アニメ「メジャー」
「イップス」という言葉を、初めて知ったのは、アニメ「メジャー」
イップスの話までが長くなるが、ご容赦願いたい。
ワールドカップ決勝
日本代表がワールドカップの決勝へと駒を進めた。対戦相手はアメリカ。
5対4と日本がリードした8回裏の場面で主人公である、茂野吾郎が登板する。
茂野はキャッチャーの佐藤に、残り6つ全部三振で良いか?と自信ありげに伝えた。
その直後、先頭打者への初球は力んでしまってデッドボール。
続く、4番、5番バッターは、制球力を取り戻し2者連続三振。
そして、6番バッターは、宿敵ジョー・ギブソンJr
茂野の父親はメジャーのスター選手であるジョー・ギブソンの投げた球がデッドボールとなり命を亡くしている。
茂野の義母がギブソンが墓参りに来た時に以下のように伝えている。
- 茂野が大きくなるまで凄い野球選手でいてください。こんなすごいピッチャーからおとさんはホームランを打ったんだって誇れるような凄い選手でずっと、ずっといてください
ギブソンは、茂野に「夢と目標」を与えられる存在としてメジャーの第一線で活躍している。
そして茂野は、そんなギブソンを許してギブソンが目標となった。
今回のワールドカップ決勝でもギブソンはベンチ入りしていたが、心臓病を患っていることがわかり登板の予定はなかった。
ジョー・ギブソンJrは、そのギブソンの息子であり、メジャーでも期待されている強打者になる。
ギブソンJrは、初球、すぽっ抜けたフォークを見事に捉えた。
ライトは走るのをやめて見上げていた。
しかし、ライトポール右だったため、大きなファールで終わった。
茂野は佐藤に、奴をねじ伏せられるのは100マイルのストレートしかないと伝えた。
そして、2球目。
凄いストレートがキャチャーミットに収まった。
電光掲示板には98マイルと表示された。
ツーストライクと追い込まれたギブソンjrは笑みを浮かべていた。
前回の対戦でバットをへし折られたギブソンjrは、日本から折れにくい青だもののバットを取り寄せ、100マイルのボールでも芯を外さない打ち込みを繰り返してきていた。
逆転2ランを打たれた・・・
3球目は外し、茂野は渾身の4球目を投じた。
ボールはバックスクリーン上の照明を直撃していた。
電光掲示板には100マイルと表示されていた。
逆転2ラン。
茂野はあと少しのところで、守り切れなかったことを悔やんだ。
力だけで抑え込もうとした自分の考えが甘かったことを悔やんだ。
ショックのあまり、キャッチャーの佐藤は茂野のところへ励ましに行けないほど、落ち込んでいた。
このため、次のバッターには左中間を抜かれる2塁打を浴びた。
誰もが茂野は限界だと思った。
しかし日本は既にベンチ入りしている投手はあと一人。
延長戦を考えると、できれば茂野にまだ踏ん張って欲しいという事情もある。
しかし、崩れかかるところをキャッチャーの佐藤を始めとしたチームメートが茂野を励ましにいった。
そして、佐藤は断言した。
打たれたのは茂野の「最高のボールだった」
チームメートは、1点差くらい俺たちが取り返してやる。
その結果、何とか立ち直ることができ、次のバッターを三振に打ち取りチェンジ。
日本最終回の攻撃は?
そして9回表、日本の攻撃。
米国は切り札の防御率0.75のクローザーのハフマンを投入してきた。
先頭打者はヒットで出塁したが、次バッターがゲッツーで、あっさりと2アウトまで追い込まれた・・・
これで終わったかと思ったが3人目のバッターがサード強襲のヒット。
次のバッターはフォアボール。
そして次のバッターはキャッチャーの佐藤。
茂野を敗戦投手にさせてはいけないとう思いから、センター前へはじき返して、日本は何とか、同点に追いついた。
佐藤の同点タイムリーで気合が入った茂野は9回裏を三者連続三振で抑えた。
10回表、日本は、先頭打者が2ベースヒット、送りバントで3塁へ進め、ハフマンを追い詰める。
ハフマンはもう限界、ギブソン以外に残るピッチャーは1人。
米国も投手の余裕がなくなっていた。
ギブソンが登板?
そんなことから、自分が投げなければいけないという気持ちから、登板予定のなかったギブソンが投球練習を始めていた。
この間に、次のバッターはフォアボールで出塁し1アウト、1・3塁に変わった。
ここで、ギブソンの登板となった。
ギブソンは140Km代のボールしか投げられなかったが、見事、日本打線を抑えてしまった。
10回裏、茂野も負けじと米国のクリーンナップを3者連続三振。
これで、8回裏から7者連続3振
両者譲らない投手戦となり、11回裏、再度、ギブソンJrに回って来た。
8回裏の時とは打って変わって茂野は、ギブソンJrもあっさりと3球3振に打ち取った。
そして両チーム得点が入らないまま16回表、日本の攻撃で、佐藤の打球はギブソンを襲った。ボールは捕ったものの、折れたバッドがギブソンの心臓を直撃しボールを落としてしまった。3塁走者はそれを見て、ホームへ走った。
ギブソンは最後の力を振り絞り、何とか落としたボールを取ってホームへ投げた。
判定はアウトで、ギブソンは何とか、16回表まで無得点で抑えた。
103マイルのボールで勝負!
対する茂野は16回裏、疲労からかノーアウト満塁のピンチを迎えていた。
そして、ギブソンは、ベンチ裏で水を飲んでいる時に倒れた。
救急車で病院へ運ばれたギブソン。
次のバッターは、ギブソンJr。
茂野は疲労で制球力が落ちてきていたが、ギブソンJrを迎え、100マイルのボールを投げ込んできた。
茂野渾身のストレートはギブソンJrのバッドをへし折った。
しかし、ボールはライトスタンドポールに当たっていた。
満塁ホームラン・・・
電光掲示板には103マイルと表示されていたので紛れもなく茂野にとって最高のボールだった。
茂野は叫びをあげて、マウンドに崩れ落ちた。
1試合で逆転ホームランとサヨナラホームランを浴びた。
しかも、どちらも誰もが認める最高のボールだった・・・
茂野は、これまで見せたことのない表情でチームメートに支えられながらマウンドを降りて行った。
元気そうな茂野ではあったが、メジャーに昇格して開幕を迎えることを目指しフロリダに向かおうと空港にいた。
搭乗手続きが始まり、立ち上がると共に、ギブソンJrへのリベンジを考えた瞬間、サヨナラホームランを打たれた時のシーンが蘇ってきた。
闘志がわかない。
野球をやりたいという気持ちが全然起きない。
これまで、どんな負け方をしても、こんな気持ちになったことはない。
茂野はフロリダへ行くのをやめて、日本に帰ってしまった。
ギブソンJrと自分が持っている最高のボールで勝負をした。
しかし、負けてしまった。
脳裏に焼き付く
自分にとって最高と思えるようなボールを1試合で2回も投げることができた。
しかし、2回ともホームランを打たれている。
2回の内、1回は、バッドをへし折っているのにスタンドまで持っていかれた・・・
もう、これ以上のボールは投げられない・・・
自分は、もう限界だ・・・
そんな気持ちが、野球をやりたいと思えなくしてしまった、だから闘志もわかなくなった。
これが、イップス。
高校時代に投手から野手に転向したのはなぜかと問われ、白い歯を見せこう答えていた。
「一年生からすれば三年生は神様。先輩たちに投げられなくなり、二年春からイップスになったんです。オリックス入団五年後の一九九七年まで続きました。苦しかったですね〜」