中国、台湾がTPPへの加盟を相次いで申請を行ったということで報道されている。
TPPと言えば日本でも、承認案を可決する都かしないとかで、国会でもめていた記憶はある。
TPPとは?
- アジア太平洋地域において、モノの関税だけでなく、サービス、投資の自由化を進め、さらには知的財産、金融サービス、電子商取引、国有企業の規律など、幅広い分野で21世紀型のルールを構築する経済連携協定(EPA)
※EPAについては後述
【出典】TPP(環太平洋パートナーシップ)協定 | 首相官邸ホームページ
TPPの前身は、アジア太平洋協力会議(APEC)のメンバー国であるシンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの4カ国の間で、関税の撤廃、サービス貿易、投資、金融などについて、自由貿易の障害をすべて除去しようとする自由貿易協定の締結がされた、P4になる。
更に、2010年に米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシアの5カ国が交渉に加わった。
更に2012年にカナダ、メキシコが交渉参加を表明して11カ国となった。
日本でも、TPP交渉に参加するのかどうか?ということで大激論となったが、結局、2013年3月15日に参加を決めた。
2017年1月に米国の大統領にトランプ氏が就任したことで、TPPは米国に不利益だということで「離脱」を宣言して、11カ国となり現在は、TPP11と呼ばれることもある。
貿易に2種類ある
本来、貿易は関税など国家の介入や干渉を排して、自由に行えれば一番良い。
これを「自由貿易」と呼ぶ。
しかし、自由貿易にしてしまうと国内で生産しているものよりも、物価の安い海外のものが輸入されると消費者は安いものを購入して高いものを購入しなくなるかもしれない。
そうすると、国内の生産者にとっては打撃となり職を失うことになり国民の生活に被害が生じることから輸入品については高くなるように関税を設ける。
これを「保護貿易」と呼ぶ。
貿易を語る場合に第二次世界大戦のことは外すことができないので先に、第二次世界大戦について語りたい。
第二次世界大戦は貿易が原因?
第一次世界大戦中、米国は戦場になっておらず、三国同盟、三国協商の各国へ軍事物資を供給することで経済は絶好調の状態だった。
第一次世界大戦が終わると、次は軍事物資から戦争による復興物資の供給により経済の好調は続いた。
これにより米国の生産規模は拡大していったが、戦後復興が終わりに近づくとモノが売れなくなってきた。
しかし米国の証券市場は株価が下がらなかった。
これが、GMの株価下落をきっかけに株式市場が売り市場に変わりダウ平均は2か月前の半分にまで下落した。
米国のバブルが崩壊した。
米国は、これに対して「ニューディール政策」を実施した。
いわゆる、国民への金のばら撒きだ。
不況になると需要が減るので、需要が減らないように国が金を国民に供給するという政策だ。世の中は需要が供給を作り出すという考えに基づいている。
しかし米国の金のバラ撒きが終わると米国経済は停滞した。
米国は、自国本位な保護貿易を取り、輸入品を売れなくするために高額の関税をかけた。
米国への輸出に依存している国は、当時の通貨価値を決める、金本位制から離脱し自国の通貨価値を下げた。(輸出品の米ドルでの価格を下げた)
金本位制が消えてしまったことで他国通貨への不信感が生じアメリカ以外も保護貿易を取るようになった。
その結果が、世界的に貿易が縮小することになった。
しかし貿易がなかった頃の自給自足体制には戻れない。
そこで自国と同じ通貨を使う国(植民地等)との貿易だけを行うブロック経済を行った。
ブロック経済は、植民地がある国は良いが、日本、ドイツ、イタリアのように植民地を持たない国ではできない。
その結果、日本、ドイツ、イタリアは植民地拡大を行うことになる。
これが、第二次世界大戦の、きっかけになる。
一般的には、通貨価値が混乱し貿易が縮小したことが第二次世界大戦の主要因だと言われているが、発端は米国が保護貿易を取ったことが、通貨価値を混乱させることになり、貿易縮小へと繋がっているので、米国の行った、保護貿易こそが第二次世界大戦のきっかけだと自分は思うが、逆に言うと、これが資本主義だと言える。
WTO
第2次世界大戦の引き金になった、保護主義的なブロック経済に対する反省から、自由貿易実現のため一定のルールを設けようと1948年にGATT(General Agreement on Tariffs and Trade)が発効された。GATTでは、モノの貿易の交渉を展開していた。
しかし、徐々に交渉の内容が保険・金融などのサービス貿易や知的財産権などの新分野、農作物の自由化にまで及び、交渉が多角化した。
その結果、各分野の交渉結果を実施、運営管理する国際機関が必要になり、1995年、国際機関としてWTOが誕生した。
WTOは加盟国が順調に増えて行ったが、その結果、先進国と新興国の利害対立が激しくなり、世界全体でのルール作りは難航するようになってきた。
このため、FTA(Free Trade Agreement)(自由貿易協定)、EPA(Economic Partnership Agreement)(経済連携協定)を例外的に認め、特定の国や地域の間で貿易を推進することになった。
FTAは、関税の撤廃・削減について定め、EPAは、関税だけでなく知的財産の保護や投資ルールの整備なども含まれる。
FTAは、モノの移動に関する自由化、EPAは、ヒト、カネの移動の自由化も含められたものとなる。
再度、TPPとは?
TPPは、もともと米国のオバマ政権が推進してきた経済安全保障の枠組みで、経済成長を武器に覇権主義を強める中国に対し、民主主義の国々が中国包囲網を形成することが目的だった。
しかし、トランプ大統領は米国に不利益だとTPPから離脱した。
米国が主導だったTPPだったが、米国が抜けたことで内容をまとめるものがいなくなったが、日本主導で内容が修正され、まとめ上げられた。
RCEPとは?
日本は、EPAに含まれるRCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership)にも加盟している。TPPとRCEPの一番の違いは、参加国になる。
米国が離脱したTPPでは、経済効果が得られないと考えて参加しなかった国が(中国・韓国等)がRCEPに参加している。
RCEPでは中国が最もメリットを得ているということから「中国中心の世界最大の自由貿易圏」とも言われている。
ではなぜ、中国は今回、TPPへの加盟を申し込んできたのだろうか?
それも、米国が中国に対抗するために作ろうとしたTPPにだ。
中国は貿易でTPP加盟国のカナダ、オーストラリアと争っている最中であり、簡単に参加できるはずがない。
中国は米国がトランプ大統領からバイデン大統領に変わったことで、TPPに戻って来ると考えているはずだ。
中国にすると自国のためのRCEPに米国も参加させたいがRCEPに米国が参加するはずはない。
そう考えると、TPPに中国が加盟すれば、米国はまず戻って来ってないはずだ。
そうすると、RCEPとTPPは似たような存在になり、二つに分ける必要性が全くなくなる。
そのためには、中国はTPPの参加資格を得ている必要があるので、時間をかけて準備を進めてきたのではないだろうか?
TPPがどう判断するのかに注目したい。