有事のドル買い、有事の円買い。
有事が発生した場合、安定したドルを買う「有事のドル買い」と、安定した円が買われる「有事の円買い」ということが言われていた。
今回は、どうだろうか?
円安が加速していることから、円が売られて、ドルが買われているので、「有事のドル買い」状態だと言える。
では、なぜ円が売られているのだろうか?
米国がゼロ金利政策を解除
米国の日本中央銀行に当たる、FRB(連邦準備制度理事会)が2022年3月16日に、新型コロナウイルス危機を受け2020年3月から2年間続けた事実上のゼロ金利政策を解除し利上げすることを決定した。
政策金利は、2022年中に0.25%ずつ合計7回引き上げるという。
0.25×7回=1.75%
日本の銀行の金利は?普通預金なら0.001%、定期預金で0.002%
金利のつかない円を売って、1.75%になる米ドルを買いたくなるはずだ。
このため、今回は、「有事のドル買い」に軍配が上がった。
日銀は指値オペで金利上昇を阻止
更に、日銀が2022年3月29日から3日間の「連続指値オペ」と呼ばれる措置を行った。
まず、オペというのは、オペレーションのことで、日銀が国債や社債などの売買で金融市場のお金の流れを調整する(公開市場操作)ことを指す。
指値オペは、日銀が指値(利回りを指定する)で国債を無制限に買い入れることを言う。
国債は買われると金利が下がり、売られると金利が上がる関係にある。
FRBがゼロ金利政策の解除を発表したことで、日本の国債が売られる動きが強くなり長期金利が上がる方向になっていた。
日銀は、長期金利を下げる目的で、3日間の指値(0.25%)オペを行った。
この間は、長期金利が0.25%で固定され日銀が買い取ることになった。
指値オペにより日銀は金利を上げたくないと意思表示を示したのと同じとなり、更に円が売られることになった。
その結果、1日で円は3円下がり、6年ぶりに125円台になっている。
日銀は、円安が進んで国民の生活が苦しくなるよりも、国債の長期金利を抑える方を選択したことになる。
2022年4月2日時点で1ドルが約122.5円ではあるが、ドルの金利が上がるに連れて、円売りは加速することが予想される。
日銀としては、円安の方が日本経済にとってはプラスだと考えている。
これは、技術を捨てて、観光立国となった日本にとっては、外国からの観光客が増えることが国内の経済を活性化してくれると考えているからだと思う。
2021年は、100円を切るのか?と思うほど円高の時期もあったが、2022年に入り、有事に加えて米国のゼロ金利政策を解除したことで予想外の円安が起きている。
これまでとは違う円安
これまでも、このようなことはあったが、今回は、これまでとは違う。
現在の実質金利は、米国より日本の方が高いからだ。
実質金利というのは、金利から物価上昇率(予想)を差し引いた状態の金利のことを指す。
金利が高くても、それ以上に物価が上昇しているのであれば、実質金利はマイナスということになる。
このため、これまでは政策金利では判断しないで実質金利の高い方の通貨が買われていた。
しかし、今回は、実質金利が高い方の円が売られているので、これまでとは異なる。
これは、どういうことだろうか?
魅力がなくなった日本
一つ考えられるのは、今の日本には魅力がないためだ。
日本が魅力的だったのは、技術立国だったからであり、それが観光にもなっていた。
日本に海外から観光客が来ていたのは「家電」を始めとした日本の高い技術力により作られていた製品があったからで、現在の日本にはそんな魅力はなく、中国や韓国に奪われてしまった感がある。
秋葉原電気街は過去のこと
実際、「秋葉原」といえば、以前は「電気街」のイメージがあったが、今では、「マンガ・アニメ・ゲーム・フィギュアの街」に変わってしまっている。
日本で唯一残っている、最後の砦と言ってもよいアニメとゲームだ。
それは、観光立国としての日本の終わりを示すことになる。
観光の目玉がない場所に観光に来る人はいない。
これが、世界中に知れ渡ったのではないだろうか?
その結果、日本経済には、もう期待できないということから円売りが加速されているように思う。
1ドル300円時代に戻るのか?
そうすると、円安は止まらず、1970年代の1ドル300円時代に戻ってしまう日が来るのではないかと心配になってくる。
日本はモノづくりを捨てて、消費するだけの国に変わってしまった。
観光の目玉もなく、観光地としての需要もなくなるのは遠くないと思う。
今の円安は、日本の価値そのものを世界から突き付けられているように感じられる。
日本は、今後、どうするつもりなのだろうか?
エネルギー資源を輸入に頼るしかない日本が世界から必要とされるには、生産物が必要であり、マンガ・アニメ・ゲーム・フィギュアだけで世界に必要とされる国であり続けることはできるのだろうか?
今の日本からは心配のネタしか思い浮かばない。