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もっと早く教えてくれよって思った内容を書いていきたいと思います。

岸田首相の「新しい資本主義」とは?(その3)

新しい資本主義実現会議の第一回、第二回共に具体的な内容はまだ出てきていない。

会議の参加者視点だと具体的な内容だと思っているかもしれないが、自分の目には抽象化の域を出ていない。

新しい資本主義実現会議 第三回

第三回は「賃金・人的資本について 」という議題だった。

議事録のようなものがなく、 賃金・人的資本に関するデータ集と各委員から提出された資料だけが公開されていた。

人件費は低下、しかし現預金は増加

賃上げ率は低下傾向で、大企業(資本金10億円以上)の現預金は85.1%の増加(+41.6兆円)、経常利益は91.1%の増加(+17.7兆円)、配当は483.4%の増加(+16.8兆円)。一方、人件費は0.4%の減少

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【出典】https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai3/shiryou1.pdf

大企業だけが潤っているというのは聞いていたが、ここまで潤っているとは思わなかった。

では中小企業はどうなのか?と思っていると次のページには中小企業の財務の動向も記載されていた。

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【出典】https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai3/shiryou1.pdf

こちらも負けじ劣らず、内部留保は増加しており、人件費は大企業以上に下がっている。

特に大企業も中小企業どちらも人件費が減少しているというのは悲しい限りだ。

賃金の伸び率

先進国との賃金の伸び率の国際比較も掲載されていた。

日本だけがほぼ、横ばいで、他の国は上昇傾向にあることがわかる。

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【出典】https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai3/shiryou1.pdf

内部留保が多いのはなぜ?

大企業が利益を貯め込んでいるのは、何か問題が起きた時のための積立金という目的がある。

自分達も、何かあった時のために、将来のためにと貯金・預金をしているのと同じ理由だ。

もう一つ、バブル崩壊以降、企業は価格を下げるためギリギリの利益で頑張っている。

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このため、いつ赤字になってしまうかわからない不安がある。

コロナ渦で売り上げが落ちても、倒産せず、社員に対して給与をこれまで通りに支払えるのは、内部留保を行っていた企業が多かったところにある。

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これに加えて、最近は、ちょっとしたことが大問題になる。

自動車に関しては以前はリコールにしなくても良かったようなことまでリコールにしないといけない。

リコールなれば全額、メーカー負担になるのでメーカーの負担は相当なものだと思う。

GDPは高く労働生産性が低い日本

利益が少ないというのは、日本と各国との労働生産性を比較することで理解できる。

労働生産というのは、労働生産性とはGDP÷就業者数で割った指数で、1人当たりのGDPとも言われている。

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日本はGDP国内総生産)は米国・中国に次いで高いが、労働生産性については低い。

GDPは一定期間内に国内で新たに生み出されたモノやサービスの付加価値の合計額になる。付加価値は、総生産額から原材料費・燃料費・減価償却費などを差し引いた額になるので、企業が利益として得るために設定した額ということになる。

 

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【出典】https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai3/shiryou1.pdf

つまり、日本は国としてのGDPは高いが、1人当たりにすると低いということになる。

このため、日本は他国に比較すると付加価値が低いと言える。

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もう一つ、GDPは名前の通り、国内総生産なので海外での付加価値については含まれない。人口が減少方向の日本市場だけでは今後が不安だという事で海外で単にモノづくりを行うだけではなく、そのまま海外で販売する会社は少なくない。

そうすると海外での売り上げによる付加価値は国内総生産には含まれないことになる。

人口が減少方向の日本なので就業数も減っているはず。

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それでも労働生産性が低いのは付加価値が低いということになる。

付加価値が変わらなければ労働者への賃金は結果的に据え置きになる。

資本主義は自由競争が基本なので、どこか1社が利益を減らしてでも価格を下げれば他社も追従することになり、負のスパイラルに陥る。

しかし、これは他社と大差のないものを作っている場合であり、自社でしか作れないようなもの提供できないようなサービスであれば、付加価値を高く設定することができる。

iPhoneが高い価格なのは、iPhoneに変わるものがないという強みを生かして高付加価値戦略に切り替えたことがある。

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日本企業もバブルからの呪縛からの脱出して、高付加価値にできるような商品やサービスを開発することができれば、賃金を上げることが期待できる。

そういう意味で今回の会議の内容については、重要な内容だと言えるので、もっと深く突っ込んで議論するとともに、高付加価値商品を開発しようとして失敗した場合には、開発に要した費用の半額は国が支援すると言ったことを行えば、積極的に開発しようとする企業が増えるのではないかと思うので期待したい。