシェフ」「4000円超」「限定」というキーワードが揃えば、自分へのご褒美、記念日だからと理由をつけて買いたいと思う人達がいても不思議ではない。
ただ、気になったのは、吟味した食材=高級ということで食材一つ一つは、当然、グランシェフが作ったものではなく、「吟味」つまり、念入りに調べて選んだものになる。
単に高級食材を集めてケーキにしたのでは美味しいとは限らない。
しかし、高級ホテルのグランシェフが吟味したものだから、ただ集めただけではないはず。
「メロン」に拘ったということなので「メロン」の味が引き立つように食材を選んだのだと思う。
販売価格の大部分は素材が占めているということなので、高級食材を使ったから高い価格になったということになる。
2.3億円の治療薬?
医薬品が高いのは開発研究費が含まれているからで素材自体はそんなに高いものではないということをよく耳にする。
実際、ジェネリック医薬品は先発医薬品の半値で販売されているが、これも先発医薬品のことを考えて、かなり加減をしている価格設定だと思うので、本来はもっと安価に販売できるはず。
2019年6月に脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する遺伝子治療薬が、当時約2.3億円という価格に設定されたということで話題になっていた。
なぜ、こんなに高いのか?
1回(1時間)の点滴に投与するだけで済むという。
つまり、致命的な病気に侵された患者家族の生活を劇的に変えてくれる。
そして価格は、治療方法によって得られた余命にかかるコストなどを基準に算出されている。
もちろん、開発費なども含まれているだろうが、長期間の入院・治療・薬の服用をコストに換算して価格を決定する。
医薬品の場合は、ショートケーキとは逆に原材料費以外のコストが価格に反映されるので、もしかすると原材料費だけを比べると、4,000円のショートケーキの方が高いのではないか?と思ってしまった。
時間のコスト
ケーキの価格は素材の原価が中心だったが、高級食材を選んで仕舞えばあとは既存の技術を使って作るだけで「作る」部分に関してはお金を取ろうという気にならない程度の労力だと言える。
これが「作る」のに時間がかかっていれば材料費だけで良いなんてことはないはず。
言葉通り「吟味」の作業に時間やお金をかけていたとしても、価格の大半が材料費だけだと言われてしまうと「吟味」の作業には思ったほど時間や試食に時間をかけていないのではないか?と考えてしまうかもしれない。
それこそ、単に高級食材を集めて作っただけのケーキになってしまう。
これでは、丹精込めて作っている人達に失礼だと思う。
日本というのは、材料費には高いお金を出しても、人件費は削ろうとする。
材料費は作る都度、発生する変動費で「吟味」は一度限りの初期費用。
しかも人件費は作らなくても発生する固定費なので削りやすい。
技術はもっと評価されるべき
しかし、高い技術には、見合った報酬が必要だと思う。
報酬は技術に対する評価であり、高い評価をしているというなら口だけでなく、評価に見合った報酬が必要になる。
日本は原料に恵まれた国ではないので、「技術」がキーになると思う。
原料を作り込む「技術」や、原料をうまく使う「技術」を伸ばしていく必要があると思う。
それなのに「技術」はあまりコストに反映されずに原料ばかりがコストを占めることになる。
これは技術が本来より低く評価されていることになるので、この点を改善しなければ日本の将来はないと思っている。
4000円超のケーキが2つあり、1つは、原材料に拘り、コストの大半を原材料価格が占めているようなケーキ、もう一つは普通の原材料を上手く利用して技術を駆使して美味しく食べられるように仕上げたもの。
どちらが売れるだろうか?
難しい選択になるが、前者の方が売れるような気がする。
良い原材料を使用すれば技術がそこそこでも良い結果が生まれるが、普通の原材料だといくら技術を駆使しても良い結果が生まれるのは困難だと思う。
個人的にはあえて、普通の材料を使って技術で美味しくするというチャレンジ精神を買いたいが、そんな人よりも、より確率の高い方を選ぶ人が多いのではないかと思う。