トム・クルーズの来日が中止
トム・クルーズが、2023年7月21日から公開される「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」のイベントのために7月17日と18日に来日する。
この日を待ちに待っていた人は多いと思う。
しかし、2023年7月14日なって、突如、来日が中止になったという発表があった。
俳優のトム・クルーズの来日が急きょ取りやめになった。2023年7月17日と18日にトムが主演する映画『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』(7月21日公開)のPRイベントが行われる予定だった。
なぜだろうか?と思って調べてみると、アメリカの俳優がストライキを決行したためだ。
アメリカの俳優、約16万人が加入する労働組合(SAG-AFTRA)が現地時間2023年7月14日午前0時(日本時間14日午後4時)よりストライキに入ったことを受けて中止となった。
ストライキ中は、組合員の俳優に対し、カメラの前での演技や、歌ったり踊ったりする仕事を行わないことや、声の出演、撮影のための航空機の操縦、人形操演、パフォーマンスキャプチャやモーションキャプチャの作業などを行わないよう求めている。
なぜ、ストライキを決行したのか?
一体、アメリカの俳優は何を求めてストライキを起こしているのだろうか?
2023年6月30日から7月12日までSAG-AFTRAと、映画会社などの団体(全米映画テレビ制作者協会=AMPTP※)との交渉が失敗に終わった。
交渉の内容は主に以下の内容。
- 動画配信サービスの急速な拡大に伴う印税制度の見直し(視聴者数に基づく報酬の引き上げなど)
- 生成AIを通じた肖像の不正使用に対する規制づくりなど。
これまで、SAG-AFTRAは、劇場用映画がテレビ放映されると、再使用料が支払われるルールや、映画がビデオ化された時も、ストライキを行って再使用料の支払い権利を勝ち取ってきた。
しかし、今回に関しては平行線をたどっているので決着の長期化が予想される。
印税制度の見直し
現状、DVD・ブルーレイの販売、DVD・ブルーレイレンタル等による俳優への印税計算システムはあるが、急速に伸びてきた動画配信に関しては、そのような印税計算システムの仕組みがない。
このため、DVD・ブルーレイの売り上げが減り、動画配信が増えたことで印税収入が減ってきている。
アメリカ俳優は出演よりも印税収入の方が高いこともあり、アメリカの俳優達は、印税収入による安定した生活が脅かされてきている。
AIによる肖像の不正使用
もう一つ、心配されているがAIの進化による、スキャニングオーデションへの危機感。
最近ある、オーディションで「俳優は実際に撮影には参加しません。ただし、俳優の外見をスキャンする」というスキャニングオーディションが出てきた。
1日分のギャラで俳優をスキャンし、肖像権を所属会社が保有し、永久に使用できるもの。
本人の同意も不要で、ギャラもなしという内容になる。
これは、スキャニングされてしまうと、その瞬間、俳優の権利をデジタルデータに変えて、全て譲り渡すほどの内容になる。
俳優組合は、生成AIで俳優の肖像や声を学習させて、デジタル上で再現することで、声優や俳優の仕事を奪う可能性を危ぐしている。
既にハリウッドでは、俳優を若返らせたり、亡くなった俳優を再現、本人の声で再現して吹き替えさせるなど、AIを使った映像表現が行われている。
脚本家のストライキも起きていた
ハリウッドでは2023年5月から、アメリカの脚本家労働組合(WGA)によるストライキも続いている。
脚本家たちは以下のようなことを求めている。
- 賃金や労働条件の改善を求めている
- 人工知能(AI)の進歩で仕事が減らないよう保護する体制が不十分
AIが進化していくと映画会社側がAIを使って、脚本家らの著作権を無視して過去の作品などを学習させて、AIが新作を作ってしまうことが可能になる。
脚本家達は、AIが脚本を書くことで、脚本家が仕事を失う可能性を危ぐしている。
AIの進化により、少し前までは想像もしていなかった、俳優、脚本家の仕事がAIの乗り換えられてしまうという、とんでもない状況が既に目の前まで来ている。
SAG-AFTRAの会長は、「私たち全員、いずれ機械に置き換えられてしまうと強く訴えている。