日銀が「デジタル通貨」の実証事件を始めたそうです。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)というのが正式名称のようです。
紙幣や硬貨と同じように使える「デジタル通貨」について、日銀は5日、基本的な機能を確かめるための実証実験を始めたと発表しました。
「デジタル通貨」は、流通している紙幣や硬貨と同じように使える電子的なお金のことです。
日銀は「現時点で発行する計画はない」としていますが、各国の中央銀行が研究を行う中、5日から流通や発行といったデジタル通貨の基本的な機能を確かめるための実証実験を始めたと発表しました。
実験はシステム上で行い、期間は来年3月までの1年を想定しているということです。
デジタル通貨って何でしょうか?
電子マネーと何が違うのでしょう?
デジタル通貨というのは以下の3つの条件が揃ったものです。
【出典】中央銀行デジタル通貨とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan
これだけだと、「ふーん」そうなんだぁ~で終わってしまいます。
で、何が変わるの?ってことですが・・・
- 持ち運びが簡単
- 紛失リスクの低下
- マネーロンダリング対策
- ATMから現金を引き出さなくても良くなる
- 確定申告が不要、簡単になる?
- 金融機関を利用しなくても24時間365日振込が可能
- 紙や金属を使わなくなるので環境に優しい
- お釣りに悩まされることがなくなる
- 電子マネーと異なりチャージ不要
細かいメリットは、色々とありそうですが、今の電子マネーと変わりない内容もあります。
そうなると正直、「ふーん」って感じですよね?
当然、デメリットも気になります。
僕が1番気になるのは、セキュリティです。安全な仕組みをどう構築するか?ってことです。
特に日本の行政の個人情報管理は信用できないので不安しかありません。
次が匿名性が失われてしまうことです。
デジタル化されれば、誰が何にお金を使ったのかまで把握することができるようになります。
デジタル通貨でも匿名性を持たせることは可能だということです。
取引が全てスマホやICカードになるので、現金が1番と思っている方にはキツイですよね。
ちなみに、中国ではオフラインでも決済可能なデジタル通貨ICカードが開発済みです。
FACEBOOKの仮想通貨
デジタル通貨は中国が先行していますが、なぜ中国は通貨のデジタル化を急ぐのでしょうか?
FACEBOOK社の仮想通貨(リブラ→ディエム)を発表したことが各国を脅かしているようです。
ディエムはフェースブックが主導で立ち上げた仮想通貨ですが、ビットコインとは異なり安定した価格を実現することで、世界共通の通貨にしようというものです。
ビットコインは、仮想通貨と言いながらも「通貨」としての機能は期待できません。
何故なら、価格変動が大きいためです。
極端なことを言うと、今日は1万円の価値でも、明日になれば1円の価値まで下がってしまう可能性があるからです。
通貨というのは価値が安定しているから取引に使えるのです。
1万円のものをビットコインの相当分で買うと言われたらどうしますか?
更に言えば、給料をビットコインで払うと言われたらどうしますか?
以上から仮想通貨というのは投資要素が強いので「通貨」としては利用できないのですが、ディエムは違います。
価値は各国の法定通貨と連動する仕組みを取っています。
このため、米ドルと連動するディエム、日本円と連動するディエムと複数種類存在します。
まだ、ディエムの運用は始まっていませんが、運用時期は、2021年1月、2021年3月と徐々に延期されています。これは各国からの反対を受けているためのようです。
では、なぜ、ディエムを反対するのでしょう?
ディエムは電子マネーですから、PayPayやSUICAのような感じで対応しているサービスでキャッシュレスで利用することができます。
しかし、PayPay、SUICAは日本でしか使えませんし、中国のAlipay、WeChat Payは日本では使えません。
これは、その国の銀行口座と紐づいているので、決済時に銀行の承認が必要になりますが、海外の銀行とオンラインで繋がる仕組みが出来ていないと決済ができません。
ところが、ディエムは、国ごとに仮想通貨が用意されているので世界中で利用できることになります。
すると世界共通の仮想通貨の誕生です。
当然、貿易での世界標準通貨、つまり基軸通貨も米ドルからディエムに変わることになります。民間企業に世界標準通貨を作られてしまったのでは国の面子は丸潰れです。
世界標準にまでいかなくても、ディエムが電子マネーの主流となるのも面白くないはずです。
中国は基軸通貨が米ドルであることが、そもそも不満でした。中国としては、何とか人民元を基軸通貨にしたいということもあり、デジタル通貨を早く普及させてデジタル通貨では基軸通貨にしたいという目論見があるのでしょう。
しかし、ディエムに対し脅威を感じたのは中国だけではなく米国も同様で2019年にFacebookの CEOを米国下院金融委員会の公聴会に呼び出して仮想通貨に対しての質問を受けています。そして、米国の許可が下りない限り仮想通貨は発行しないと約束しています。
これは、中国にとって渡に船という感じで喜んでいたかと思います。
ディエムに待ったかかったことで、中国はディエムより先にデジタル通貨の発行を急ぎたいという気持ちもあるはずです。
そのために、デジタル通貨となっても一般銀行を残す選択をした可能性もあります。
流れは同じにすれば、中央銀行(日本の日銀に相当)は今まで通り、個人とは取引せず一般銀行だけとの取引になります。
これだと中央銀行は一般銀行との取引がデジタル化されるだけです。個人との取引は一般銀行で、こちらもデジタル化されるだけなので一極集中より短期間で進められます。
中国では中国人民銀行以外にデジタル通貨を発行することを禁止にしました。
今後、他国でも同じような法律を作っていく可能性は十分にあります。
中国が米国にとって代わるためには、中国元を基軸通貨にする必要があります。デジタル通貨は中国にとっては、その一つの手段でしかありません。
つまり、中国にとってデジタル通貨の利便性は二の次だということです。
日本は、他国がデジタル通貨を進めているので遅れてはいけない程度で行うのだと思いますが、それがデジタル通貨でも中国に遅れを取ることになるので、また日本は中国に差を付けられることになります。
日本は、中国だけではなく、韓国にも引き離されて観光立国を目指すということなのでしょう。