21世紀の乗り物
セグウェイを初めて見た時は衝撃的だった。
車輪が2つ並んで杖のような持ち手が伸びているだけで、アクセルもハンドルもない。
操縦は乗り手の体重移動だけで行う。
バッテリーを搭載し電動で動く。
2001年に登場したこともあり、まさに21世紀の乗り物だと思った。
発売当初の価格は、Amazon.comで5000ドル(日本円で60万円)
当時、価格を聞いたときは、安いような、高いような感じがした。
しかし、日本では公道を走れないという。
そのセグウェイが、2020年7月15日で生産を終了するという発表があった。(2020年6月24日)
20年間での販売累計台数は約14万台。
1年に1万台も売れなかったということになる。
もっと、売れても良さそうな気がしたが、今は電動キックボードが500ドル程度で購入できる時代なので、1桁高いセグウェイを選択する人は少ないだろう。
何より公道を走れないというのは致命的だ。
高い、お金を出して私有地しか走れないというのであれば、利用できる人は限られてしまう。
このため、日本でも過去に公道を走れるようにということで試験が行われていたようだが、公道を走れないまま生産中止になってしまった。
セグウェイの進化
20年の間に、セグウェイも進化して価格も随分と安くなっている。
左:Segway-Ninebot S-Pro MAX 電動 バランススクーター(Amazon価格:16.5万円)
性能的にも第一世代のセグウェイは、走行距離が最大40Km、最高速度は20km/h
セグウェイを継承している、Segway-Ninebot S-Pro MAXも走行距離が38Km、最高速度が20Km/hとほぼ同じ。
性能は同じで、価格は下がっている。
キックスクーターは走行距離20Kmで最高速度は約25Km。
しかし、生産が中止になるモデルはオフロードが走れるタイプもあるので走れる場所が平らな場所であればという条件つきになる。
2021年8月21日、生産中止を発表したPTモデルは中国の工場では供給可能という発表があったので、実質生産中止は延期されたことになる。
今、注目されているキックスケーターにしても結局は公道を走れるかどうかが普及するかどうかがポイントになる。
LUUPは頑張った
シェアサイクルのサービスを提供している、LUUPが2021年4月23日から電動キックボードに対応した。更に政府の特例措置でヘルメットの装着も任意となっている。
LUUPの提供区域が、渋谷区、新宿区、品川区、世田谷区、港区、目黒区なので、電動キックボードも同様の区域でのみの対応になる。
株式会社LUUPの岡井大輝社長は26歳。
現状は公道実証ということになる。
このため、事故が起きないように、国土交通省から細かい指導があるということで根気よく対応しているということだった。
電動キックボードも日本の坑道を走れるようにするのは簡単なことではなく、道交法上、電動キックボードは原動機付自転車に該当するので前照灯や方向指示器が必要になる。
装備があるだけではダメで道路運送車両としての保安基準の適合も必要になる。
そこでLUUPは地方自治体も巻き込んで公道実証の認可を取った。
そのために国道交通省の新事業特例制度を利用した。
そこまでに至るまでにも大学キャンパス内の擬似公道での実証実験を行うなどして安全だというデータも準備してきた。
現在は、運転免許証の登録、事前の走行ルールの確認テストに合格した者だけが利用可能で最高時速も15km/hに制限されている。
公道を走ることから電動キックボードにはナンバープレートも付けられている。
制限が厳しい日本で、ここまで来るのは並大抵の努力では無かったはずだ。
セグウェイが伸びない理由
セグウェイの販売台数が伸びなかったのは、こうした公道を走れるようにするための地道な努力を行ってこなかったことが大きいと思う。
20年も経過しているのに未だに公道が走れないセグウェイ。
これは、努力不足だけでは片づけられない部分もある。
日本では二輪車の定義が、「タイヤが前後についているもの」とされている。
電動キックボードはこれに該当するが、セグウェイは「左右についている」
このため、二輪車としては扱われなくなる。
更には、セグウェイのモーターの出力は原付の枠を超えている。
もう一つ、公道を走れる要件があって「物理的な制動装置があること」とされている。しかし、セグウェイはモーターの制御により進行、停止するのでブレーキなどの制動装置で物理的にタイヤの動きを止めると転倒することになる。
このように電動キックボードと比較すると条件が悪いという点はあるが、これらはほんの一部の国でのことであり、他の国では、公道を走れるようになってきている。
今となっては、電動キックボードの方が、手軽に乗れて、価格的に安価、更には公道も走れるようになってきたということで、セグウェイの需要は減るのは間違いない。
これは、セグウェイが公道を走れるようにする熱意がなかったからだと思う。