太宰治さんの娘さん?
NHK 視点と論点 じっと絵をみつめて(太田治子)を何気なく見ていました。
なぜ、こんなに悲しそうな顔をしているんだろ?というのが第一印象でした。
太田治子さんというのは、父は太宰治、母は太宰の代表作「斜陽」の主人公「かず子」のモデルとなった太田静子さんとの間に産まれた娘さんで、今は作家さんだということです。
番組の中で以下の3枚の絵を紹介されていました。
サーカスの景(古賀春江)
まり藻と花(山口蓬春)
国会議事堂 バラ色のシンフォニー(クロード・モネ)
絵から物語を作る
太田さんは、書かれた絵から物語を作るという変わった作家さんでした。
最初の「サーカスの景」という絵は、サーカスに出演していると思われる、虎、象、麒麟に加えて、いるかや鳥と一人の男性が書かれているだけでタイトルを知らずに見るとサーカスと結びつかないような悲しい感じの絵ですが、独特の世界観から引き込まれてしまいます。
【参照】
この絵から太田さんは、父母子の三人家族の物語を作っています。
象の上に乗っている、どこか怯えた感じの虎が、お父さん、2匹の虎に支えられているお父さんの方を睨んでいる感じの虎かお母さんだと表現されていて、そう言われると確かに、そんな感じに見えてしまうので不思議です。
次の「まり藻と花」はとても美しい絵で、紫陽花とガラスの器に入っているまり藻が、とても鮮やかで綺麗です。
【参照】
この絵から男女35歳の二人がお見合いをしたという設定の物語を作り上げています。女性は紫陽花寺で、もう一度、会いませんか?と言われたのですが、何故か男性からメールが届くような気がしています。女性目線の心理描写が何とも言えない感じで良かったです。
そして最後の絵は、モネの国会議事堂です。
【参照】
モネは印象派の代表というだけあって靄がかかった国会議事堂がうっすら見えているだけの絵ですが、右下の水面が明るくなっている部分が僕には印象的でした。
太田さんは、この絵から不毛の愛の思い出について描写しています。主人公の女性は、この国会議事堂には、今回、新婚旅行でやってきたのです。勿論、相手は不毛の愛の男性ではありません。そして5年前には、不毛の愛の男性と一緒にきた思い出の場所です。新婚旅行の場所は旦那さんが決めました。チクチクするような心理描写が上手く描かれていたと思います。
3つの絵、それぞれの物語は、僕には絵を見ただけでは想像できないような内容でした。
こういう物語の作り方もあるんだなぁと、新しい何かを感じました。
太田 治子(作家)
神奈川県小田原市生まれ。明治学院大学英文科卒。
1976~79年、NHK「日曜美術館」司会アシスタント。
1986年 「心映えの記」により第1回坪田譲治文学賞受賞。
2007年 NHKカルチャーアワー文学の世界「明治大正昭和のベストセラー」担当。
2008~10年3月 NHK「ラジオ深夜便」の「私のおすすめ美術館」担当。
主な著書に「絵の中の人生」「青い絵葉書」(新潮社)「恋する手」(講談社)「小さな神様」
「明るい方へ」(朝日新聞出版)「石の花-林芙美子の真実」(筑摩書房)など。【引用】太田治子公式HP
以下の書籍に今回、紹介しました物語と絵が全て掲載されていますので、ご興味のある方は、一読されると良いかと思います。