通信プロトコルのオープン化
インターネットを利用するのに必須なのが「通信機器」
光信号と電気信号の相互変換を行ってくれるONU。
LAN側のネットワーク回線とWAN側(インターネット側)の回線を中継してくれるルーター。
そしてルーターは有線から無線にも変換してくれる。
複数の機器(パソコン等)をLAN回線に接続するためのハブ。
色んな通信機器があって初めてインターネットに接続できる。
そして、通信機器同士が通信を行うためのプロトコル(通信規約)が公開(オープン)されているので、プロトコルに基づき作られている機器であれば、メーカーや国を問わず、どんな機器でも接続して通信が可能になる。
下表と図はインターネットで使用する通信のプロトコルをまとめたものになる。
電話で話す例だと、電話回線が物理層、ルール層は電話番号や、何語で話すのか?といった会話のルール、そして、会話の内容がアプリケーション層ということになる。
自分達が普段、電話で会話するときには話している内容をどのように相手に届けるか?ということは考えなくても音声を電気信号に変換して電話回線を経由して会話の相手に伝達し、電気信号を音声に変換してくれている。
相手が海外の人であっても電話機を変えることなく、国内で会話するのと同じように会話ができてしまう。
そして、海外旅行にスマホやパソコンを持って出かけても、宿泊先でWi-Fiを使ってインターネットに接続できてしまう。
こんなことができるのは、通信プロトコルを規格化して更にオープンとしたことで世界的に標準化が行われた結果だ。
これが、オープン化しないで各メーカーが独自の仕様で作っていたらこのようなことは実現できていなかったはずだ。
しかし、最初から規格化されていたわけではなく、最初はメーカー毎に異なる仕様になっていた。
その頃の代表と言えば、Novell社のネットワークOSである、NetWareになる。
当時は画期的で、初めて見た時には、パソコン同士がネットワークで接続できるようになるなんて凄い時代だと感動した。
今では当たり前のことだったが、その頃は、パソコン同士が接続するといえば、RS232Cケーブルで1対1で通信する程度で、多数のパソコンがネットワーク上で接続できて、データのやり取りや共有ができるなんてことは考えていなかった。
しかし、NetWareは独自の通信ボード、通信プロトコルだったのでWindowsNTの登場と共に使われなくなっていった。
素晴らしい技術でも、沢山の機器が安価に接続できて利用できなければ利用者は増えない。
WindowsNTではオープン化された通信プロトコルでLAN、インターネットへの接続が簡単な設定だけで行えた。
すると高額で複雑だったnetwareを選択する理由はなくなってしまう。
何より多くのパソコンを接続されていけば便利になるので使わない手はない。
この点に関しては、マイクロソフトのビルゲイツの先見の明は鋭かったと思う。
インターネットの技術にいち早く注目して、自社で開発していたOSに組み込んだ結果が、今なのでさすが、ビルゲイツと言わざる得ない。
オープン化が遅れている日本
しかし、netware のように先駆けて開発されたものがWindowsNTに簡単に置き換わってしまう光景をみてしまうと日本で一斉を風靡したパソコンであるNEC PC98シリーズがIBM PC/AT互換機通称、DOS/Vに置き換わってしまったことをどうしても思い出してしまう。
PCが、初めて販売されていた頃、ソフトウェアはPC98シリーズと記載されていれば、記載されているパソコンでしか動作しないものだった。
パソコンに接続する機器も同様。
今のように接続すれば直ぐに使えるというものではなく、起動してデバイスドライバーの場所をシステムファイルに記述したり、設定を記述したりと大変だった。
そんなことから、パソコンは専門知識がなければ購入できないと思えるような敷居の高い存在だったので、普及するはずもなかった。
OSにはPC-DOS(MS-DOS)を採用し、ハードウェアの内部仕様を全て公開する「オープンアーキテクチャ」を行なっている。
これは、内部仕様を公開することでソフトや周辺機器を多くの会社から販売してもらって多くの人がIBM PCを買って欲しいという目的から。
IBMの思惑とは裏腹にパソコンの内部が公開されてしまっているので、同じものを作ろうと思えば作れてしまうことになって、IBM PC互換機が安価な価格で発売されてしまってこれが、世界標準機になってしまった。
日本も全くオープン化を目指さなかったわけではなかった。
電動車向けの駆動ユニットは外販し、有償の技術支援も担うことにした。
これは、トヨタだけが先行しても1社では生き残れない。仲間を増やさねばという思いから。
しかし時は既に遅く、世界は既にEV化が進んでいた。
日本は、一番の売りだった、モノづくりの技術をオープン化している。
しかし、これはコストダウンのために、中国に工場を作り、日本のモノづくりの技術を給与というお金を支払って提供してしまっただけのこと。
そして結果的に、日本のモノづくりの技術は世界展開されたのではないかと思う。
しかし、これで日本が得たものは何もなく、IBMの二の舞になっただけのような気がする。
何でもオープン化するわけではない
ベースとなる部分(土壌)は仕様をオープン化して誰もが種を蒔けるようにしておく必要があるが、種をどの様に蒔いて、育てて成果を収穫するのかは囲い込みが必要だと思う。
何を囲い込んで、何をオープンにするのか?
ここを考えて、進めないと、苦労して得た、技術を公開するだけで終わってしまう。
そういう意味で、インターネットを利用するための通信技術のオープン化はお手本と言えるので日本が優位になれる分野で次の時代を予測して日本だけではなく世界的な市場となるような土壌を作り、オープン化するようなことをしていく必要があるのではないだろうか?