100㎏の石が10m移動?
2022年9月富山県小矢部市の神社(神明社)に置いてあった100Kgを超える6つの石が突然、およそ10m程度移動していることに住民が気がついた。
一体、誰が何のために?
地域の人は新聞社に投稿して記事になれば名乗り出てくれるのではないか?と考えて新聞社に投稿した。
そして、見事に記事となり新聞に掲載された。
【出典】盤持ち石移動、誰が? 40~100キロ6個、重い順に 住民、不思議がる
すると、石を動かした人(以下、Sさんと記載)の知人・友人達が「お前が犯人か?」といった感じで連絡がきた。
Sさんは、それで大変なことになっていると気づき、夜にも関わらず慌てて神社の宮司さんに電話をして謝罪した。
なぜ、石を動かしたのだろうか?
神社の力石
この石は、神社などに置かれている力石(ちからいし)と呼ばれているものになる。
娯楽が無かった時代に力比べや力仕事の能力を測るために使われていた。
力石は盤持石とも呼ばれている。
持ちにくいようにするためか石の角は丸くなっている。
石川県の白山比咩神社でも祭礼の神賑(かみにぎわい)として盤持大会が行われ力自慢の若者たちが社頭に集まってその技を競ったという。
Sさんは、5〜6年前から趣味で筋トレを行なっていて、SNSで力石のことを知った。
実際に力石を持ってみて、バーベルやダンベルと全く違うもので、そこに面白さを感じたという。
同じ重さでも自然にあって持ちにくいものなので体感は全く変わってきて、そういうところが面白いと話している。
それ以来、力石にハマってしまい今では「石川の力石」高島愼助 著 岩田書院が愛読書になっている。
この本には、力石にまつわる物語や武勇伝が書かれている。
Sさんは、本を読んで、この石を担いだ人がいたんだという気持ちになってロマンを感じた。
力石に対しての思い入れが強くなったSさんは、神社の隅っこの狭い場所に、ふびんな感じで埋まっている力石を見て、広めのところに移動してあげたいという気持ちになった。
そして、参道の近くへと移動したようだ。
神社に変化が
それ以来、小矢部市の神社では変化があった。
新聞記事を読んだ人達が神社に石を見に来るようになった。
また、地元の区長も隅っこにあった石が力石(盤持石)という大切な石なんだということを改めて認識して今後、この石をどういう風に保管していくか?ということを決めていきたいと話していた。
Sさんは、力石を動かしただけではなく色んな人の心も動かしたようだ。
しかし、新嘗祭を控えていた神社としては、参道の近くに大きな石が6つも置かれていると何かと邪魔になるので困っていた。
それを知ったSさんは後日、神社にやってきて邪魔にならない場所に移動したということだ。
犯罪が、ちょっと変わった出来事へ
Sさんがやったことは、力石のことを思ってのことかもしれないが、非常識な行動であることに変わりはない。
それでも、犯罪事件という感じで報道されることもなく、ちょっと変わった事件として扱われているのは、自分がやったことが大変なことになっていると知って直ぐに宮司さんに謝罪したことからだと思う。
今の時代は車等で事故を起こすと自分のやってしまったことに対して恐怖を感じて、その場から逃げ出すような人が増えている。
そんな中でSさんは逃げることをしないで即座に謝罪した。
新聞報道までされているので、名乗り出れば逮捕されるのではないか?という恐怖心もあったはず。
それでも名乗り出たのは恐怖心より「申し訳ないことをした」という気持ちの方が強かったからだと思う。
犯罪行為のような出来事が、ちょっと変わった出来事のように扱われ、みんながハッピーな気持ちになるというのは想像では思いつかないようなストーリーでないだろうか?
まさに、「事実は小説より奇なり」を証明するかのような出来事だったと思う。