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もっと早く教えてくれよって思った内容を書いていきたいと思います。

音楽の未来を摘むJASRAC

音楽教室での楽曲使用料を争う

JASRAC(日本音楽著作権協会)が2017年、音楽教室でのレッスンで使われる楽曲の使用料を請求する方針を示していた。

これに対して、音楽教室の運営会社(250社)は「支払う義務はない」として訴えを起こしていた。

著作権法では、公衆の前で演奏した場合、楽曲の作曲者や作詞者に「演奏権」があると定めていて、承諾を得ずに演奏すると著作権侵害となる。

今回の場合、以下の2つが焦点になる。

  • 教師が生徒の前で演奏することは「公衆の前」に該当するのかどうか?
  • 音楽教室は生徒の演奏を管理して利益を得ているか?

カラオケ法理

2つ目の内容については、補足すると、「カラオケ法理」と呼ばれる考え方になる。

1988年の最高裁判決で、カラオケスナックで伴奏に合わせて客が歌う行為について、店の経営者は著作権料を払う必要があると認められたことからそのように呼ばれるようになった。

これは、自分で演奏していなくても「他人の演奏を管理して、そこから利益を得ると著作物の利用主体」となるため。

そして、JASRAC側は、生徒は音楽教室が用意するテキストから課題曲を選んで、音楽教室が雇っている教師の管理のもと演奏していると主張している。

言い換えると、生徒が自主的に演奏しているのかどうか?ということが争点になっていた。

争いの決着

2022年10月24日に、この訴えに対する司法判断が確定した。

レッスンで使う楽曲について音楽教室著作権使用料を支払う必要があるかどうかが争われた裁判で、最高裁判所は生徒の演奏は対象にならないとする判決を言い渡し、先生の演奏にかぎり教室側に使用料を徴収できるという判断が確定しました。

音楽教室での著作権について司法判断が確定するのは初めてです。

【出典】音楽教室の著作権使用料「生徒は対象外」最高裁判決ポイントは | NHK | 教育

司法の判断は、生徒の演奏に関しては対象にならないが、先生の演奏に限り音楽教室側から使用料を徴収できるというもの。

つまり、教師の演奏は公衆の前、そして生徒の演奏は自主的なものと判断されたことになる。

教師は指導する事が目的ではあるが、自分の演奏を聴かせることも報酬の対象に含まれるので、法律と照らし合わせた場合には仕方ない判断だと思う。

生徒の演奏が自主的と判断されたのは、「うまくなるための自発的な演奏であり、著作物の利用主体は生徒だ」という判断で、こちらは、そもそもが演奏により利益を得ているわけではないので当然の判断だと思う。

また、一審では音楽教室での楽曲使用として、一括りで判断していたが、二審では、教師の演奏と生徒の演奏に分けて判断するようになっていた。

この点に着目した人の発想は素晴らしいと思う。

レッスン中の楽曲の使用回数は教師より生徒の方が圧倒的に多いので、著作権料の負担は格段に減るはず。

音楽業界の未来にとってはプラスなのか?

法律的には適切なところに着地できたとは思うが、音楽業界全体を考えた時には音楽の世界に足を踏み入れる人を減らしてしまうことになるように思う。

音楽教室にすれば、今は電気・ガス料金が高騰し月謝の値上げを迫られている状態だと思う。

そこに更に著作権料が加算されたら、値上げしようかどうか迷っている音楽教室の背中を押すようなものだ。

著作権料が決めてとなり値上げに踏み切れば、音楽教室に通うのをやめる場合も出てくるはず。

その結果、音楽教室の運営にも影響が出て廃業ということになれば、音楽業界に足を踏み入れてもらうための種を蒔く人が減ることになる。

また、音楽教室に通って種から育てて芽が出てきたのに値上げにより通う事ができなくなれば、これまで育ててきた芽を摘むことにもなる。

これは、音楽を作る側が減ることになるので、音楽業界にとって好ましいことではないはず。

コロナ禍でカラオケの利用者が激減した。

その結果、これまで大きな収入源となっていたものが激減するのは痛手だと思う。

しかし、このような裁判が大きく報道されれば、音楽業界に対する印象も悪くなる。

法律的には正しくても、音楽教室で使用している楽曲にまで著作権料を支払えというのは、やり過ぎなのでは?という気持ちもある。

必然的に、音楽業界へのイメージも悪くなる。

JASRACは、目先の利益ではなく、音楽業界の未来に目を向けるべきだと思う。