キャストの設定に疑問
フジテレビのドラマ、「忍者に結婚は難しい」を見ていて珍しくキャストの設定に強く疑問を感じた。
ドラマというのは、フィクションなんだから、おかしな設定があったとしても、受け入れようと思っていた。
ましてや、キャスト設定は色々な人がいるのだからと受け入れるようにしていた。
しかし、今回のドラマだけは、どうしても、受け入れられなかった。
妻は几帳面な性格で、使い終わったらすぐに片づける几帳面な生活スタイル。
そして、朝のトレーニングでロードバイクを追い抜いてしまうほどの身体能力。
これも普通ではあり得ないが、ドラマだからということで、それは許容範囲。
しかし、夫の設定は許容範囲を超えていた。
夫はゴミと無駄と汚れと菌しか生まない。
現役忍者で機敏な動きができるというのに、モノを出したら出しっぱなし、電気をつけたら、つけっぱなし、服は脱いだら、脱ぎっぱなし、冷蔵庫の扉は開けたら開けっぱなし、パンを食べるとパンくずを膝にポロポロと落とす、膝のパンくずは払って床に落とす、冷たい飲み物を文庫本の上に置いてボロボロにしてしまう、トイレは座らないで用を足す。
散らかしたり、汚したりするだけで、自分では後始末もしない。
最初、忍者の設定なので、妻にばれないように駄目夫を演じているのかと思っていたが、30年以上続けてきた習慣だという。
更に、伊賀一族は離婚はご法度。男子失格の烙印を押されて家族ごと一族からつまはじきにされる。
離婚は自分だけではなく、親にまで迷惑をかけることになるので、絶対にできない。
つまり、駄目夫を演じるのは離婚のリスクを高めるだけで何のメリットもない。
どうやら「マジ」の設定のようだ。
忍者の「忍」というのは、自分の感情をおさえて、こらえて、我慢することではないのか?
そして、忍者は合理的でなければいけないはずだ。
そんな姿勢が夫からは微塵も感じられない。
痕跡を残さない忍者なのに普段の生活で、これだけ痕跡を残しておいて、いざとなれば、痕跡を完全に残さないように変われるとは思えない。
完全に許容範囲を超えた。
忍者とは?
それでも、もしかすると忍者のことで自分が知らない何かがあるのかもしれないと忍者のことを調べてみた。
忍者という言葉は昭和30年代以降に小説などで使われていた言葉で歴史的には「忍び」と呼ばれていた。
地方によって呼び方は異なっていて、乱波(らっぱ)・透波(すっぱ)・草(くさ)・奪口(だっこう)・かまりなど様々だった。
「忍び」の起源は、貴族や寺院が支配していた荘園制度に反対していた人達のことを「悪党」と呼んでいた。
悪党が甲賀衆、伊賀衆と呼ばれる地侍(百姓から侍身分を獲得した人)となった。
役割は雇い主(大名など)の敵方の領地や城の中に侵入し放火・破壊・情報操作・情報収集を行い、敵方の地形・陣の配置といった戦力の詳細を雇い主に届けること。
伊賀忍者は伊賀の国(三重県伊賀市・名張市)、甲賀忍者は甲賀の国(滋賀県甲賀市)にあり、京都や奈良に近く、周囲を高い山に囲まれていることから都落ちしてきた貴族、位の高い武士が隠れて暮らすには丁度良い土地だった。
そして場所的に、大名の支配が弱いため、伊賀、甲賀それぞれ地侍達が自治を行う 惣国(そうこく)を形成し武装して傭兵として戦えるだけの力を持つようになった。
大名の支配を受けないだけでなく、庇護も受けないので、他国の大名から攻められても誰も守ってくれない。
このため、自分達の国は自分達で守らなければいけないということ、伊賀の国では土地の性質上、米の収穫高が低く農業だけでは生活できないので傭兵として出稼ぎをしていた。
甲賀の国では守護大名に協力する立場だったことから要請があれば共に戦ってきた。
敵方の陣地に身を潜め、戦力を探ったり(陰忍)、情報操作を行う術(陽忍)を使いこなすようになっていった。
伊賀は出稼ぎ先の大名、甲賀は守護大名から利用価値が高いと評価されるために「忍術」を発達させていった。
万川集海(まんせんしゅうかい)という忍術書で、忍術は「ほぼ、盗賊のやり口に近い」と記載されている。
※万川集海 藤林左武次保武(ふじばやし さむじ やすたけ)著
伊賀・甲賀四十九流につたわる忍術を集大成した秘伝書。知謀計略から天文、薬方、忍器まで、忍びの業の全てを明らかにする。初の全文現代語訳、詳細な注のついた読み下し文に加え、資料として原本の復刻を付す。
石川五右衛門も忍者?
石川五右衛門と言えば、大泥棒のイメージが強いと思うが、両親を亡くしたのち、伊賀の忍者である百地三太夫(百地丹波)の弟子だったということ。
つまり、石川五右衛門は忍術のスキルを元に大泥棒になったと言える。
石川五右衛門は豊臣秀吉を暗殺しようとして見つかり、かまゆでの刑に処された。
自分は忍者=スパイのようなイメージを持っていたが、実際には、盗人に近いスキルをもった者になる。
印を結ぶ
忍者と言えば、人差し指を立てた、ニンニンポーズを思い浮かべるだろう。
しかし、このポーズ以外にも、9つあるとか。
九字法
忍者は気を静めたり、精神力を高める時に印を結びます。ひとつひとつの形の意味は、現在において定かではありませんが、九字法は9つの印を統合して太陽や月、その他自然エネルギーを、己に取り入れるための動作だといわれています。
石川五右衛門のように忍者が大泥棒に変わったという場合があることから、もしかすると、駄目夫のような忍者がいるのかもしれないという気になった。
それでも、痕跡を残さない忍者なので、やはり、ドラマのような駄目夫設定は納得できなかった。
参考
忍術書には、万川集海を含めた、三大忍術伝書と言われるものがある。
残りの2つは、以下になる。
「正忍記」は1681年藤一水子正武によって書かれた紀州流忍術の伝書で、忍術三大秘伝書の中で第一級の本物史料として名高い。全巻を解読・解説し、その全貌を明らかにし、原文も全巻復刻で掲載。忍者のサバイバルに学ぶ。
『万川集海』『正忍記』と並び三大忍術伝書の一角をなす忍術の秘伝書。初の全文現代語訳、詳細な註のついて読み下し、原本の復刻、更には幻の忍術書「忍道梯楷論和漢忍利證語抄」を加えた完全版。