ダイハツの不正行為
2023年04月28日にダイハツ工業が自動車の側面衝突試験の認証申請で不正行為を行っていて、対象台数は、約8.8万台ということで以下のような発表がされた。
ダイハツ工業株式会社(以下、ダイハツ)は、ダイハツで開発を行った海外市場向け車両(4車種)の側面衝突試験の認証申請における不正行為を確認いたしました。
以下の車両の側面衝突試験において、認証する車両の前席ドア内張り部品の内部に不正な加工を行っており、法規に定められた側面衝突試験の手順・方法に違反があったことを確認いたしました。
対象車種にトヨタの名前があるが、トヨタとダイハツ間ではOEM供給契約・共同開発契約が交わされていてトヨタブランドで販売している車に関してもダイハツが開発から必要な各種認証試験合格までを実施しているとのこと。
その後、ダイハツ・ロッキーおよびトヨタ・ライズの国内向けハイブリッド車(HEV)は、法規に定められた安全性に関する基準を満たす結果となった。
更に開発と法規認証の体制を以下のように見直した。
(1)全社における品質マネジメント機能の強化のため、営業CS本部から「品質保証部」を独立させ、「品質統括本部」を新設いたします。(本部長は、代表取締役副社長の星加が担当)
(2)客観性のある法規認証対応を強化するため「法規認証室」を、「くるま開発本部」から「品質統括本部」に移管し、開発と認証を明確に区分いたします。
役割を明確にした開発体制の強化を図るため「車両性能開発部」の開発機能と評価機能を分離し「車両性能開発部」と「車両性能評価部」の2部体制に変更いたします。
【出典】<2023年6月1日付組織改正>認証申請での不正行為を受け、開発と法規認証の体制を見直し|ニュースリリース|ダイハツ工業株式会社 企業情報サイト
正直、これで終わったのかと思っていたが2023年12月20日に新たに174件の不正が見つかり、国内外すべての車種を出荷停止としたとの報道がされた。
全ての車を出荷停止?
新たに174台ではなく、174件?
これは、ただ事ではない。
自動車メーカーのダイハツ工業は、国の認証取得の不正問題で新たに174件の不正が見つかったと発表し、国内外のすべての車種で出荷の停止を決めました。一連の不正について、奥平総一郎社長は記者会見で「お客様の信頼を裏切ることとなりおわび申し上げます」と述べて陳謝しました。ダイハツ工業では、ことし4月、海外向けの乗用車の衝突試験で不正が発覚し、その後、国内向けの車種でも国の認証を不正に取得していたことが明らかになっています。
衝突試験のほかに排ガスや燃費の試験なども含まれ、不正は1989年から確認されたということです。
生産をすでに終了したものも含めて64車種に上っています。
この中には、他社ブランドで販売される車としてトヨタ自動車の22車種、SUBARUの9車種、マツダの2車種が含まれています。
通常のリコールとは違う
ダイハツ工業のホームページに飛ぶと以下のような内容が最初に表示された。
このことからも、通常のリコールとは規模が違うことが伺える。
実は2023年の4月に判明した不正の件は終わっていたのではなく、ずっと継続して調査が行われていた。
ダイハツは第三者委員会を設置して原因分析、再発防止策を第三者委員会に依頼していたのだ。
今回の発表は、その結果であり、また同じことを繰り返したということではない。
以下にざっくりと、発表内容を記載する。
※一部を省略していますので、原文を確認する際には【出典】に記載のリンクを参照願います。
ダイハツは、2023年4月28日に公表した認証申請における不正行為を踏まえ、公正で独立した第三者委員会を本年5月15日付で設置し、事案の全容解明および原因分析に加え、当社の組織の在り方や開発プロセスにまで踏み込んだ再発防止策の提言を依頼し、この度、その報告書を受領いたしました。その調査報告書について公表いたします。
1 第1次公表の不正行為の概要
ダイハツが開発を行った海外市場向け車両(4車種)の側面衝突試験の認証申請において、試験実施担当者は、仮に認証試験に不合格となった場合には開発、販売の日程を守れず大変なことになるとの思いで、認証試験に確実合格することを目的として、認証試作車に対し、衝突時にシャープエッジが生じないような割れ方をするように樹脂製のフロントドアトリム裏面に切り込みを入れるなどして量産車とは異なる手加工を行った。
2 第2次公表の不正行為の概要
ダイハツ ロッキーHEV及びトヨタ ライズHEVのポール側面衝突試験の認証手続きにおいて、左右の試験を実施する必要があり、その試験データの提出が必要となる。2021年7月に助手席側(左)の立会試験を実施したものの、運転者席側(右)での届け出試験は実施しておらず、改めて試験を実施する時間も車両もなかったため、試験成績書作成者は、安全性には問題ないとの思いもあって、認証試験に合格するために、社内試験として実施した助手席側(左)の試験結果を運転者席側(右)の試験結果として提出した。
3 当委員会の調査で判明した類似案件の概要
当委員会が類似案件として認定した不正行為は合計174個(不正加工・調整類型28個、虚偽記載類型143個、元データ不正操作類型3個)であるが、一番古いもので1989年の不正行為が認められる。全体の傾向としては、2014年以降の期間で不正行為の件数が増加している状況が認められる。
現場を担当する主に係長級のグループリーダーまでの関与が認められるにとどまり、室長の関与が認められたごく一部の例外を除き、部室長級以上の役職者(以下「管理職」という。)が現場レベルの不正行為を指示しあるいは黙認したというようなダイハツが組織的に不正行為を実行・継続したことを示唆する事実は認められなかった。
以下では、国内生産者に関して認定した不正行為の例を記載する。
1:エアバッグのタイマー着火(不正加工・調整類型)
2:試験結果の虚偽記載(虚偽記載類型)
3:試験速度の改ざん(虚偽記載類型)
4:タイヤ空気圧の虚偽記載(虚偽記載類型)
5:助手席頭部加速度データの差し替え(元データ不正操作類型)
安全・品質優先なんて建て前
日本企業では安全・品質最優先といいつつも、そんなことは建て前になってしまっている。
経営者は表向きには、口を揃えて、安全・品質第一などと言っているが、内部では、品質・安全最優先などちう言葉を真に受けて、時間を取りすぎてスケージュールを二の次にしようものなら、何をやってるんだ!常識的に考えろ!などと叱られることになる。
品質より納期は暗黙知であり、スケジュール(納期)最優先という場合は少なくない。
このため、試験実施担当者の気持ちはわからなくはない。
自動車は決して安くない商品なので、衝突試験などは何度も行うことなんてしたくない。
また、トヨタ自動車などは全てにおいて厳格なので、安全・品質を確保した上で、納期厳守も要求してくる。
仕事を受けてきたものは、トヨタの言いなりで日程的に厳しくても関係者には確認もせずに、独断で大丈夫です!などと答えて受けてしまったのかもしれない。
厳しい日程になれば、開発チームは、試験NGで、やり直しの計画なんて考慮する余裕はない。
このため、試験でNGになれば日程的に間に合わなくなるのは必至。
最終的には、試験実施担当者に暗黙知の圧力がかかる。
こんなスケジュールでは絶対に間に合わないなんてことは何度も言ったことだろう。
安全よりスケジュールなんてことは表立っては誰も口にしない。
もしかすると、暗黙知で不正行為をするように追い込んでいたのかもしれない。
そうなれば、会社全体が変わらなければ、同じことを繰り返すことになる。
そして変わることができなければ、今回の件も試験実施担当者の責任にされて終わりになるだろう。
もしそうなればダイハツ工業が本当に終わりだと思う。