日銀黒田総裁の任期が終わる
日銀の黒田東彦(くろだはるひこ)総裁が今年4月8日に2期10年の任期を終える。
日銀の総裁は、日銀出身者または財務省(旧大蔵省)出身者が交互に総裁に就任するというのが通常なので、財務省出身の黒田総裁の後任は日銀出身者がセオリーとなる。
誰もが固辞する日銀総裁
そんなことから、次の候補は日銀経験者から選ばれることになる。
次の候補として、日銀の現副総裁である、雨宮正佳(あまみやまさよし)氏、前副総裁である、前副総裁の中曽宏氏(なかそひろし)が有力氏されていたが、どちらも自分は適任ではないということで、両者共に学者を推薦していた。
日銀出身者の憧れだったはずの総裁も、今回ばかりは、他の日銀出身者にも全て固辞されたようだ。
最終手段として新聞を使って辞令を出したのではないか?と言われているのが、2023年2月6日日本経済新聞(電子版)の「日銀次期総裁、雨宮副総裁に打診 政府・与党が最終調整」という見出しの記事。
それでも、雨宮氏は「自分は適任ではない」と固辞した。
このため、日銀出身者と総裁の椅子を争っていた財務省出身OBにも打診をしたが全て固辞されたとか。
余談になるが、財務省出身者の場合、財務事務次官経験者でなければ総裁にはなれなかった。
ちなみに、黒田総裁は財務省出身ではあるが、財務事務次官経験者ではなかった。
なぜ、総裁を嫌がるのか?
あこがれの総裁の椅子が手に入るというのに、なぜ、嫌がるのだろうか?
黒田総裁は、量的緩和ということでお金を市場に大量に流し込んだ。
そして国債を大量に買い続けて、長期国債の金利をコントロールしようとした。
更にはアベノミクスで、大量の株も買っている。
その結果、日銀の財務は急速に悪化し最悪の状態になっている。
黒田総裁が大量に購入した長期国債は、金利が少しでも上がれば、巨額な含み損を抱えることになる。
世界が通貨の信用を評価する場合、時価会計というのが常識。
つまり、通貨の信用は、含み損を含めて評価されることになる。
日本銀行の財務状況が悪化し、信用を失えば、有事の際の「円買い」と言われたほど、信用されていた「円」の信用を失うことになる。
このため、円安が進んでも金利を上げることができない。
現在、内部にいる日銀出身者が固辞することからも、日銀の財務状況が尋常でないことが予想できる。
なぜ引き受けたのか?
こんな状態の日銀の総裁を誰が引き受けたいだろうか?
そんな中で、2023年2月14日、黒田日銀総裁の後任として国会に提示されたのが、東大出身の経済学者で、日銀審議委員の経験もある、植田和男氏だった。
植田氏の名前を聞いて最初に頭に浮かんだのが、以下の書籍。
文庫本になった時に、購入して読んだ。
金融学をとても、わかりやすくかつ、読みやすい文章で書かれていたので印象に残っている。
東大経済学部で教わる金融学を、初めてこの学問に触れる人にもわかりやすく解説したベストセラー
銀行の役割とは? なぜ企業倒産が起こるのか? 日銀の非伝統的金融政策の意味とは? といった基本から、債券や株式の価格決定の仕組み、デリバティブ、ビットコイン、フィンテック、電子マネーまで最新の話題も網羅。
また、植田氏は、2003年10月28日の日本金融学会の講演で以下のようなことを述べている。
現在、物価は十分すぎるほど、上がっているが、前述した理由から債務超過を恐れて利上げができない状態にあるが、植田氏は、20年前に今の状況を想定していたことになる。
そんなことから、打診されたのだと思う。
しかし、十分すぎるほど、現状を理解していて、誰もが関わりたくないような日銀の総裁を、なぜ引き受けたのだろうか?
経済学者として、最悪の財務状況である日本銀行を自分なら何とかできると考えたのかもしれない。
2024年2月24日に行われた、日銀総裁候補 植田和男氏 所信聴取を見ていても、与野党議員の質問にスムーズに答えている姿は見た目的には自信なさげな感じではあるが、子話している言葉からは、どこか自信が感じられた。
以上から、黒田総裁よりは、かなり期待できる方が日銀の総裁になったと思っている。