道徳の授業
「21世紀の道徳」というタイトルが気になった。
道徳といえば、小学校の時に授業で唯一、リラックスできる時間だった。
他の授業と違って自分が感じたことをそのまま話せばよかったので、勉強という感覚ではなかった。
それで、気になったのは、自分が知っている「道徳」の授業では出てこなかったような、これまでに聞いたことがないような言葉や考え方がたくさん出て来たからだ。
- ポリティカル・コレクトネス
- 道徳や社会問題について深く考察するときは「人権」という発想は障害になるから用いない方がいい
- 自然科学の知見と倫理学を結びつける「ダーウィン左翼論」
- 男性が女性よりコミュニケーションがヘタクソであるのは、男性は生まれつき女性に比べて共感能力が欠けている傾向があるからだ
- 共感は道徳的な判断を導き出すとは限らず、非道徳的な判断につながることも多い
- 最大多数の最大幸福を追求する功利主義
- プラトン「饗宴」の「人間球体説」
- 多義性を持つ「ケアの倫理」
- 差別とは「不合理な区別」
この本、どうやら「道徳」という感情に基づくものを「科学的」アプローチで解説しているように感じられた。
ポリティカル・コレクトネス、差別、格差、ジェンダー、動物の権利……いま私たちが直面している様々な問題について考えるとき、カギを握るのは「道徳」。進化心理学をはじめとする最新の学問の知見と、古典的な思想家たちの議論をミックスした、未来志向とアナクロニズムが併存したあたらしい道徳論。「学問の意義」「功利主義」「ジェンダー論」「幸福論」の4つのカテゴリーで構成する、進化論を軸にしたこれからの倫理学。
道徳とは?
最初に道徳とは何かをハッキリさせておきたい。
「道徳」というのは、中国の古典を由来とする観念であり、「道」と「徳」という2つの考えからなる。道とは、人が従うべきルールのことであり、徳とは、そのルールを守ることができる状態をいう。道徳的規範や道徳性ともいう。あるいは類義語の倫理はいくつかの意味をもち、道徳を表すことが多い。
【出典】道徳 - Wikipedia
人が従うべきルールを守ることが道徳になる。
人が従うべきルールとは何か?
- 困っている人がいたら助ける。
- 人の迷惑になるようなことはしない。
- 共用の場所で汚したら次の人のために綺麗にする
- 自分だけのことを考えない。
自分が学校で、学んだ道徳は、自分以外の人の気持ちになって考えるというもの、つまり「思いやり」だと思っている。
そして、それは憲法や法律で決められたことではない。
例えば街中を歩いていて道を聞かれた時に知っていても教えないと逮捕されるものではないが、道徳的には正しい行為とは言えない。
権利の主張と道徳
自由、ジェンダー、差別というのは、一見すると道徳的な内容に思えるが、どれも権利を主張するものだと思う。
権利を主張することは主張したことを法に加えることを求める行為だと思う。
法に加われば自分の意思とは関係なく受け入れなければならない。
相手の気持ちを考えるとかの次元の話ではない。
道徳の話ではなくなる。
「21世紀の道徳」というのは、内容は聞きなれない言葉がたくさん出てくるので、正直、スラスラ読めるような本ではなさそうだ。
しかし、道徳について、考えさせてくれる本であることは間違いないと思う。
正直、権利の主張と道徳を一緒に考えたことなんてなかった。
道徳について新しい視点で考えてみたいという方は読んでみるのも良いかと思う。