今週のお題「手土産」
手土産とは、訪問先への感謝の気持ちを込めて持参する品物。
感謝の気持ちを表すものということから、手土産には「森八(もりはち)の千歳(ちとせ)」が定番という時期があった。
過去形になった理由については後述したい。
森八は、石川県金沢市に本社を置く日本の和菓子店。
寛永2年(1625年)創業で、最初は「森下屋」という屋号で、加賀藩御用菓子司として活動を開始した。
日本三大銘菓の一つである「長生殿」が有名。
千歳は、特製の蒸餡を求肥で包み、富士山を模した形状をしている。
求肥(ぎゅうひ)は、もち米や白玉粉に砂糖や水あめを加えて練り上げた和菓子
餡蒸(あんむし)は、蒸した餡のこと。
色は紅白で、本紅で染め分けられた和三盆糖がふりかけられている。
この色合いは、「紅きは旭日の瑞相を表し、白きは鶴の毛衣を象る」とされており、見た目にも美しい祝菓として評価されている。
千歳は常温で15日間の保管が可能になる。
手土産の条件
賞味期限が長いというのは自分の中で手土産としては重要な要素になる。
いくら美味しいものでも、賞味期限が1〜2日しかないので直ぐ食べてくださいなんていうのは食べることを押し付けているようで嫌だ。
そんなことを言わなくても済むような日持ちの長いものでなければいけないというのが持論になる。
ただ、千歳は冬場など寒い季節になると固くなりやすいので、20℃以上の場所に1時間程度置くことで元の柔らかさが戻るが、お渡しする時には、季節を問わず必ず20℃以上の場所に1時間程度このことを伝えるようにしている。
これも初対面の人の場合だと、会話のキッカケにもなるので丁度良かった。
千歳は生菓子に分類される。
生菓子というのは、水分が30%以上の菓子のことで主に餡類を用いた和菓子のこと。
餅菓子、饅頭、水羊羹などが含まれる。
水分が多いとカビや雑菌が繁殖しやすくなることから賞味期限は1日〜2日になる。
ちなみに羊羹は糖度が高いため水分が少なくなる。このため生菓子とは言えない。
しかし、千歳は賞味期限は最大15日間なので水分が少ないのではないか?保存料などが使われているのではないか?と思われるかもしれない。
千歳はなぜ保存期間が長いのか?
しかし、千歳にはそのようなものは一切含まれていない。
千歳は「求肥」を使用している。
求肥は餅米を原料とした柔らかい生地で、この生地で餡を包んでいるので外部からの湿気や空気の影響を受けにくくなる。
また、千歳は和三盆を使用している。
和三盆は湿気を吸収しにくい性質がある。
更に個別に密封包装されているので外部環境から保護される。
何より創業400年以上の歴史を持つ森八の何代にも渡る製造過程で改良が重ねられてきたので品質と保存性が向上してきた。
つまり、保存料などを使用して賞味期限を長くしているわけではないということになる。
このため、金沢からの、これ以上の手土産はないと思っていた。
なぜ、過去形になったのか?
では、なぜ千歳を手土産にしなくなったのか?
千歳は、生菓子なのに日持ちがするということから選んだもの。
お菓子なので、いくら賞味期限が長くても美味しくなければ意味がない。
自分は、手土産を買う際に、必ず、確認のために食べるために別に購入している。
子供の頃から食べてきたお菓子なので味に多少の違いが生じると気がついてしまう。
何が変わったのか?と言われると具体的に何がとは言えないが、また食べたいと思えなくなってきた。
森八のお菓子だが新商品はどれも美味しいとは思えない。
また、葛あんみつは非常に開けにくいパッケージになっているし、しかも味も森八らしさが全く感じられない。
作り手の都合だけで作らられている感じしかしない。
おそらく千歳に関しても製造工程の中で作り手の視点での変更が加えられてしまったのだの思う。
それが、味に影響し、昔とは違う味に変わってしまったのだろう。
お菓子なので美味しいということは大前提だ。
それまでの千歳は、「美味しくて」長持ちするから手土産としてピッタリだと思っていたが、ある時から「美味しくて」の印象が薄まり、暫くすると千歳が食べたくなるということがなくなった。
自分が、美味しいと感じられないものを手土産にするわけにはいかないので、現在は、森八のものを手土産にすることはなくなった。
今の日本人は、古き良き伝統を台無しにするようなことしかしないので、残念でならない。