これまでと異なる詐欺
振り込め詐欺というと、電話やメール、ハガキなどを使って相手をだまし、お金の振り込みや手渡しを要求する犯罪行為。
2004年に警察庁により「振り込め詐欺」と呼称が統一され、従来は「オレオレ詐欺」「架空請求詐欺」「融資保証金詐欺」などと呼ばれていた。
あらゆる手を使って、とにかく指定した口座に振り込ませるというのが、これまでの常識だった。
ところが最近は、自分の口座に振り込まれる詐欺というのがあるそうだ。
自分の口座に振り込まれるならWelComeじゃないか?と思うかもしれないが、これがそうではない。
具体的には、どんな詐欺?
具体例としてストーリー風に書いてみたい
ある日、突然、知らない人から自分の口座に30万円が振り込まれた。
心当たりがないので、なんだろう?と思っていると電話がかかってきた。
実は、30万円を間違えて振り込んでしまったので返してもらえませんか?という内容。
振り込まれたのは間違いないし、金額も合っている。
大変、申し訳ないのですが、振り込みでは間に合わないので、ATMで全額おろして頂いたら、家まで受け取りに行かせて頂きますので住所を教えてくださいという。
困っているようなので、引き受けることにした。
近所の銀行のATMでお金をおろして家で待っていると、約30分後にインターフォンが鳴った。
先ほど、電話させて頂いた者だという。
30万円を渡すと念のため確認させて頂きますといってお金を数え始めた。
はい、間違いありませんというと、30枚の中から3枚を抜き取って、これはご迷惑をおかけしたお詫びですといって渡そうとした。
ここで、何かおかしいと感じた。
振り込みは30万円だったのではないのか?
その中から3万円を引いたら足りなくならないのだろうか?
それに、たったこれだけのことで3万円のお詫びは多すぎる。
多く見ても1万円が妥当なところではないか?
そもそも、こんな振り込みミスをするだろうか?
考えれば、考えるほど、怪しくなってきた。
その時、家の電話が鳴った。
申し訳ありません、電話に出てもよろしいでしょうか?と確認した上で
家に戻った。
3万円はまだ受け取っていない。
電話を取ると、電力会社からのアンケートだった。
電話をそっと切って、再度、受話器を上げて110番にかけた。
小声で、ここまでの事情を全て話した。
近くの交番から直ぐに警官が向かいますので10分程度時間を稼いで欲しいという。
こういう場面で10分というのは意外と長い。
電話で5分程度話してもらい、1分ほどしたらまた電話をして欲しいと頼んだ。
電話を切って玄関に戻った。
まだ、待っていてくれた。
3万円を渡そうと差し出してきた。
いいえ、これくらいのことで3万円も受け取れません。
いいえ、それではこちらの気が済みません。どうか受け取ってください。
といった感じの押し問答が繰り返された。
すると、また電話が鳴った。
申し訳ありません、先ほどの件だと思いますとだけ伝えてその場を立ち去った。
あとは警官が来るまで話してもらった。
パトカーが到着したというので、電話を切って玄関に戻った。
すると、玄関の扉が開いて警察官が2名入ってきて無事、逮捕に至った。
どうだろうか?
お金が自分の口座に振り込まれるだけなら何の問題もないと思うかもしれないが、振り込め詐欺の振込先の口座に自分の口座が使われたと考えるとどうだろうか?
詐欺に自分の口座が使われる。
これでは、自分が振り込み詐欺に関わっていると思われても不思議ではない。
実際、振り込まれたお金を引き出せば、それは詐欺の片棒ということになってしまうので、自分も被害者だということを警察に納得してもらう必要が生じる。
詐欺をする側にすれば、架空口座を作るより、実在する口座を使う方が楽だし
お金もかからないはず。
このため、振り込んだ額の1割くらい支払ったとしても安いものだってことになる。
世の中には美味しい話なんて早々ないので詐欺被害には用心して頂きたい。