他愛もない話について
- 気楽に書きますので、気楽に読んでください。
- あまり役に立たない内容になるかと思います。
- 特に何かを決めて書いているわけではなく、書いている内に、横道にそれたりするかもしれないので、最後はどんな話になっているのかわかりません。
- 僕の主観や記憶に依存する内容が多くなるので、間違っている内容もあると思います。(書いている内容について基本、裏付けを取ったりしません)
Kさんのお墓参り
お墓参りに行くとき、お花等とは別に、必ず墓地にある自販機で「伊藤園 タリーズコーヒー バリスタズ エスプレッソ」という長い名前の缶コーヒーを1本買って墓前にお供えして、お参りが終わって、お供えした缶コーヒーを、その場で飲んでいると、まるで一緒に飲んでいるかのような錯覚に陥ってしまう。
それが、自分にとっての、お墓参りになっている。
お墓で眠る方の名前がないと、わかりにくいので、仮に「Kさん」と呼ぶことにする。
Kさんは、スターバックスが好きだった。
いや、多分、スターバックスが好きというよりも、別のことを楽しみにしていて、スターバックスに行こうと言ってきていたのだと思う。
このため、Kさんと会う時はスターバックスに行く可能性が高かった。
スタバで、飲み物を注文する時に困るのが、商品名と量を示すサイズ名が、わかりにくいということ。
例えば、スタバには「アイスコーヒー」という名前の飲み物は存在しない。
今だと、「ドリップコーヒー」のアイスと「コールドブリュー(水出し) コーヒー」のアイスが、通常のお店のアイスコーヒーと同じ部類の飲み物と言えるのではないだろうか?
商品名で迷わされたあげく、更に次には、サイズ指定が待っている。
これまた、慣れ親しんだ、S・M・Lというサイズはスターバックスには存在しない。
スターバックスでは、「ショート」、「トール」、「グランデ」、「ベンティ」といったサイズ名になっている。
- ショート:240ml
- トール:350ml
- グランデ:470ml
- ベンティ:590ml
今でこそ、4種類の違いは理解できているが、初めての時は、なかなか覚えられなかった。
自分が初めてスタバに行ったのが、Kさんで、今でも覚えている。
夏の暑い日だった。
近くには、いくらでも喫茶店やカフェはあったのに、わざわざ電車で10分程度要するスタバに行くことになった。
なぜ、近場で済まさないのだろう?とその時は疑問に思った。
スタバでは商品名やサイズが独特のものだということを知らなかったので、自分はアイスコーヒーのLだと決めていた。
小悪魔の策略
Kさんに何にするかを尋ねると、「xxxxxxxxxxxxxxのペンティ」という言葉が返ってきた。
想像もしていなかった「言葉」が返ってきたので耳を疑った。
あまりにも複雑な商品名だったので、今となっては名前は憶えていないが、ペンティだけは、覚えている。
その時、Kさんが指定した商品名は、今だと、「スターバックス リザーブ オリアート ゴールデン クリーム アイス エスプレッソ」みたいな長い名前だった。
よくわからなかったので、もう一度、聞こうと顔を見ると、小悪魔のような笑顔をしていた・・・
スタバを選んだのは、どうやら、難しい商品名やサイズを指定して自分が困る顔を見て楽しみたかったからだと察した。
なぜ、わざわざ離れた場所に移動したのか?という疑問も同時に解消した。
おそらく、自分自身が同じ経験をしたのだろう。
そして、今日のために事前に一生懸命、覚えにくい長い複雑な名前のものを憶えてきたようにも思った。
完全にやられた・・・そう思った。
何度か聞き直して、メモに書きだした。
もちろん、サイズもどれが、どのくらいの量かもわからないし、当然、サイズの違いもわからなかったので、これも聞いてみた。
Kさんは、グランデが、一般的なSサイズで、ペンティがMサイズだねと、相変わらず、小悪魔的な笑顔で教えてくれた。
その時は気がつかなかったが、なぜかショートとロングがあることは教えてくれなかった。
Lはないの?と尋ねると日本人には飲める量ではないから日本にはないと言われた。
このため、スタバには、この2種類のサイズしかないものだと認識した。
意を決してオーダーに臨んだ。
メモを見ながら、読み上げた。
何とか伝わったようだ。
まるで、知らない国で外国語でオーダーしているような気分になった。
それでもまだ、スタバに「アイスコーヒー」が存在しないことを認識していなかったので、自分の分は、「アイスコーヒーをペンティ」でお願いしますと伝えた。
すると、店員さんは困った感じで、ドリップコーヒーのアイスをペンティでよろしいですか?と聞き返してきた。
その時、「アイスコーヒー」がスタバには、ないことを察した。
他にどんなものがあるのかは、わからなかったが、店員さんが、「アイスコーヒー」と聞いて、スタバで一番、近いモノは「ドリップコーヒー」だと思ったのであれば、それが一番、アイスコーヒーに近いのだろうと思ったので、「はい」と答えた。
出来ましたら、そちらでお渡ししますので、暫くお待ちくださいと言われた。
隣にいた、Kさんの方を見ると、もう、可笑しくて仕方ないといった感じで笑いをこらえているのが伝わってきた。
商品名が覚えられなかったので、受取りに行くと、凄い量のものを渡されて驚いた。
Kさんの方を見ると、嬉しそうに笑っていた。
それ以来、何かあれば、スタバに行くようになった。
そして、いつも自分に注文させていた。
毎回、違うものを言ってくる。
しかも、長い名前のものを選んでいるかのように簡単に覚えられないような名前を指定してくる。
きっと、今ならスターバックスリザーブオリアートゴールデンクリームアイスエスプレッソのシングルオリジンのホットをペンティでとか言ってくるはずだ。
しかし、これはアイスのみでホットはないので、鵜呑みにしてしまうと恥ずかしい思いをすることになる(笑)
スタバから墓前へ
Kさんは、自分が初めて飛行機に乗ることを話した時にも、入り口にCAさんがいるので靴を脱いで正座してから、僕は初めてなので、よろしくお願いしますと言って乗るんだよ。
と言ってくるような人だった。
これは、さすがに嘘だというのは理解できたので、騙されることはなかった。
そんなKさんは、今はお墓の中で眠っている。
それでも、思い出したように、自分を呼び出してくる。
ある夏の暑い日に墓参りが終わり、喉が渇いたので墓地内にある自販機に向かったら、なぜか、「伊藤園 タリーズコーヒー バリスタズ エスプレッソ」という長い名前の缶コーヒーを見つけた。
まるで、Kさんに私は「伊藤園 タリーズコーヒー バリスタズ エスプレッソ」ねと小悪魔の笑顔で依頼されたように感じた。
1本購入し、もう一度、墓に戻り、お供えをした。
そのまま、置いていきたい気持ちはあったが、缶コーヒーを放置して帰るわけにもいかないし、喉も乾いていたので、その場で飲んだ。
すると、スタバで一緒に、ペンティサイズの飲み物を時間をかけて一緒に飲んだ時のことや、小悪魔の笑顔が頭に思い浮かんできた・・・
それ以来、墓参りに来た時には、「伊藤園 タリーズコーヒー バリスタズ エスプレッソ」を1本購入して、お供えしたあとで、一緒に飲むというのが習慣になってしまった。