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機能美のストラディヴァリウス

総額75億円の弦楽八重奏

2024年の格付けチェックで楽器の違いを見分けるチェックがあるが、今年は「弦楽八重奏」だった。

楽器はバイオリン4本、ヴィオラ2本、チェロ2本の合計8本。

※弦楽器を数える際には「本」ではなく「挺」が正しい。

※「挺」は馴染みのない単位なのでテレビでは馴染みのある「本」を使用したのだろう。

一流楽器の方は総額75億円、バイオリン4本は全てストラディヴァリウスになる。

バイオリン

ヴィオラ

  • ロレンツォ・ストリオーニ(3億円)
  • ピエトロ・アントニオ・ランドルフィ(6,000万円)

チェロ

  • ジョヴァンニ・グランチーノ(2億4000万円)
  • マテオ・ゴフリラー (6億円)

バイオリンとヴィオラの違い

バイオリンとヴィオラは別々に見ると同じに感じるが、一緒に見るとヴィオラ(下図右)の方が一回り大きく厚みもある。

そしてヴィオラは高音は不得手だが低音を得意とする。

演奏が趣味の人が使う楽器

これに対して、もう一方の楽器は、「演奏が趣味の人が使うレベル」のもの。

それでも、総額800万円だった。

演奏は、以下の8名

バイオリン

ヴィオラ

  • 田中佑子(ピエトロ・アントニオ・ランドルフィ)
  • 有富萌々子(ロレンツォ・ストリオーニ)

チェロ

  • 玉川克(マテオ・ゴフリラー)
  • 柴田花音(ジョヴァンニ・グランチーノ)

日本ヴァイオリン代表取締役社長の中澤創太氏は以下のように違いを語っている。

  • 最初の一音目から世界的名機による圧倒的な重厚感と低音の奥行きが感じられ、ツヤがありエレガントな高音には通常の楽器と比べ明らかな違いがあります。

今回、バイオリン4本だけで63億円という想像を絶する価値の楽器になる。

なぜ、ストラディヴァリウスは高いのか?

ストラディヴァリウスという名前は、バイオリン職人である「ストラディバリ」の名前から来ている。

ストラディバリはイタリア人。

18世紀の頃のイタリアでは「弦楽器には制作者を示すラベルをつけること」という法律があり「製作者の名前はラテン語で記載する」と定められていた。

ストラディバリは自身の名前をラテン語風に変えて「ストラディバリウス」としてラベル付けを行った。

これがストラディバリウスと呼ばれている理由になる。

ストラディヴァリウスは、通称「ストラド」と呼ばれているとのことのなので以後は「ストラド」と記載したい。

現存する「ストラド」は2023年1月現在で約600挺とされている。

そのうち、ヴァイオリンが約520挺、ヴィオラが約70挺、チェロが約10挺、マンドリンやギターなどが約10挺。

高いのは圧倒的に残存数が少ないことに加えて、次に記述するストラドの凄さにある。

ストラドの音色の再現はできていない

ストラドというのは、どこが凄いのかを調べてみた。

ストラドは、17~18世紀にかけて製作されたバイオリンの最高傑作と言われている。

このため、何世紀もの間、音楽家や楽器職人、エンジニアや研究者達がストラドの音色の再現を試みた。

使われている材料からバイオリンの製造法に至るまで隅々まで検証された。

しかし、いまだに神秘のべールに包まれている。

なぜだろうか?
ストラドの音は、その木材の種類、組み立て方法、塗装方法など、さまざまな要素が複雑に絡み合って生み出されているため、現代の技術でも完全に再現することはできていない。

ストラドの音の特徴は、明るく華やかで、豊かな響きを持つこと。

これは、ストラドに使われる木材、特にスプルース材の性質によるもの。

スプルース材は、硬くて強度があり、音の伝達性に優れている。

また、ストラドの組み立て方法も、音の響きに影響を与えている。

ストラドは、通常のヴァイオリンよりも胴体が長く、狭いため、より明るい音色になる。

さらに、ストラドの塗装方法も、音の響きに影響を与えていると言われている。

ストラドと遜色ないレベルまで到達している

現代の技術で、ストラドの音を全く再現できないというわけではなく、遜色ないレベルまでは到達している。

実現したのは日本のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの販売・修理調整を行っている、「シャコンヌ」の窪田博和さん。

窪田さんが、バイオリンの買い付けをしていた頃に、ストラドの一定の法則に気づいた。その通りに作られているためだ。

ストラドの一定の法則とは?

木の板というのは一般的に薄いとよく振動し音が響く。

ストラドを分解すると表板、裏板、側板全て、とても薄いので木とは思えないほど軽い。

しかし、バイオリンの弦が引っ張る力は凄く強いため、ボディが薄すぎるの板が割れたり、ゆがんだりして長い使用に耐えられなくなる。

ピンポン玉は丸くて薄いプラスチックの厚みが均一になるように作られている。

このため、落とすとよく跳ねる。

窪田さんはバイオリンもこれと同じように作ってあげれば、薄くても丈夫に作れると考えた。

しかし木は生きているので厚さを均一にするというのは難しい。

そこで窪田さんは発想を変えた。

強度の強い部分を叩くと音が高く、弱い部分は音が低いので、叩きながら音程が一定になるように削っていくことで薄くて強いバイオリンができることに気が付いた。

もう一つ、ストラドの音の秘密は木の表面に塗る「ニス」だと言われている。

普通はアルコールを使ったニスに色を付けて使用するが、しかし、ストラドの時代には「マツヤニ」を煮込んで濃縮して油で溶いたものを使用していた。

油は酸化して固まる。

マツヤニを煮込んでいくと炭に近い状態になる。(真っ黒なガラスのようになる)

炭は炭素で、世界一固いと言われるダイヤモンドも炭素。

凄く硬くなるニスを塗ることで深い低音から金属的な高音まで出せるようになる。

しかし、ストラドに使われているニスと同じものがなかなか見つからなかった。

ある時、海外の展示会で現代バイオリンのニスが近いと直感した。

製作者を教えてもらい作り方を習いにいった。

バイオリンの表板に使われる木材イタリアンスプルース(針葉樹)から採取された松脂を加熱し長い時間をかけて煮詰めて濃縮したものだった。

しかし、近いけどまだ、どこかが違う。

そこで松脂以外に混ぜていたものを止めて作ってみると鮮やかな赤色のニスが出来上がった。

ストラドと現代バイオリンの差は縮まっている

2012年にクラウディア・フリッツ氏の研究では17名のプロのバイオリニストに目隠しをしてもらい、3つのバイオリンを弾いてもらう実験が行われた。

バイオリンは、ストラディバリウス、名工グァルネリ、現代バイオリンの3つ。

17名中7名は音の差を聞き分けることができなかった。

7名がバイオリンを判別し損ない、残った3名が正解という結果だった。

この実験から、ストラディバリウスと現代バイオリンの音の差はなくなってきていると言える。