ナンバーレスのクレジットカード
VISAがクレジットカード番号のないナンバーレスのクレジットカードを発行するようになっている。
それも年会費永久無料。
クレジットカードなのにカード番号がない?ネットなどで利用する時はどうするのだろうか?と思っていたが、カード番号・有効期限などのカード情報は、スマートフォンにVpassアプリをインストールすることで確認できるようになるそうだ。
それだけではなく、カードはタッチ決済にも対応している。
Google Payは2019年から利用できていたが、ApplePayにも2021年5月21日にようやく対応している。
VISAのタッチ決済普及率日本一
そんなVISAのタッチ決済の普及率が日本一なのが石川県の珠洲市だという。
珠洲市は、能登半島の最北端で、人口は約1.3万人、約6千世帯。
住民の約半分が65歳以上。
珠洲市と聞いて、自分が一番最初に、出てくるのは、「揚げ浜式塩田の塩」
そんな珠洲市に、キャッシュレス決済を普及させたのが、石川県では知らない者がいないであろう地方銀行である北國銀行だ。
北國銀行は北国VISAデビットカードに昔から力を入れている。
クレジットカードとの違いはデビットカードは即時決済なので、その場で口座から引き落とされる。
このため、残高を超えた決済ができないので、口座残高が使いすぎのブレーキになる。
石川県のキャッシュレス決済の普及率は北陸新幹線開通前は、高くなかったと思う。
コンビニは現金決済が当たり前、自販機だって現金対応だけでキャッシュレス決済なんてなかった。
会社の自販機でキャッシュレス決済に対応したものが始めて入ってきたときもIDにしか対応していなかった。
東京に行けばスマホだけで買い物には不自由しなかった時代に石川県は、まだこんな状態だった。
金沢駅の改札も自動改札なんてなくて、切符が必須だった。
このような状態だったが、コンビニだけは唯一例外で自分にとっては救いの場だった。
その頃、一部の書店でQUICPayが使えたが、QUICPayは携帯の機種変更の時が面倒だったので、利用しなくなった。
結局、交通系ICカードを使う機会が少ない場所は、キャッシュレスというのは普及しないのかと思ったものだった。
石川県の交通は基本、自家用車で次がバスになる。
バスは石川県では北鉄(北陸鉄道)という会社が中で、ここが交通系ICカードを採用してくれていれば、もっと早くキャッシュレス化が進んでいたと思う。
北鉄は独自のIca(アイカ)というICカードを発行している。
北鉄なのになぜ、Icaなのかというと、一般公募で決まったらしい。
ICカードをそのまま略してシンプルで覚えやすい愛称にしたとホームページには書かれてある。
北陸鉄道なので、Hoica(ホイカ)の方がイメージしやすいように思った。
ICAが致命的なのは、スマホからチャージができない点で、チャージができる場所は限られている。
バス車内か、取扱窓口だけになる。
北鉄のバスは料金が降車時に支払う方式なので混雑している時などは運転手の方に依頼しにくいし、他の乗客にも迷惑がかかる。
取扱い窓口はというと、金沢駅などごく一部なので使い勝手が悪い。
そもそも、ICAを購入するためだけに取扱窓口に行き必要がある。
このため使いたいと思っても、使いにくいのが実情だ。
北鉄がSuicaまたは、ICOCA(JR西日本のカード)を採用してくれていれば、金沢市でのキャッシュレス決済は、もっと早く普及していたように思う。
北國銀行の戦略
このような、キャッシュレス後進地域の石川県の更に能登の最北端である珠洲市を北國銀行はどのようにしてタッチ決済を普及させたのだろうか?
北國銀行ではデビットカードを普及させるために新規口座を開設すると北國VISAデビットカードを発行するようにした。
これで、新規に申し込む事なくキャッシュレス決済が利用できる環境になる。
しかし、肝心の利用できる店舗がなければ宝のもちぐされになる。
北國銀行は、1台5万円の決済端末を店舗に無料で貸し出した。
そして、住民の半数が65歳以上という珠洲市というのがポイントだったように思う。
高齢者はキャッシュの引き出しが大変
自動車の運転ができる者であれば、銀行やコンビニに行ってサッと現金を引き出せるが、自動車が運転できないとなれば、近くの銀行やコンビニにまで歩いていかないといけない。
近年の外で数分立っているだけでも熱中症になりそうな暑さの中を歩いていくというのは、高齢者でなくても相当辛い。
それが普段利用する店舗でデビットカードが使えれば、現金を引き出しに行かなくてもよくなる。
クレジットカードと異なり、その場で口座から引き落とされて、口座残高以上の金額を使用することもできないので安心だ。
更に、北國銀行では、通帳レスを推進しており、通帳の記帳が不要になるだけでなく、スマホで口座残高が確認できたりスマホから振り込みができたりもするので、高齢者には敷居が高いかもしれないがスマホがあれば銀行に行く頻度が確実に減ることになる。
店舗側も同じで、お釣り用のお札や小銭を用意するというのは面倒な作業になっているはずだ。
キャッシュレス決済で3%程度の手数料を取られたとしてもお札や小銭の両替に銀行に行く手間を考えれば十分、メリットがあるのではないだろうか?
銀行はキャッシュレス手数料で潤い、店舗業務の負担が減る、高齢者、店舗は銀行に行く手間が減ることで、3者のWin-Win-Winの関係が成立する。
北國銀行の絶妙な戦略が成功した事例と言えるのではないだろうか?