東京駅ホーム唯一の「立ち食いそば店」が閉店
東京駅のホームに唯一あった、立ち食いそば店が2022年9月30日で閉店するという。
そう言われると、東京駅のホームには「立ち食いそば店」がなかった。
巨大な東京駅にあって、ホームで唯一そばを食べられた立ち食いそば店が、30日を最後に閉店する。
1日約300本の列車が発着する東京駅の東海道新幹線ホーム。その18・19番線ホームの北寄りに店舗を構える立ち食いそば店「東京グル麺」
運営会社のジェイアール東海パッセンジャーズによると、ビジネス客の来店が圧倒的に多く、人気メニューは、カツ丼の具を温かいそばに載せた、ボリュームたっぷりの「かつ煮そば」だ。
かつては客数が1日600人を超える日もあったが、コロナ禍で4分の1ほどに急減。営業時間の短縮などでしのいできたが、売り上げ回復の道筋が見えず、閉店が決まったという。
東京駅は、JR東海とJR東日本が管轄し、地下を含めて14面ものホームがある。だが、ホームにある立ち食いそば店は、営業30年以上という同店1軒だけ。JR東日本のベテラン社員は「記録で確認できるわけじゃないが、東京駅の他のホームに立ち食いそば店があった記憶はない」と話した。
東京駅のホームは何もないという印象しかなく、北陸新幹線のホームにはベンチさえない。
夏の暑い日にホームで待っているのは拷問に近い(笑)
しかも、東京駅のホームに入ってしまうと、改札を一旦出ないとグランスタに行けなくなる。
ホーム下の待合所で待とうとしても人が多くては入れた試しがない。
このため、東京駅のホームに入ってしまうと不便なことしかないので、電車が来る直前ということが多いので、あまりよく知らないので、東京駅のホームには立ち食いそばはないと思っていた。
子供の頃の憧れ
子供の頃、電車に乗るため駅のホームにいくと立ちながら、そばを食べている人がいて驚いた。
立って食べるなんて行儀が悪いと言われていたからで、大人のくせに行儀が悪いと思っていた。
ある時、母親に、あの人達は行儀が良くないよね?と聞いてみた。
しかし、意外な答えが返ってきた。
あれは「立ち食いそば」といって、急いでいる人のための店で、直ぐに食べて出て行けるようにするための工夫がされていると言われた。
その時は正直、言ってることが、よく分からなかったが、急いでいる時なら立って食べても良いのだという風に理解した。
そして、自分達は急いでいないので、立ち食いそばは食べることができないと思っていた。
食べることができない立ち食いそばが、いつのまにか憧れになっていた。
自分も、いつか急いでいる時に、立ち食いそばを食べてみたいと。
特急対各駅停車
そして、初めて食べたのは高校生の時だった。
資格試験の会場が富山県の高岡市で高岡市まで電車で行くことになった。
友人1人と一緒だったが、どちらも電車には不慣れで、特急列車の切符を買ってしまった。
その頃は新幹線も開通しておらず、富山-金沢間を特急以外の在来線も行き来していたので特急を利用しなくても高岡市に行けたが、県外に行くには特急という思い込みがあったので、特急の切符を買った。
試験会場で同級生に話すと特急を使ったのか?勿体ない、特急なのに自分達より遅かったと笑われたのを今でも覚えている(笑)
特急電車なので金沢駅での待ち時間があった。
初めての立ち食いそば
駅のホームをみていると、何と立ち食いそばがあった。
気持ちが騒ついた。
その頃は既に、憧れという感じではなかったが、それでも自分の中では特別な存在ではあった。
二人とも朝食は食べてきたが、そばなら食べられるということで、二人の意見が一致して
こうして、はじめての立ち食いそばを食べることになった。
しかし、なぜか、ここからは意外なほど記憶がない。
はじめての、立ち食いそばという気持ちが強すぎて、注文は食券だったか口頭だったのか?
何を注文したのか?他に客はいなかったのか?味はどうだったのか?といったことさえ記憶にない。
唯一覚えているのは、2つだけ。
一つは注文すると、直ぐに出てきたこと。
何が起きているんだ?とあまりの早さに驚いた。
もう一つは、友人の方が食べるのが早かったので、先に出ていると言われた時のこと。
この時に母親の言葉の意味が実感できた。
- 急いでいる人のための店
- 直ぐに食べて出ていけるようにする工夫
座って食べる店だと、食べ終わったあと、水など飲んでゆっくりしたりできるが、立ち食いだと、食べ終わると、どこか、その場にいることが、いけないように感じる。
きっと注文して直ぐに出てこないと、その間でさえ気まずい感じがしただろう。
工夫された立ち食いそば
立ち食いの店なので、そんなに多くのスペースはない。
電車が来るまでにササっと食べたい。
だから、注文したら直ぐに出せるように工夫し、ホームという狭い場所だから椅子やテーブルを置くようなスペースがないのでカウンター形式になった。カウンター形式ならワンオペでできて、結果的に食べたら直ぐに店を出て行くようにもなる。
急いでいる人の工夫がされている。
まさに、急いでいる人のための店だ。
その時は気がつかなかったが、なぜ「立ち食いそば」で「立ち食いうどん」ではなかったのか?という疑問もある。
これも、うどんよりそばの方が早く茹でられるし、そばの方が麺が細いので、早く食べられる。これも急いでいる人のためだ。
もちろん回転率を良くするためという目的もあると思うが、それは副産物であり、客側にメリットがなければ、わざわざ立って食べたいとは思わないだろう。
究極のファーストフード
高度経済成長の時代、昼も食べずに電車の出発時刻ギリギリにホームに来て、少し時間があれば立ち食いそばで空腹を満たしておく。
立ち食いそばは、そんな人達を支えていた存在だったのだろう。
早く提供して早く食べられる日本の究極のファーストフードといえる。
しかし、今は、食べる時間を惜しんでいる人は少なくなってしまった。
駅弁が充実してきたことで、電車に乗る前に駅弁を買って電車で食べれば、急いで食べる必要もない。
食事くらいはゆっくり取りたい。
そんな人が増えてきたことから立ち食いという究極のファーストフードは時代に合わなくなってきたのかもしれない。
立ち食いそばが減っていくことは、それだけ日本人にゆとりができたということ。
ゆとり教育が子供をダメにしたように、ゆとり生活が日本人をダメにしたのかもしれない。