船井電機が破産?
AV機器メーカーの船井電機(株)(大阪府大東市)は2024年10月24日、東京地裁より破産開始決定を受けた。
負債総額は461億5900万円(2024年3月期決算時点)。
家電メーカー(情報通信機械器具製造業)としては、平成以降で4番目。
あの船井電機が破産?倒産でなくて?と疑問を感じた。
2024年7月18日には、ヤマダホールディングスグループ独占販売「FUNAIブランド」 広視野角HISパネルを採用した24型モニター「FPM-24F170」7月下旬より全国で発売だとか、2024年10月16日には、大容量トレーラー付き電動アシスト自転車“RIJDEN”を開発
アマゾンジャパンに10月より正式納品を開始といったニュースリリースが出されていたのに?
一体、3か月の間に何があったのだろうか?
船井電機とは
1961年に設立された「船井電機」は、テレビやビデオといった映像機器をはじめ、プリンターやエアコンなど幅広い事業を展開し、2000年には旧東証1部に上場した。
「世界のFUNAI」とも呼ばれ、会社のホームページによりますと2002年に生産を始めた液晶テレビの事業では、北米市場でトップシェアを獲得したこともあった。
しかし、中国メーカーなどとの間で販売競争が激しさを増す中で、業績が悪化し、2021年には出版を手がける東京の会社の傘下に入り、上場廃止となった。
船井電機が今年8月に公表した昨年度の決算によると、最終損益は131億円の赤字、今年3月末時点で負債総額は461億円に膨れ上がっている。
【出典】船井電機 破産手続き開始決定 東京地裁 “世界のFUNAI” 経営行き詰まり | NHK | 大阪府
2005年3月期には売上高が3535億円に上ったが、次第に価格競争で優位に立つ中国勢にシェア(市場占有率)を奪われ、赤字が常態化していった。
そして、2021年に出版会社・秀和システムに買収されて傘下に入った。
再建に向けて、2023年に「船井電機・ホールディングス」を設立して持ち株会社制に移行し、脱毛サロン運営のミュゼプラチナムを買収したが、約1年で売却した。
今年9月、社長の上田智一氏が退任し、経営体制を一新したばかりだ。
テレビ事業の不振に加え、グループだった脱毛サロンチェーンによる広告代金の未払い問題で信用不安が広がり、立て直しの見通しが立たなくなった。
ネット広告のサイバー・バズは4日、船井電機・ホールディングス(HD)傘下の船井電機(大阪府大東市)株式について、東京地裁に申請していた仮差し押さえが認められたと明らかにした。船井電機HDに関連する脱毛サロン運営会社による広告代金の未納が理由という。
脱毛サロン運営会社はサイバー・バズに対して負債を抱えており、船井電機HDは取引当時の親会社だった。
以下、船井電機が2024年10月4日に株式の仮差押えの件について説明を行った内容になる。
当社に関する一部報道につきまして
2024年10月4日
2024年10月3日から4日にかけ、当社株式に関連する裁判手続きに係る記事が掲載されております。
当社は裁判手続き等に関する報道につきましてはその客観性を担保するため、本件に限らず、法廷外におけるコメントを差し控えさせて頂いております。なお、当社が国内においてヤマダホールディングスグループで展開させて頂いております「FUNAIブランド」製品に関する販売・アフターサービス等につきましては、本報道等とは関係なく、今後も責任を持って継続させて頂きますので、ここにお知らせ致します。
また、昨日(2024年10月3日)に公表させて頂きました通り、当社においては、新たな経営体制がスタートしこれより経営計画を策定していく段階であり、経営計画についてはなるべく早いタイミングで公表させて頂きますので改めてお知らせ致します。
つまり裁判については事実であり、コメントを差し控えるということは、暗に報道内容を認めているようなものだ。
以下は東京リサーチが発表した内容になる。
特に北米での高いシェアを誇り、「世界のFUNAI」と呼ばれ、2005年3月期には単体売上高3535億9200万円をあげた。しかし、その後は中国・台湾などのメーカーとの競合激化もあって業績は低迷。これに対し、2016年に大手家電量販の(株)ヤマダ電機(現:(株)ヤマダホールディング、群馬県高崎市)への独占供給を柱とする業務提携を締結。その後の直接供給先は(株)ヤマダデンキ(群馬県高崎市)となったものの、引き続き主要取引先として供給した。
この間、2017年に創業者の船井哲良氏が死去。事業承継を模索するなかで2021年5月、(株)秀和システムホールディングス(江東区)が株式公開買付を実施して、同社の完全子会社となり、2021年8月26日に上場を廃止した。その後、秀和システムホールディングスの親会社である(株)秀和システム(江東区)の傘下となり、2023年3月末に当社へ事業を移管し、船井電機は船井電機・ホールディングス(以下、船井電機HD)へ商号変更し、中間持株会社となった。さらに同年4月、船井電機HDは脱毛サロン運営の(株)ミュゼプラチナム(東京都港区)を買収した。
しかし、2024年3月に、本社と東京支店の不動産(いずれも船井電機HD名義)に対して、創業家より100億円を超える根抵当権の仮登記が設定されていることが判明。また5月に役員構成が入れ替わるなかで、当社より明確な説明がなされず、信用不安が高まった。さらに、ミュゼプラチナムはネット広告企業に対する債務約22億円の支払いが滞る事態も発生。債務を連帯保証していた船井電機HDが保有する当社株式に対する株式仮差押が申し立てられ、5月2日に仮差押決定の発令を受けた。
10月3日に経営体制の刷新が発表されたものの、支払遅延が発生するなかで材料仕入なども困難となり、今回の事態となった。
本業で経営が傾き、買収に応じた船井電機。
これが全ての失敗だったように思う。
出版会社である秀和システムの買収に応じたのが完全に判断ミスだと思う。
同業に買収されるならいざ知らず、全く関係のない出版会社に買収されて経営が上向きになるとは思えない。
多角経営はうまくいかない
多角経営で失敗した悪い例がライザップ。
リラクゼーション、エステ、健康食品、アパレルなどさまざまな分野に手を広げ、さらに子会社を通じて複数の企業を買収していった。
しかし、その多くの事業がうまく収益を上げることができず、結果的に負債が増大。
事業全体を支える体制が脆弱になり、赤字が拡大する事態に陥った。
経験のある事業であればよいが、経験のない事業に手を出して良い結果がでるとは思えない。
船井電機も背に腹は代えられなかったのかもしれないが、買収に応じていなければ、少なくとも破産は回避できていたように思う。
日本でも多角経営で成功を収めたSONYのような企業もある。
しかし、それはほんの一部であり、楽天はモバイル事業に手を出さなければ、大きな赤字にならずに済んでいたはず。
そして、ソフトバンクも投資で失敗しなければ、もっと安定した経営となっていたはず。
そう考えると、多角経営は経営を苦しくする可能性が高いと言える。