今週のお題「爆発」
上場している企業の社員だと「持株」という制度がある。
毎月、給与・賞与から自分で設定した額で自社の株を買い続けるというものだ。
一定額なので、株価が高い時には少なく、株価が安い時には多く買うことになる。
更に知人の会社では設定した額と同額を会社が追加負担してくれるという大盤振る舞いなので実質、株価の半分で定期的に買い増しできる。
これを定年まで続けたので持株を解約することになり、証券会社に個人口座を開設して購入してきた株を全て移した。
この時に支援を求められて所有している株についても把握してしまった。
1回目の相談
昨年、2月にコロナの影響で、株価が下落傾向にあった。
知人が所有している株も多少、下がったようで、どうしたらよい?と相談された。
株というのは、売る人より買う人が多いと上がり、逆になれば下がる。
治療方法が確立されていない新型コロナウイルスが世界中に拡大しているとなれば、景気は悪くなり株価が下がると思う人が増え、売る人が多くなった。それだけのことだと思う。
自分は、短期の売買よりも配当を毎年、しっかりと分配してくれる会社を重視するので、この会社だと思えば、株価が安い時に買い増ししておくようにしている。
このため、この会社の株は上がりそうだなぁと思っても、配当がない年があるような会社は経営的に安定していないと考えて、手を出さないようにしている。
つまり、キャピタルゲイン(株の値上がり益)よりも、インカムゲイン(配当益)で株を選んでいるので、どうしても、配当を安定して分配できる会社かどうか?という点に重点を置いてしまう。
知人の所有している株の会社は安定した配当を毎年分配してくれる。しかも、知人は、毎月、定額で買い続けてきたので、安い時にはたくさん、高い時には少なく、しかも会社が半分負担してくれていたので、かなり安く手に入れた株になる。
このため、一株当たりの株価を考えれば、今の株価はかなり高いポジションで多少の下落では「売らない」というのが自分の選択になる。
ましてや、株価が大きく下がったところが多いのに、知人の株の下落はそんなに大きくない。
そう伝えた。
知人は納得して、暫く放置しておく選択をした。
株価が前回よりも大きく下がれば、更に下がるのではないかと考えて売りたいという気持ちも、わからなくはないが、安定した会社なので、安い株価の時から購入しているので、このタイミングで、売却して安定した配当を放棄する必要なんてないと思った。
2回目の相談
3ヶ月ほどすると、今度は株価がV字回復して、上がったけど、どうしたらいい?と相談された。
確認してみると、確かに前回より2,000円ほど上がっている。
知人の年齢を考えると今、売った方が、生涯得られる配当額の合計よりも大きな売却益が得られように思った。
知人も前回は下がり心配していたのが逆に株価が上がってきたことで、そろそろ売却した方が安全なのでは?と考えたのだろう。
その頃は緊急事態宣言中で家にいる時間が増えGWに旅行へ行けなくなり、旅行で使うはずだったお金を、どうせなら株に投資しようという人が増えたとみていた。
そして株を始めたばかりの人は、インカムゲインよりもキャピタルゲインに走ってしまうので、色々と買いたくなる。
そういう人が増えれば「買い」が増えるので、結果的に株価は上昇する。
特に安定して配当を分配してくれる会社であれば、買う人が自然と集まってくる。
知人が所有している株は、そういう会社の株になる。
概算だと万が一、間違っているといけないので売却した場合と残す場合で試算してみた。
結果は、予想通りで、今、売れば損はないどころか、仮に今後、毎年同じ配当が分配されたとして、知人が100歳になるまで40年間分を合計しても遠く及ばないくらいの売却益になった。
これは、昨年2月の時での比較であり、知人が投資した額を考えれば、株価が下がったと相談された時でも売却益が得られていた。
これに加え、以下のことを伝えた。
「今後、下がらないという保証も、上がらないと保証もないので、ここなら売却しても良いという株価を自分で決めて売るという選択はあると思います。」
知人は今回も、暫く放置しておく選択をした。
3回目の相談
今年に入っても株価の上昇は止まらず上がり続けていた。
嬉しそうに知人から連絡が来た。
- これは、まだまだ上がる。
- いくらまで、上がると思う?
といった内容だった。
もう、売る気がないのは文面からも伝わってきた。相談でもなく、上がるのが楽しくてしょうがないという感じだ。
まぁ、相談されても、前回までに自分が伝えるべきことは伝えているし、今回は前より更に株価が上がっているのだから自分としては言うことは何もなかった。
どこまで、上がると聞かれても、自分には予想できないので、冗談で、「そろそろ、売っても良いんじゃないですか?」と促してみた。
人間、まとまったお金が入ると使いたくなるものだ。
今、売却しても無駄なものにお金を使うくらいなら老後のために取っておいた方が良い。
安定した株は何かあった時に売却しやすいので、ちょうど良い。
毎年、配当が分配されるのだから銀行に預けて眠らせておくより、放置しておいた方が働いてくれる。
何かあった時の保険として知人には、この株は丁度よいと思っていた。
万が一、売ると言ってきたら、どうしようかと悩んだが、翌日、届いたメールの内容は、暫く放置しておくというものだった。
4回目の相談
今月(2021年9月)になりまたメールが来た。
- また上がったぁ〜
- これ、xxxxまで上がるんじゃないの?
株価は上がっている状態なので、どうせ売る気はないと思ったので、「今は、総裁選で総理が変われば株価が上がると思った人が、株を買ってるんじゃないですか?」と返信メールに入力した。
それだけだと冷たいかと思ったので、最近、自分の周囲でコロナ感染者が増えてきて、心配になってきた、知人も気をつけてくれるようにと伝えた。
すると「そんなことより」株価がどこまで上がると思う?と聞いてきた。
「そんなことより?」
これには、流石にイラッときた。
自分の身近でコロナ感染者が増えていることが「そんなこと?」
ここまで、人の株のことを考えてきた人間にコロナの恐怖が近づいてきているのに、どうでも良いことのように言われたのでは、こちらも自分のものでもない株の株価が上がっても、「そんなこと」にしか思えなくなってしまった。
この状態で返信しても感情的になるだけなので頭を冷ますことにした。
その間に、また別の人と話をしていて、自分が話したことに対して「そんなことより」と言われ、怒りを通り越して完全に落ち込んだ。
こういう時に人は猟奇的な犯罪に目覚めるのではないかとふと思った(笑)