自社株買いを制限?
立憲民主党の落合貴之氏が、岸田総理に対して企業が投資家から資金を調達すべき株式市場が投資家に資金を供給する場所になっているとして、自社株買い制限の検討を求めた。
これに対して岸田総理は、自社株買いの制限は、新しい資本主義を実現する観点から「大変重要なポイントでもある」とも述べた。ただ画一的に規制することは「少し慎重に考えなければいけない」と答えた。
落合氏は、一生懸命働いた売り上げを株価を上げることばかりに使うことは問題だと給与上昇や設備投資ではなく自社株買いに資金を投じる企業を批判し、政府の見解をただした。
大企業は現在、剰余金が増えていることから自社株を買い取り消却することで持ち株比率を上げ、敵対的買収などに備えようということだと思う。
あとは、消却により一株あたりの価値は上がるので株主への還元にもなる。
自社株を買い取ることで他にも配当金を出す額が減ることで企業にとってもメリットとなる。
大株主となっている企業が後継者に株式を引き継ぐ際には、相続・贈与ということになるので多額の税金を支払うことになる。
税金を支払うのが負担になれば、売却することになる。
自社株買いする企業が増えている
2021年1月~8月にかけて自社株買いによる償却件数は前年比で3割増となっている。
以下は、2021年に自社株買いを実施した上位5社になる。
株を大量に買い取ることになるので株価も自然と上がる。
自社株買いはインサイダー取引ではないのか?と思うかもしれない。
インサイダー取引というのは、会社の重要事実(内部情報)を知る者が情報公表前に株式の売買を行うことを指す。
2001年までは消却やストックオプション等の特定目的に限り認められたいたが2001年以降に商法改正が行われて解禁されている。
2001年6月に「商法等の一部を改正する等の法律」(平成13年法律79号)により、自己株式取得および保有規制の見直しがなされた。
それまで、自己株式の取得・保有に関して「原則禁止」規定が、一定の手続及び財源に関する規制を条件として、「原則容認」へと180度転換した。
その結果、期間や数量の制限なく保有可能となっている。
※一日の注文数、価格などは制限されている。
なぜ自社株買いが増えているのか?
落合氏の発言は、企業が剰余金を設備投資や社員への給与アップには使わずに自社株買いに使用していることを問題視してのことだと思うが、「一生懸命働いた売り上げを株価を上げることばかり」というのは違うような気がする。
企業にすれば、コロナ渦で経済が不安定な状態で、設備投資は控えたい。
社員の給与にしても、一度アップしてしまうと、下げることは難しいので、不透明な状態では慎重になる。
このため、剰余金に余裕があって株価が高値の状態の時に、敵対的買収に備えて自社株比率を上げておきたいというのが本音だと思う。
しかも、買い戻せるだけの資金に余裕があるなら、メリットはあってもデメリットはない。
株価が上がるというのは、副産物でしかない。
このため、自社株買いに制限を設けたとしても、今の状態では設備投資や社員の給与アップに剰余金が回るとは思えない。
がんばれ、党首が変わった立憲民主党
野党にとって追い風であり、政権交代の絶好のチャンスだったにも関わらず、自民党を批判しかせず、選挙のための夏休みの宿題的な政策しか無かったために国民の支持を得ることができずにチャンスを台無しにしてしまった。
衆議院選挙での失敗から立憲民主党は党首も変わり、今までとは違うというところを見せたったはずだ。
その一つが落合氏の発言だったのだろう。
しかし、企業が株価を上げるために自社株買いを行なっているという指摘はズレており、なぜ企業が設備投資や社員の給与アップに利益を使わないのか?ということが理解できていない。
それでも、枝野氏時代の立憲民主党から変わろうとしているのは感じられる。
この調子で立憲民主党としての政策を完成させていって欲しい。