入庁式の訓示にて職業差別発言
2024年4月1日に静岡県庁で行われた入庁式の知事による訓示で「県庁というのは別の言葉で言うとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違ってですね、基本的にみなさま方は頭脳・・知性が高い方達ですから、それを磨く必要がありますね。」と話した。
これが、「職業差別」とも受け取れる発言だと静岡県庁には4月2日の午後5時までに「おごった考え」「生産者はイコールで納税者」などといった電話やメール合わせて430件の抗議が寄せられた。
釈明会見
これを受けて翌日に釈明会見が行われた。
会見の冒頭で、知事は以下のような発言を行った。
- 職業差別は皆無です。ありません。職業に貴賤はないとう基本的な考え方ですね。何か問題発言があったかのごとき状況になって本当に驚いております。一部切り取られて野菜に関わる仕事をしている人達や酪農の仕事をしている人達と職種が違うということを言っただけでございますが・・・
と、切り取り報道により問題発言とされてしまったかのように発言している。
記者が質問をしようと、「知事の発言をそのまま切り取ることなくお伝えした上で、県民の方のために・・・」とまで言ったところで知事は記者の言葉を遮るように以下のように答えた。
- いや切り取られたんだと思いますね。文章全体の流れ脈絡から外れているんじゃないですか?
また、以下のような場面もあった。
記者が「毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか・・・」と質問をしようとすると、これも言葉を遮るように知事は以下のようなことを話し始めた。
- 言葉が不十分であったということかもしれません、が、しかし、全体の流れをご覧いただきますれば、そこに職業差別をしたっていう風にとったとは到底思いません。
では、この発言は不適切ではないと?と記者から質問されると・・・
- 不適切ではないと思いますが、一部、そこのとこだけを取ればですね、みなさんが、おっしゃっているような職業差別に落とし込むというふうなことができる発言だったかもしれませんね。
記者は、更に以下のように質問した。
どこをどう切り取っても、あれが切り取りであったとは思えないですし、あれを受け取る人は間違いなく職業差別だと思うと思うんです。
それは我々だったり県民だったりそういう人たちの受け取り方が悪いと、そうおっしゃっているんですか?
これに対し知事は以下のように答えた。
- そうではありません。人はそれぞれ、受け取り方があると思いますね。今、わたくしが申しましたように、どのような職業に対してもですね、それに対して違いはあると、職分が違います。しかし、職の貴賤(きせん)というのはないというのが基本的な考え方でございますので、そういう流れの中で発言しております。
記者は、そういう流れではなかったですよとすかさず突っ込むと・・・
というだけで知事は言い返すことができなかった。
そして、最後には以下のような発言だけをして立ち去った。
よく考えたんですけど・・・・
準備もありますからねぇ
6月の議会をもってこの職を辞そうと思っております。
以上です。
うーん、全体の脈略?、全体の流れを見ればわかる?
知事が、どんなことを話されたのかを確認しようと思った。
全体を確認してみた
県の公式YouTubeチャンネルに知事による訓示の動画が公開されていた。
www.youtube.com
【出典】ふじのくにメディアチャンネル(静岡県庁公式)
動画を見ていると、問題発言までに、県庁の職員としての「8つの心構え」のようなことを話されている。
流れとしては以下のような感じでオムニバスドラマのような感じだ。
- 身に私はかまえない
- 心は素直で嘘偽りを言わない
- 上にへつらわない、下に威張らない
- 人の艱難(かんなん)はこれを見捨てない
- 富士山を鏡として恥ずかしいことはしない
- 情理を尽くして自分が正しいと思う信念を貫く
- 人に情けをかける
問題発言は「情理を尽くして」という部分でのもの。
情理を尽くすというのは、物事や人間関係において、正しい感情や理性をもって適切に対処することを指す。
みなさん優秀ですからなかなか、モノをわかってくれない人がいるかもしれない。
そう言う時に条理を尽くすということが大切です。
理屈ではわかっていても腹にストンと落ちないときがあります。
ですからハートtoハートで心からこうすると、本当に良いと言って差し上げるというストンと落ちるときがあります。
ですから情と理、条理を尽くして自分が正しいと思う信念を貫くということが大切です。
そしてですね、そのためにはですね、やっぱり勉強しなくてはいけません。
静岡県、県庁とういうのはですね別の言葉で言うとシンクタンクです。
毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとは違ったりですね、基本的に皆様は頭脳、知性の高い方達です。
ですから、それを磨く必要がありますね。
それは、磨き方は色々あります。
知性を磨くということ、それからですね、感性も豊かにしないといけない。身体がしっかりしていないといけませんね。
文武芸、三道鼎立(さんどうていりつ)と。文武両道と言うでしょう?
しかしですね、美しい絵を見たり、音楽を聞いたり、映画を見たり演劇をみたりした時に感動する心があると望ましい。
ですから、自分の知性があの人におよばないなと思っても、知性というものを大切にするということが大事ですね。そのためには勉強しなくちゃいけません。
そのためにはですね、やっぱり勉強しなくではいけません、身体を鍛える。
しかし、スポーツが苦手な方もいらっしゃるかもしれないでしょう。スポーツを楽しむことはできますね。
無芸大食の人もいるでしょう。しかし、芸術を愛することができますから、文武芸、三道鼎立ということで、豊かな人間になっていただきたいと思います。
人に情けをかける、物の憐れを知ると昔から言われますけれども、人に情けをかけることは、情けは人のためならずという言葉がありまして、つまり人のために助けるんですけれども、結果的には自分のためになっているということが多いのです。 ですから、人に情けをかけるという、困っている人を助けるということ、こうしたことをやってください。
全体を確認した結果
知事の発言に対しての印象は変わっただろうか?
自分は、むしろ全体を確認したあとの方が差別意識を強く感じた。
言葉遣いは丁寧に、嘘偽りは言わない、上にはへつらわず、下には威張らない。
表向きには、素晴らしい人格にならないといけない。
しかし、その裏には、あなた達(新人職員)の方が一般県民より優秀なのだから、同じ目線ではなく、それよりも高い目線でいないとダメだよという気持ちがヒシヒシと伝わってくる。
全体を確認したことで、一層、自分たちの方が優秀なんだという気持ちがより強く感じられた。
切り取られた方が、まだましだったのいうのが結論になる。
知事は言葉では素晴らしい人格にならないといけないと言いつつも、「みなさん優秀ですからなかなか、モノをわかってくれない人がいる」といった言葉が普通に出てきてしまっている。
知事が本当に職業に貴賤がないと思っているのであれば、職業の違いを表現する言葉として「優秀」などという言葉を使う必要はない。
そもそも、農業、酪農を引き合いに出す必要さえない。
県庁の仕事は知性が要求される仕事なのであなた達は「文武芸」を磨いて豊かな人間になってくださいというだけで済む話だ。
日頃思っていることが口に出るだけ
この知事は、2015年には当時の静岡市田辺市長との会談で、「キミ、知っていましたか?彼の事」「キミのためでもない私のためでもありません」などと「キミ」と連呼して、市長から「キミ、キミとおっしゃいますけどね、静岡市長ですけど?」と指摘され「失礼しました」と謝罪する場面もあった。
2021年10月の参議院議員補欠選挙での選挙応援演説では、「あちら(御殿場市)はコシヒカリしかない。だから飯だけ食ってそれで農業だと思っている。」といった発言もしていて多くの苦情が県庁に寄せられたが、この時も「御殿場に対し批判めいたことを言ったと受け取られるのは誤解」だと釈明をしている。
これも、誤解だと言っているが対立候補が市長を務めた御殿場市に対して「あちらはコシヒカリしかない。飯だけ食ってそれで農業だと思っている」と発言したのは事実であり誤解のしようがない。
他にも、磐田(市)は文化が高い、浜松(市)より元々高かったと磐田市の魅力を語ったりもしており、日頃、思っていることが口に出てしまっているのだろう。
世の中には、不適切発言を繰り返す人が少なくないが、例外なく日頃思っていることを口にしているだけの人だと思う