浴室テレビ
一時期、「浴室テレビ」が売れていた。
アナログ放送の時代からあって、風呂に入りながら、テレビが見られる。
風呂に入りたいが野球中継があって今が1番面白い時だと遅れ遅れになって結局、ラジオ放送で聴くことになった。
当時は当たり前のことだったが、今、考えてみれば、野球を映像なしで音声だけの実況放送を聴いて何が楽しんだ?って気がする。
風呂だけではなく自動車の中でもテレビを見ることができる人は少なかったのでラジオ放送が試合の状況を知る唯一の手段だった。
テレビが色々なところで
しかし、カーナビの普及と共に自動車の中でもテレビが見られるようになった。
すると、風呂の中でも見たいと思うようになり浴室テレビが発売された。
風呂に入りながらテレビが見られる。
優雅な入浴タイムだと興味を持つ人は多かった。
価格のマジック
しかし、工事費を抜きにしても15型位の小さなテレビが20万円というのは高かった。
普通の液晶テレビの2倍以上だったように思う。
そのため、浴室テレビだけだと中々、手が出ないが、不思議なもので浴室のリフォームの時に一緒だと、価格のマジックで、ついでにテレビを設置してもいいだろうと考えた家庭は多いのかもしれない。
20万円のテレビと考えると高いが、リフォームに100万円だったとしてテレビを追加して120万円なら買っても良いのでは?と思うのが価格のマジック。
リフォームにより工事費の部分が削減されるということもあると思うが、100万円が120万円になっても対して変わりがないように感じるという不思議な心理が生じる。浴室テレビの20万円に変わりはない。
浴室テレビは簡単に交換できない
しかし、浴室テレビが壊れた時のことを想像してみて欲しい。
テレビの寿命は約10年だと言われている。
仮に10年で壊れたとすると新しいものが安くなっていたり、修理するにも部品がないということもあって新しいものに買い換えることになる。
その時に、また、新しいものを買って設置するのだろうか?
一時期、安くなってくると賃貸の物件等に設置されることもあったが、今はどうなのだろうか?
浴室テレビは蛍光灯のように、ホームセンターで蛍光灯を買ってきて交換できれば良いが、電気工事の知識や経験がない人にとっては敷居が高い。
防水対応のスマホ・タブレットの登場
それだけではない、今は、スマートフォンにも防水機能が付いているものが増えている。既にiPhoneも防水対応になっている。
大きな画面で見たいというのであれば、今は防水対応のタブレットまである。
スマホやタブレットなら、浴室テレビを交換するために風呂に1日入れないということもない。
そして、多くの浴室テレビはテレビ機能が中心で、インターネットでSNSや動画を見るということには適していない。
遅かった浴室テレビ
今は、プロ野球のナイター中継も、少なくなり、野球中継が見たいからと風呂を遅らせる理由もなくなっている。
プロ野球のナイター中継の視聴率が連日、20%越えだった頃に浴室テレビが発売されていれば、もっと普及していたと思う。
しかし、風呂の中で野球が見れると、カラスの行水だった父親が長風呂になって他のものが入れなくなり迷惑したかもしれない(笑)
風呂は身体を洗うところという考え方が当たり前で、浴槽でゆっくりテレビを見るという発想がなかったのかもしれない。
浴室で電気製品は危険
もう一つ、水を扱うところで電気というのはタブーで、AC100Vが浴槽で漏電してしまうと死亡してしまうという危険性もあるので、浴室について詳しい人達だからこその浴室で電気=危険という知識が邪魔したのかもしれない。
人間は、3mAの電流が流れるだけでも死に至る場合があると習った記憶がある。
特に夏場は汗で皮膚の表面が濡れていて電流が流れやすくなっているので家庭用の交流100Vの電圧でも死に至る可能性がある。
それどころか、ロシアでiPhoneを充電しながら風呂で使用していてiPhoneが浴槽内に落ちてしまったことで電流が浴槽内に流れてしまって死亡したという事故も発生している。
それが、大量の水が入っている浴槽で交流100Vに感電してしまった場合、考えただけでも怖くなる。
このような理由から浴室内にコンセントは設置しない。
このため、水に濡れた指などで操作する可能性のある、給湯器の浴室リモコン、給湯リモコンの電源兼通信ケーブルは、DC12V(1.5Vの乾電池8個分)になっている。
交流の電圧の方が直流の電圧よりも感電した場合の危険度が高いため、直流電圧を使用しているものと思われる。
浴室テレビも、直接AC100Vの線が接続されないように、必ず、外付けの電源ボックスを浴室の天井裏などに設置してDC12~9V程度の直流電圧で浴室テレビに供給している。
ひと昔前のブラウン管テレビだとブラウン管部分に高電圧が必要になるので、浴室に設置するなんてことはできなかったはずだ。
直流の低い電圧で駆動する液晶パネルが出来たからこそ可能になった。
テレビの壁
もちろん、家電メーカーではないガス器具の会社等がテレビを扱うとなれば技術的なことだけではなく色々な認証手続きなどについてもクリアしないといけない。
しかも、売れるかどうかわからないものに対して、お金と時間を投資して採算がとれるのか?という判断も難しかったと思う。
そういった色々な事情を一つずつクリアした結果が浴室テレビだったが、発売するタイミングが遅すぎたように思う。
非接触で電源(DC12V)が供給できる「お風呂コンセント」ができれば、お風呂に色々なものが電池を使わずに利用できるようになると思うが、需要がないという判断なのかどこも実用化していない。