「美味しんぼ」を読んで
漫画、美味しんぼを読んで僕の食に関する認識が変わりました。
1巻での「ワインと豆腐には旅をさせるな」が僕には衝撃的でした。
東京の料亭に東西新聞社の社員が集められて、究極のメニューの担当を決めるための試験が行われました。試験の内容は、豆腐と水が3種類ずつ出されて、それぞれがどれかを理由を付けて回答せよというものでした。
水
- 水道の水
- 料亭の掘り抜き井戸の水
- 丹沢の山奥の鉱泉水
豆腐
- スーパーの豆腐
- 上野の有名な豆腐料理屋の豆腐
- 京都の一流料理屋の豆腐
その頃は、水と豆腐の味の違いなんて、わからないと思っていました。
どっちも味なんてしないと思っていたからです。
味の違い
しかし、以下のような違いがあるとのこと。
水
- 水道の水はカルキくさい。
- 料亭の水は塩味がした。(料亭の場所は元々海の底)
- 鉱泉水はカルシウムの味がする。
豆腐
- スーパーの豆腐は論外
- 国産の大豆と良質の水しかし豆腐は作って直ぐに食べないと風味が落ちるので、わずかながら風味が落ちているのが京都の豆腐、残りが上野の豆腐
カルキくさいって?カルシウムの味?風味って?言葉では聞いたことがあっても味としては記憶ににないものです。
自分が今までいかに無駄に水を飲んで、豆腐を食べていたのだろうと心が痛みました。
それ以来、味合うということを意識するようになりました。
心で、もてなす料理
山岡の父雄山とで、ご飯としじみの味噌汁対決という話がありました。
最高の食材に最高の作り方に対して、雄山は心でもてなすというものでした。
米粒を1粒ずつ、人が目で確認し欠けたり、濁ったりしたものは除去し同じ大きさの粒に揃えることで炊きあがりのムラを無くしたのです。
そしてしじみの味噌汁は大豆の粒のまま醸造した味噌を山椒の木で作った擂粉木を使い、すり鉢ですりつぶすことで山椒の香りが味噌に付いて香りが膨らみます。
もちろん、シジミも粒を揃えることで煮えムラがなくなり生臭さがなくなります。
これらは人を本当にもてなしたいという気持ちがないと思いつかない方法です。
素材の力
そして、僕が苦手だったトマトについても考えを変えさせてくれました。
本当に美味しいトマトは緑健農法で作られることを知りました。
緑健農法とは、山から掘り出した痩せた土、水を少しと窒素とリン酸とカリウムの混合液の化学肥料を少量与えることでトマトの原産地アンデスの気候に戻してやるというものです。
アンデスは雨が少ないため、水を少量というのもこのためです。
ビニールハウスで栽培するのも雨を防ぐため。
水や栄養を少量しか与えないため、根の毛細根が発達して健全なとても良い木に育ちます。
水をやらないため枝や葉に産毛のようなものが生えて空気中の水分を吸収しようとします。
更には産毛に止まった虫を捕まえて溶かして栄養にしてしまうというのです。
トマトが生まれ育った環境に帰してやることで本来のトマトになるというのが緑健農法です。
本来の環境に戻すことで本来の姿になる。そして高い肥料などを使わなくても、与えないことによりトマト自身が生きようとして想像もしないような状態に変わります。
美しい食べ方
最後が食べ方です。
お茶漬けを食べたあとの箸先を見ると山岡の箸先は4㎝以上濡れていたのに食通の戸田さん1㎝だけでした。
どんなに美しい食器と箸で食べても食べ方が美しくなければ、料理の美は完成しない。
箸先を1㎝しか濡らさずに食べるなんて僕にはできません。
どうしても一口サイズを箸で取ろうとすると2㎝~3㎝は濡れてしまいます。
大食いのギャル曽根さんの食べ方を見ていつも思うのが、実に綺麗に食べています。
ギャル曽根さんは器も綺麗、口の周りも綺麗に食べます。
彼女が食べているのを見ていると気持ちが良いのは単に沢山の量を早く食べるからではなく、食べ方が綺麗だからです。
美しく食べることの必要性も、美味しんぼで学びました。
僕の美味しんぼは35巻まで
しかし、美味しんぼ 36巻の日米コメ戦争のあたりから、読むのが苦痛になりました。そして37巻のアボリジニー料理で読むのを止めてしまいました。
食に政治的要素が加わったことが、僕にとっては面白くなくなったのだと思います。
それでも、35巻までは楽しく読むことができました。
その後、味の違いがわかるには、本物を食べることが必要だと感じて、高級店や星付きの店に行くようになりました。
その結果、味は味覚だけではないことに気がつき、現在に至っています。
それは、また、別の機会に書いてみたいと思います。