熊本県産の「あさり」の97%が海外産
熊本県産の「あさり」として販売されていたうちの97%が外国産が混入している可能性があるということで、農林水産省が発表した。
これを受けて熊本県知事は、県漁業協同組合連合会に対して2か月間、採捕禁止の要請を行った。
この間に、流通経路の調査等を行い、産地偽装の根絶に努めるということのようだ。
調査の背景及び目的
国内で販売されるあさりについては、これまで実施した立入検査や科学的分析の結果等から、外国産あさりが混入している疑いがある国産あさりが多量に流通していると推測されたことから、その産地表示の実態を把握するため、今回、全国の広域小売店(1,005店舗)において、原産地別の販売数量の確認や、買い上げたあさりの科学的分析を行いました。
*広域小売店:事業所、店舗等が複数の都道府県に所在する事業者結果概要
令和3年 10 月から 12 月末までの間(以下「調査期間」という。)の原産地別の販
売状況については、熊本県産あさりの推計販売数量が 2,485 トンとなり、年間の熊本
県産あさりの漁獲量を大幅に上回る量が販売されていることが推測され、また、科学
的分析の結果、買い上げた熊本県産あさりのほとんどが「外国産あさりが混入してい
る可能性が高い」と判定されました。いずれも外国産あさりが混入している疑いがあ
る結果となりました。
最も販売割合が高い熊本県産あさりの推計販売数量は 2,485 トンであり、令和2
年漁獲量 21 トンを大幅に上回る熊本県産あさりが販売されていたことを示唆する
結果となりました。【出典】広域小売店におけるあさりの産地表示の実態に関する調査結果について:農林水産省
【出典】https://www.maff.go.jp/j/press/syouan/kansa/attach/pdf/220201-1.pdf
産地偽装は99%以上?
正直、農林水産省の発表は衝撃的だった。
上記の数値から計算すると、21トン÷2485トン=0.85%
つまり、本当の熊本県産は0.85%しか存在していないことになるので、「99%」が熊本県産ではないことになる。
食品表示法の問題点
食品表示法では、輸入あさりを県内の干潟などで一時的に養殖した場合、輸入前の産地より養殖機関が長ければ養殖した場所を産地として表示できる。
何週間か前に、産地偽装を行っている業者が「中国産」と思われるあさりを「熊本産」として干潟に蒔いて「畜養」しているシーンをテレビ番組で放送していたのを見ていた。
「畜養」というのは海外からの輸入品などの鮮度を回復するために「浜や干潟」に蒔いて暫く放置することを指し、この行為は違法ではない。
産地偽装業者は、中国での育成期間を指定し、国内での「畜養」期間の方を長くしたり、「畜養」記録さえ偽装して「熊本産」として出荷していたようだ。
このため国内では「中国産」と「表示」された「あさり」は市場では見られなかった。
これだけでも、「熊本県産」の「あさり」は購入できないと思っていたが、今回の農林水産省の発表を聞いてしまうと、完全に「熊本県産」=「中国産」という印象を持ってしまった。
偽装の手口を話していた人は、アサリ業界は15年前から、このような状態だったという。
以上から考えると、今回の件は熊本県は15年以上、産地偽装が行われていたことに気が付かなかったことになる。
産地偽装をどうやって無くすのか?
「熊本ブランド」だというのであれば、しっかり偽物が出回っていないのか?を調べるべきで、今回の場合は、ほぼ100%が産地偽装品だったにも関わらず、気が付かないというのは、「熊本県産」として出荷できてしまう仕組みに問題があるように思う。
また、食品表示法にも問題があり、国産ワインと表示されているモノの一部には、海外産の原料を使っているにも関わらず、日本で醸造すれば「国産」として表示が可能になる。
2018年10月29日までは、海外でボトルにまで詰めて、日本でラベルを貼り付けただけで「国産」と表示することができていた。(2018年10月30日に果実酒等の製法品質表示基準が施行)
産地が重要なモノに関しては、もっと厳しい基準を設けて、原材料に1種類でも海外の原料が含まれていたり、海外で作業などが行われた場合には国産表示を認めず「混在産」といった表示を行うといった法改正が必要なのではないかと思う。
「あさり」は中国産と表記すると売れない
また「あさり」だけが中国産・韓国産と表記すると売れないという事情もあるようだ。
随分前に、中国産の「あさり」から農薬が検出されたという報道があったが、やはり中国産の生ものを口にするというのは怖いのかもしれない。
熊本県で収穫できる「あさり」は年々減少している。
これは、熊本産として出荷されていたあさりの99%が熊本県以外で収穫されたものであるということからも理解できる。
今回の農林水産省の発表を受けて仕入業者からスーパーに対して「中国産」と表記を変えて欲しいという依頼があり、ラベルの貼り替えを行なっていた。
価格を見てみると、「有明海産(熊本産)」と表記されていた時は、税抜き価格で380円、これが「中国産」に変わると価格も350円に変わっていた。
つまり、熊本産と中国産では30円しか変わらない。
おそらく、同じ価格だといけないということで購入価格ギリギリのところまで価格を下げたのだろう。
僅かしか取れない熊本産であれば、中国産とは明らかに違う価格にするべきで、それがされていなかったことにも問題があるように思う。