日本銀行金沢支店が移転
2021年12月7日に、日本銀行金沢支店の起工式が行われた。
現在の建物は、金沢市香林坊2丁目に建てられていて、老朽化、手狭になったということで移転を行うという。
建物は、金沢駅近くの一等地。地上3階建て、十分な耐震性、周辺と調和するデザインで、総工費は64億円。
現在の敷地面積は、約4700㎡で、東京ドームの建築面積が47000㎡なので、東京ドームの10分の1程度の広さになる。
現在の建物は昭和29年に建てられたものだというので、築67年になる。
築67年ならさすがに建て替えは仕方ないような気がする。
下の写真は、上段が現在の日本銀行金沢支店、下段は移転後の完成予想図になる。
日本銀行金沢支店は何をするところか?
日本銀行の金沢支店には一度も入ったことがないので、どんなところか知らない。
それどころか、そもそも何をしているのだろうか?
日銀というと、紙幣や硬貨を作っているというイメージしかないので、地方の支店では何をしているのか?何のために存在するのか?
わざわざ、金沢駅の近くという土地代だけでも高そうな場所に移転しないといけないのだろうか?
もっと、中心部から外れた場所ではダメなのだろうか?と疑問が次々に出てくる。
日本銀行金沢支店のホームページで調べてみた。
生まれて初めて見たと思う(笑)
日本銀行金沢支店の役割と業務内容
- お札の発行
- 国庫金の取り扱い
- 決済システムの運営
- 金融システムの維持
- 災害時の対応
- 金融経済情報の提供
- 石川県金融広報委員会
【出典】役割と業務内容
お札の発行
- 日銀金沢支店に戻って来たお札に対して痛んでいないか?偽札でないか?といったチェックなどを1枚ずつ行っている。
国庫金の取り扱い
決済システムの運営
- 日銀は金融機関に「日本銀行金融ネットワークシステム」というシステムを提供している。このシステムを通すことで金融機関により異なるシステム間でも資金決済が円滑に行われるようになっている。また、国債の売買もこのシステムを通じて行っている。
金融システムの維持
- 金融機関との日々のモニタリングなどを通じて、金融市場の動向を迅速、的確に把握し、必要があれば金融機関に対し助言等を行う。また、不幸にして金融機関の一部に支払不能が発生した場合には、緊急の貸付を行いその波及を防止する。
災害時の対応
-
常に大災害の発生を念頭に円滑なお金の供給体制をとれるようにしている。
2018年2月の福井県、2021年1月の富山県・福井県での大雪による災害発生時には、金融機関などに対し預金の払出しや汚れた紙幣の引き換えなどについて柔軟に対応することを要請した「金融上の特別措置」を北陸財務局などと連名で発動した。
金融経済情報の提供
- 日頃から北陸の金融経済情勢を調査・分析し、各種資料を提供している。「全国企業短期経済観測調査」(短観)では、企業の活動や経営者の考え方などに関する情報を収集し、景気動向の把握に役立てている。
石川県金融広報委員会
- 日銀金沢支店には、石川県金融広報委員会の事務局があり、中立公正な立場から暮らしに身近な金融広報・消費者教育活動を行っている。
異なる銀行間で振り込みなどの処理が問題なく行えているのは、日銀ネットとの共通インターフェースの存在がある。
これだけなら、日銀金沢支店の存在は不要なので、日銀金沢支店の役割とは言えないが、銀行からの現金引き出し対応、銀行から戻された紙幣や硬貨のチェックに関しては役割とは言える。
あと、後述するが、日本銀行券の需要予測のために日銀システムは必要な存在になる。
北陸三県(石川県、富山県、福井県)の通貨の供給を担っているので災害等で建物が倒壊してしまえば北陸三県の通貨の供給もストップして大変な事になるので、この一点だけは日銀金沢支店の大きな役割だということは認識できる。
そう考えると、2011年以降、地震、大雪、大雨による災害が増えているので、もっと早く建て替えは実施されても良かったのではないか?と思うが、金沢の中心地に東京ドーム10分の1以上の土地を確保することが難航したのかもしれない。
日銀金沢支店の役割では銀行からの現金引き出しがもっとも重要だ。
金沢の中心は今では香林坊から金沢駅西に変わっており、そこには唯一、本店が石川県にある北國銀行もある。
そんなことから中心地という立地条件は外せない。
日本銀行金沢支店のホームページに、パンフレットが公開されているので、こちらの方が、分かりやすいかもしれない。
【出典】支店紹介パンフレット
通貨の需要予測
銀行に預けられたお金は銀行が現金で持っているわけではない。
銀行は預かったお金を企業などに貸してその金利で成り立っている。
このため銀行に預けたお金を全額引き出そうとしても貸している分については銀行にはないので不足してしまう。
世の中に出回っている紙幣・硬貨が全てではない。
世の中に出回っているのは現金として引き出されたものであり、それが世の中に出回り、銀行などに戻ってくる。
銀行が必要とする額以上が戻ってくれば日本銀行に返すことになる。
これを「銀行券の還収」という。
日本銀行は通貨の需要を予測して適切な額を用意しておく必要がある。
たとえば、給料日(毎月25日)周辺は現金を引き出す人が増えるので、その分を予測して現金を用意しないといけない。
年末年始は普段より更に多くの額を引き出すことが考えられるので、その分、多く準備しておく必要がある。
予測した結果、不足するようであれば、新たに製造しないといけない。
現金として引き出された分は、何らかの形で支払い等に使われ、最終的には銀行に戻される。
このように通貨は日本銀行を中心に循環していることになる。
そう考えると、日本銀行の本支店の役割というのは重要だと言える。