闇バイトより税務署が怖い
税金を払うために、闇バイトで強盗殺人に加担した22歳の男性。(以下、容疑者と記載)
それまで、暴力をふるったこともなく警察に逮捕されるようなこともなかった。
趣味はパソコンとゲーム。
ギャンブルなどはしない。
週6日、塗装の仕事を行っていたという自称、個人事業主。
これだけを聞くと、闇バイトをするよりも、税金を滞納して取り立てされることの方が怖かったようにも受け取れる。
我慢ができない人間
容疑者は地元の中学校を卒業後、高校に進学した。
しかし高校2年の時に中退してしまった。
その時、家族(祖父)も先生も諭したが、「めんどくさくなった。もう無理」だと聞かなかったという。
中退後は、「とび職」「塗装」といった仕事に就いた。
それも続かず現在に至ったのだろう。
個人事業主ということなので、確定申告が必要になる。
しかし、ずっと確定申告をしていないと祖父に語っていたという。
部屋の机の上には「税務署からのお知らせ」と記載されたはがきが置かれてあった。
おそらく、税金が支払われていないといった内容なのだろう。
税金を滞納するほどお金に困っていても、タバコは吸っていて酒もたしなむ程度でも飲んでいたということから基本的に「我慢強くない」人間なのだろう。
高校で嫌なことがあったから、高校をやめる、その後、就いた仕事もおそらく嫌なことがあったので辞めたのだろう。
嫌なことがあると直ぐに辞める。
この子は良い子だと褒められて育てられた人間が、家の外でも良い子だと思われるかどうかは別の話。
家では「おとなしい」というのは、良い子の条件であっても家の外では「罪」のように扱われる場合もある。
特に子供というのは、おとなしい子ばかりではないので、おとなしくない子にとっては、話しかけても話してくれないことは許せない行為だと受け取る場合もあるだろう。
その結果、いじめられることもあるだろうし、逆に、あんな奴は無視しようぜということになるかもしれない。
どちらにしても、「おとなしい子」にとっては楽しいことではないので学校が楽しくなくなる。
子供時代にいじめられたり、無視されたりすると人が怖くなり人に話しかけることが怖くなる。話しかけたら、嫌な顔をされるのではないか?拒絶されるのではないか?など悪い方にばかり考えて話しかけることができなくなる。
また、学生時代に人との関係を築くという経験ができないため、社会に出ても人とどう接すれば良いのかわからず、話しかけられても勘違いされるような態度しか取れない。
これでは学生時代と何ら変わりがない。
結局、就職しても人間関係で失敗してしまうため長くは続かない。
その結果、少しは経験のある塗装関係の仕事を「個人事業主」としてやっていこうと思ったのだろうが、今の社会で「人と関わらずに済む仕事など存在しない」
個人事業主であっても依頼主と関わらなければ仕事はもらえない。
一度は依頼されても二度目はないことが多かったのではないだろうか?
仕返しを考えると断れなかった。
8枚撮りの証明写真が残っていて、3枚が切り取られていたことから履歴書などに使用したものと思われる。
納期限までに税金を支払えない場合は、国税は所轄の税務署、地方税は県税事務所や市区町村の窓口で納税相談することもできるはずだが、相談できなかったのだろうか?
この事件を受けて、警察庁の生活安全企画課長が、以下のようなことを呼びかけていた。
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警察庁生活安全企画課長です。
現在、首都圏を中心に住宅に押し入る凶悪な強盗事件が相次いでいます。
警察から今このような犯罪に加担しようとしている方へ伝えたいことがあります。
自分自身や家族への脅迫が理由であっても強盗は凶悪な犯罪です。
犯罪に関わってはいけません。勇気を持って抜け出し、すぐに警察に相談してください。
警察は相談を受けたあなたやあなたの家族を確実に保護します安心して、そして勇気を持って、今すぐ引き返してください。
正直、なぜ、今更?という気がした。
それに、相談しても本当に保護してくれるのだろうか?
本当に保護してくれる気があったのであれば、もっと早く訴えてくれればよかったのではないだろうか?
どうしても、取って付けたような気持ちしか伝わってこなかった。
それでも、強盗殺人を行ってしまったのは自己責任であり、警察に問題があったとしても関係はない。
世の中には、色々な相談窓口がある。
しかし、それが正当なものなのか?不当なものなのか?がわからなければ、相談することはできない。
まず、相談しやすいように、正当なものかどうかを証明できるような仕組みを構築して欲しいものだ。
一人で悩んでいる時が一番つらいので、相談できるところがあれば、当人にすれば、どれだけ救われるだろうか?
警視庁に限らず、官公省庁、地方自治体すべてで相談できるような体制を整えて欲しい。
相談できるところがあれば、もしかすると、今回の事件で失われた命が、失われずに済んだのではないだろうか?